パソコン版のウェブサイトを表示中です。

スマートフォン版を表示する

  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 平成21年8月11日駿河湾を震源とする地震への静岡県の対応

(広報誌「地震本部ニュース」平成22年(2010年)2月号)



 強い雨雲が静岡県に近づく中、8月11日(火)5時7分、駿河湾を震源とするマグニチュード6.5の地震が発生し、焼津市、牧之原市、御前崎市、伊豆市で震度6弱、その他県内の広い範囲で震度5強が観測されました。静岡県内で震度6を記録したのは昭和19年の東南海地震以来であり、地震直後に民間調査機関が行ったネット調査によると、この地震を「東海地震」と思った方が50.4%もいたとのことです。
筆者の自宅近くにある静岡地方気象台の地震計も震度5強を記録しましたが、体感した揺れを冷静に分析すると、「がたがた」とした短周期の揺れが数秒続きすぐに収まっており、東海地震で予想されるような「ぐらぐら」、「ゆさゆさ」とした大きく長い周期の揺れは感じず、継続時間もごく短いものでした。


 県内では、震度6弱を観測したことから静岡県庁では全職員参集体制をとり、5時30分に災害対策本部を設置、6時00分に知事をはじめ幹部がほぼそろって本部員会議を開催しました。県内4地域の方面本部と37市町をつなぐ緊急連絡用のホットラインにより、各市町の庁舎周辺には重大な被害は無いことが確認できました。その後、3回の本部員会議と随時開く関係機関による対策会議で被害状況の確認や対策を協議し、概ね対応が落ち着いた8月13日17時に静岡県災害対策本部を閉じました。


 この地震による静岡県内の害は、人的被害としては残念にも静岡市内で落下物により死者1名を出しましたが、負傷者311人の内、骨折などの重傷は18人で、多くは打撲や切り傷などの軽い怪我で済みました。
 しかし、東名高速道路牧之原サービスエリア付近の盛土崩落や徳川家康ゆかりの駿府城石垣の崩落が大きく報道されたことから、相当大きな被害が発生しているとの印象を持った方も多いと聞いています。
 建物の被害では住家被害が8,397棟(半壊5棟、一部損壊8,392棟)、非住家被害が312棟でした。観測された震度に比べ被害程度は軽微で、住家被害の大半は屋根瓦、それも頂部の棟瓦の損傷でした。
 観測された地震波の周期特性を見ても0.3から0.5秒前後の比較的短周期が卓越し、軟弱地盤よりむしろ丘陵の縁辺部や扇状地などの比較的固い地盤上で屋根瓦がずれるなどの被害が目立っています。詳細な調査分析を昨年設立した「しずおか防災コンソーシアム」の活動の一環として静岡大学などが行っており、その研究成果を待つことになります。
 一方、街中ではブロック塀や石塀の被害が207箇所発生しました。地震の発生が雨の降る早朝であったため人的被害はなかったものの、数時間遅く地震が発生していたら多くの犠牲者が出たかもしれません。





 今回の震源が「駿河湾」であり、頭をよぎるのは東海地震との関連です。地震発生からしばらくして気象庁で地震防災対策強化地域判定会のメンバーが検討に入ったと聞き、検討結果によっては大きな動きになるかと考えていました。
 東海地震観測情報の第1号、第2号が7時15分、9時10分に出され、11時20分の第3号で「今回の地震は想定される東海地震に結びつくものではない」との結論が示されました。今回は大きな混乱はありませんでしたが、東海地震関連情報の認知度はまだ低く、「普段どおりの生活を」という「東海地震観測情報」であっても、「東海地震の監視データに少し変化が出て東海地震に関する情報が出された」ことを捉え、状況によっては帰宅や県外退避を急ぐ人で社会は大混乱になるのではと心配しています。啓発や混乱防止策の徹底を図る一方で、情報の出し方については社会の受止め方にも対応した検討が必要と感じています。


 今回の地震では、一部の地域で電気や水道が止まりましたが家に住めなくなるほどの大きな被害はほとんど無く、ライフラインの回復と共に普段の生活が戻りました。15年前の阪神・淡路大震災では建物の倒壊が多数発生し、混乱下での救助活動だけでなく、その後も長期にわたる過酷な避難所での生活を余儀なくされました。地震災害で建物が壊れないことがいかに大切かを実感させられます。
 図3は今回の地震による負傷原因が分かった方260名を分析したグラフです。
地震の揺れに驚いて慌てて逃げようとして階段からころげ落ちる、廊下で転倒して骨折するなど、「地震に驚いて怪我」をした人が38%と最も多く、その原因として家の耐震性への不安などが背景にあると推測されます。また、テレビや棚の上の物など「落下物」が25%、「割れたガラスや食器など」が20%、家具の転倒が6%で、合わせると51%が家具の固定や落下物対策の不備による怪我でした。
 東海地震に関する県民意識調査(平成19年度 静岡県実施)によると、一部の家具を固定が52.7%、大部分の家具を固定が10.0%、合わせると62.7%の家庭で家具の固定が行われています。また、静岡県では市町村と連携してプロジェクト「TOUKAI-0」による木造住宅の耐震補強助成事業を進めており、特に高齢者に手厚く家庭内の地震対策の強化を図ってきました。
 しかし、今回の地震を受け、今一度、建物の耐震性の確保、家具の固定や落下物対策など身の回りの安全対策の徹底が必要であり、新たに「家庭内DIG *」(https://www.pref.shizuoka.jp/bousai/index.html)と称する自宅のチェックシートを開発し、大地震が発生しても避難所ではなく自宅やその周囲で過ごせることを目指しています。
また、子供たちの命を奪わないためにもブロック塀・石塀の安全対策の徹底を県民に呼び掛けているところです。

(広報誌「地震本部ニュース」平成22年(2010年)2月号)

このページの上部へ戻る

スマートフォン版を表示中です。

PC版のウェブサイトを表示する

パソコン版のウェブサイトを表示中です。

スマートフォン版を表示する