昨年度、地震本部の強震動評価部会や地下構造モデル検討分科会で「全国地震動予測地図」の議論を行っているときに、モーメントマグニチュードの記号の書き方(印刷のされ方)が報告書の中で統一がとれていないことに気がつきました。MとWの組み合わせであることとMが大文字イタリック(斜体)であることには変わりはないのですが(印刷の都合で斜体としない例はあります)、Wをどう書くかは研究者の書く論文などでも実にまちまちでした。当時の私はローマン(立体)の添え字を使っていましたので(BSSAはこれに統一されています)、報告書ではできるだけそれに統一してもらいました。
ただし、私自身の書き方にも自信はありませんでしたので、モーメントマグニチュードを創始された金森博雄・カリフォルニア工科大学名誉教授に電子メールでお尋ねしたところ、次のような丁寧な返信をいただきました(原文は英語)。「1977年当時、私たちはタイプライタを使って原稿を書き、それを出版業者が自前のフォントなどを使って活字に組んでいました。私のもともとの意図は(たぶん)大文字のMと小文字添え字のwを使うというものだったと思います。全体をイタリックにするべきか否かは、ジャーナルそれぞれの流儀に依っています。JGRとNatureの場合(他は覚えていません)、イタリックにすることを好んでいるようです。従って、もっとも標準的な書き方はMWでしょう。(後略)」。
最後に「謎解き地震学」11頁の疑問にお答えしておきましょう。金森先生が1977年に書かれたJGR論文のタイトルが「The Energy Release in Great Earthquakes」であるように、当初のマグニチュードは地震により解放される歪みエネルギーの指標として提案されました。そのため、添え字には今でも歪みエネルギーを表すWが使われています。しかし、歪みエネルギーの解放量が地震の規模によらず地震モーメントにほぼ対応することを示したHanks and Kanamori (1979)の論文以降、モーメントマグニチュードと呼ぶことが定着しました。この金森先生の偉大な業績のひとつは、理科年表の「地震学上のおもな出来事」に取り上げられています。
ただし、私自身の書き方にも自信はありませんでしたので、モーメントマグニチュードを創始された金森博雄・カリフォルニア工科大学名誉教授に電子メールでお尋ねしたところ、次のような丁寧な返信をいただきました(原文は英語)。「1977年当時、私たちはタイプライタを使って原稿を書き、それを出版業者が自前のフォントなどを使って活字に組んでいました。私のもともとの意図は(たぶん)大文字のMと小文字添え字のwを使うというものだったと思います。全体をイタリックにするべきか否かは、ジャーナルそれぞれの流儀に依っています。JGRとNatureの場合(他は覚えていません)、イタリックにすることを好んでいるようです。従って、もっとも標準的な書き方はMWでしょう。(後略)」。
最後に「謎解き地震学」11頁の疑問にお答えしておきましょう。金森先生が1977年に書かれたJGR論文のタイトルが「The Energy Release in Great Earthquakes」であるように、当初のマグニチュードは地震により解放される歪みエネルギーの指標として提案されました。そのため、添え字には今でも歪みエネルギーを表すWが使われています。しかし、歪みエネルギーの解放量が地震の規模によらず地震モーメントにほぼ対応することを示したHanks and Kanamori (1979)の論文以降、モーメントマグニチュードと呼ぶことが定着しました。この金森先生の偉大な業績のひとつは、理科年表の「地震学上のおもな出来事」に取り上げられています。
(広報誌「地震本部ニュース」平成22年(2010年)6月号)