平成20年6月14日午前8時43分に発生したM7.2の岩手・宮城内陸地震により、宮城県内では、栗原市で震度6強、大崎市で震度6弱となる大きな揺れを観測しました。県内の被害(平成21年5月20日時点)は死者・行方不明者18人、重傷54人を含む負傷者365人、住家等被害は全壊28棟を含む計1,902棟に及びました。
本稿では、宮城県に甚大な被害を与えた岩手・宮城内陸地震に対する宮城県の対応と課題について記します。
1 初動対応
(1)宮城県災害対策本部の設置
今回の地震では、震度6弱以上が観測されたことから、宮城県災害対策本部を設置し、配備可能な全職員は、配備編成計画に基づき登庁して、災害対応にあたりました。地震発生から1時間後の登庁率は73.4%と、良好な配備対応が行われ、第1回災害対策本部会議(10時15分)を開催し、各機関からの被害報告、情報提供を受け、栗原市で甚大な被害が発生していることを把握しました。
●災害対策本部会議開催数
延べ21回 (6月14日〜7月1日)
(2)救急・救助、捜索活動の支援要請
県は、地震発生後に収集した被害情報、および市町村からの要請に基づき、関係機関に支援要請を行いました。
●自衛隊
派遣要請:6月14日11時10分
(〜8月2日)延べ20,952人
●消防庁緊急消防援助隊
派遣要請:6月14日11時38分
(〜6月19日)延べ562人
●15都道県警察本部に広域緊急援助隊
(〜6月19日)延べ930人
●DMAT(災害派遣医療チーム)
(〜6月16日)9都県28隊
(3)情報収集・伝達
①被害情報の収集
県内で、震度4以上を観測した場合、県内市町村及び消防本部から県に対して「宮城県総合防災情報システム」(以下「MIDORI」)を活用して即時被害報告がなされるとともに、県有施設等の被害情報についても、県の各機関が情報収集しMIDORIによる報告を行います。今回の地震においても、県全体の被害情報の収集・集計作業は効率的に行われました。
また、被災状況の詳細な把握と、市との連絡調整を行うため、地震発生当日に栗原市に県職員を派遣し、6月16日には栗原市本庁舎内に「現地復旧対策情報連絡員本部」を設置しました。
②被害情報等の提供
県では、報道機関を通じた県民への情報提供を迅速に行うため、災害対策本部会議は報道機関の入室を制限せずに開催しました。
また、地震発生から1時間以内に県ホームページに災害情報を掲載し、広く被害情報や県の対応状況等の情報を発信しました。この他「防災・危機管理ブログ」にも被害等の情報を随時掲載し(地震発生翌日8,000アクセス)、県民に対するきめ細やかな情報提供に努めました。
2 応急、復旧対応
県では、地震活動が収束に向かったことから、復旧対策に本格的に取り組むため、7月1日に知事を本部長とする災害復旧対策本部を新たに設置し、関係機関とともに以下の取組みを行いました。
①医療救護活動
②ライフラインの復旧
③土木・農林関係施設の応急復旧
④ボランティア活動の支援
⑤こころのケア
⑥文教施設関係の復旧
⑦災害時要援護者の支援
⑧義援金・物資の受入
⑨相談窓口の開設
●災害復旧対策本部会議開催数
延べ 3回 (7月1日〜現在まで)
1 初動体制の確立に関して
(1)業務内容及び業務分担
今回の地震では、部局により配備職員数に過不足が発生しました。また、多岐にわたる災害対応を行っていく中で、災害対策本部の担当分掌に不明瞭な部分が見受けられました。
(2)県地方機関、市町村との連携
被害の大きな被災地では、市町村職員が災害対応に追われ、現地の情報が入りにくいことが、再認識されました。
今回の地震では、栗原市災害対策本部に県地方機関から職員を派遣し、情報収集等を行った他、「現地復旧情報連絡員本部」を設置して栗原市と連携を図りながら応急復旧活動を実施しました。しかし、発生が想定される宮城県沖地震では、複数の市町村で大きな被害が想定されており、十分な職員を派遣することが困難であることから、県内市町村との幅広い連携が求められます。
2 想定外の場所での大規模地震
今回の地震は、予測の難しい内陸直下型地震であり、しかも想定外の空白地帯で発生したものです。大規模地震が、いつ、どこで発生してもおかしくないという県民への周知と、そのための対応策の検討が重要であることを改めて認識しました。
3 孤立集落の発生
今回の地震では、大規模な土砂災害が発生したことで、孤立集落が発生しました。そこで、孤立する可能性がある集落との情報連絡体制の整備、および孤立集落が発生した場合の対策の必要性を強く認識しました。
1 初動体制の見直し
(1)配備体制の再構築と周知徹底
大規模災害時の業務の担当分掌を明確化し、業務量・内容を適正に配分するため配備編成計画を再構築しました。
また、配備体制の周知徹底を図るため、職員が携帯する「大規模災害時応急対策マニュアル(ポケット版)」の訂正版を作成しました。
(2)応援・連携体制の強化
初動時の膨大な業務量に対応するため、過去に本部事務局経験のある職員を、大規模災害発生時に本部事務局員として配備することとしました。
また、複数の市町村への対応を可能とするため、複数の派遣チームを事前に設置しておくなど、即応体制を構築します。
2 震災対策の充実強化
(1)震災対策推進条例の制定
県民が一体となって震災への取組みをする気運を高めるため、平成21年4月1日から条例を施行しました。
(2)「みやぎ震災対策アクションプラン」の改定
着実に震災対策を推進するため、震災対策の行動計画である「みやぎ震災対策アクションプラン」を改定しました。
3 中山間地の集落の孤立対策
(1)災害時の中山間地連絡手段確保
孤立可能性のある集落への衛星携帯無線の整備を図る事業を創設しました。
(2)ヘリ運用管理の強化
大きな役割を担ったヘリ運航管理については、「ヘリコプター災害対策活動計画」のさらなる充実強化と、「ヘリコプター安全運航確保計画」を策定しました。
宮城県では、今後も岩手・宮城内陸地震の被災地復興の支援を継続するとともに、今回の地震対応の検証を進め、近い将来、発生が確実視されている宮城県沖地震をはじめとする大規模地震に備え、被害を最小限にする県土づくりに取り組みます。
(広報誌「地震本部ニュース」平成21年(2009年)7月号)