全国を概観する地震動予測地図は強い揺れに見舞われる地域の分布を示したもので、一般に地震ハザードマップと呼ばれるものです。このうちの確率論的地震動予測地図は、今後の一定期間内に強い揺れに見舞われる可能性を示したもので、例えば今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図が示されています。このような揺れの確率の値を一般市民が見て、どの程度危険を認識するのでしょうか。そこで、簡単なアンケート調査を大学生100名に対して行ってみました。まず、今後30年以内での揺れの確率の値が増えていくと危険度の感じ方がどのように増えるのかを尋ねたところ、確率が2%までは0%に近い小さな危険と捉えられており、確率が5%になると危険として捉えられはじめられ、確率が10%を越えるとさらに高い危険として捉えられていることがわかりました。
また、今後30年以内での揺れや住宅被害の確率の大きさによって、住宅の耐震補強を実行する意思がどのように変化するか尋ねたところ、震度6弱の揺れの確率が5%以下では、「まずしない」、「たぶんしない」の回答が「たぶんする」、「必ずする」の回答を大きく上回るのに対して、確率が10%になると、ほぼ半々となり、確率がさらに上がると、「たぶんする」、「必ずする」の回答が大きく上回る結果となりました。建て直しをしなければならない程度の被害の確率に対して同様に尋ねたところ、耐震補強を積極的に考える回答が10〜15ポイント増加していました。これらのことは、ある程度確率が大きくならないと危険性を認識せず耐震補強の必要性も感じてもらえないこと、地震ハザード(揺れ)だけでなくリスク(被害)も示すことで危険性の認識が高まり防災対策の実行につながりやすくなること、を示しています。これらのことも参考にして、より社会に役立つ地震防災情報をどのように発信していくべきかについて、さらに考えていく必要がありそうです。
(広報誌「地震本部ニュース」平成21年(2009年)6月号)