地震調査研究推進本部地震調査委員会は、「安芸灘断層群の長期評価」をとりまとめ、平成21年6月22日に公表しました。ここではその概要を紹介します。
安芸灘断層群は、広島県広島市、廿日市(はつかいち)市沖の広島湾から、江田島市、大竹市、山口県玖珂(くが)郡和木町及び岩国市
が面する安芸灘西部に分布する断層帯(群)です。安芸灘断層群は、概ね北東−南西から南北方向に並走する多数の断層から構成され、分布する断層の位置及び形態から、安芸灘断層群主部及び広島湾−岩国沖断層帯の2つに区分されます。
安芸灘断層群主部は、広島県江田島市沖から山口県岩国市沖に分布する断層帯です。長さは約21kmで、概ね北東−南西方向に延びています。安芸灘断層群主部は右横ずれを主体とし、北西側隆起の成分を伴う断層です。
広島湾−岩国沖断層帯は、広島県広島市沖から山口県岩国市の陸域にかけて分布する断層帯です。長さは約37kmで、概ね北北東−南南西方向に延びています。広島湾−岩国沖断層帯は右横ずれを主体とし、上下成分のずれを伴う断層です。
安芸灘断層群の活動は次のようであった可能性があります。
(1)安芸灘断層群主部
●最新の活動
約5千6百年前以後、約3千6百年前以前●平均活動間隔
2千3百−6千4百年程度●1回のずれの量
1−2m程度(上下成分)2m程度(右横ずれ成分)
(2)広島湾−岩国沖断層帯
●最新の活動 不明
●平均活動間隔 不明
●1回のずれの量
3m程度(右横ずれ成分) (1)安芸灘断層群主部
全体が1つの区間として活動する場合、マグニチュード(M)7.0程度の地震が発生する可能性があり、その際、断層近傍の海底面では、2m程度の右横ずれと断層の北西側が南東側に対して相対的に高まる段差が生じる可能性があります。安芸灘断層群主部の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は表に示すとおりです。本評価で得られた地震発生の長期確率には幅がありますが、その最大値をとると、安芸灘断層群主部は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになります。
(2)広島湾−岩国沖断層帯
全体が1つの区間として活動する場合、M7.4程度の地震が発生する可能性があり、その際、断層近傍の地表面、海底面では上下成分のずれを伴った3m程度の右横ずれが生じる可能性があります。ただし、広島湾−岩国沖断層帯の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は不明です。
この度公表した本断層帯の長期評価は、将来発生する地震の規模や可能性について述べています。この評価への理解を深めると共に、地震に対するイメージを持って頂くことを目的に、想定されている地震が発生した場合、どの程度の揺れに見舞われる可能性があるのかについて、計算を行いました。長期評価の結果と併せて、防災対策の一助として頂ければ幸いです。なお、個別地域の被害想定や防災対策の検討を行う場合は、より詳細な地震動評価を別途行う必要があります。
[解 説]
2枚の図はこれらのような地震が発生した場合に予測される、各断層帯における震度分布を示しています。
安芸灘断層群主部が活動した場合には、岩国市南部の一部で震度6 強以上( 赤色)の大変強い揺れが予測されています。震度6弱(橙色)の揺れは、岩国市・柳井市・周防大島町・広島県江田島市・呉市の一部に、震度5強(黄色)の揺れは、呉市・広島市から山口県東部にかけての範囲や愛媛県松山市の一部に及びます。
安芸灘沿岸の広い範囲や周南市・東広島市・三原市・今治市の一部は震度5弱(黄緑色)の揺れに見舞われます。
広島湾−岩国沖断層帯の活動に関しては、広島市から岩国市までの沿岸部や、岩国市内陸部・柳井市・周防大島町・江田島市の一部に震度6強以上の揺れが予測されています。震度6弱から5強の揺れは、呉市・広島市から山口県東部にかけての範囲や東広島市・松山市の一部にまで及びます。広島県西部から山口県東部の広い範囲や、山口市・島根県益田市・広島県尾道市・愛媛県西条市・西予市の一部は震度5弱の揺れに見舞われます。
なお、実際の揺れは、予測されたものよりも1〜2ランク程度大きくなる場合があります。特に活断層の近傍などの震度6弱の場所においても、震度6強以上の揺れになることがあります。
(広報誌「地震本部ニュース」平成21年(2009年)10月号)