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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 海上保安庁による海域地震調査研究

(広報誌「地震本部ニュース」平成21年(2009年)3月号)


 日本における被害地震の多くは日本列島を取り巻くプレート境界でる海溝域で発生するため、海域の震源域近傍における観測は非常に要です。海域での観測は測量船などの特別な装備を必要とするほか技術的困難も多いですが、海上保安庁では、航海安全のための海洋測の知識・経験・能力を生かし、海域での地震に関連した調査を継続して実施しています。

 海上保安庁では、海洋プレートの沈み込み境界である海溝域で次に発生する巨大地震の時期や規模等の予測精度を向上させるため、三陸沖から室戸岬沖にかけての太平洋側の海溝型巨大地震震源域直上に海底基準点を展開し、測量船による海底地殻変動観測を繰り返し行っています(図1)。
 GPS/音響測距結合方式による海底地殻変動観測の概念図を図2に示します。この観測は、時々刻々と変化する船の位置を決める「キネマティックGPS(KGPS)測位」と船と海底に設置した海底基準局との間の距離を音波で測る「音響測距」を組み合わせて、海底基準局の位置を高精度に決定し、その観測を継続的に行うことで海底の動きを捉えようというものです。
 これまでの観測から得られた、海洋プレートの沈み込みに伴う定常的な地殻変動を捉えた例を図3に示します。
最近では、宮城県沖と福島県沖の速度ベクトルの大きさの違いから、プレート間固着度の海域による違いを検出することができるようになりました。しかし、図からも明らかなように、海底における観測点数は、大学の観測点を加えても、約20km間隔で展開されている陸上のGPS観測点(電子基準点)に比べて圧倒的に少なく、将来の海底基準点の増設が望まれます。
 海上保安庁では,各海底基準局における精度の高い地殻変動データを得るため、測量船の船底に音響トランスデューサ(音響送受波器)を常設し、効率的で安定した観測を行っていきます(図4)。従来から行っている船尾の支柱を使用する観測システムでは、航走に伴うノイズや支柱への負荷を避けるため、漂流しながら観測しなければなりませんでしたが、船底設置型への改造により、24時間体制で航走しながら観測を行うことが可能となります。これにより、測線間の移動や、それに伴う音響トランスデューサの上げ下げに要する時間が削減され、1海域あたりの観測時間の大幅な短縮が見込まれるとともに、観測データの空間バランスの改善による観測精度の向上が期待されます。
 一方、地殻変動観測は長期間継続してデータを得ることが重要ですが、海底基準局の電池には寿命があるため、計画的に海底基準局を更新し、データの継続性を確保する必要があります。平成21年度には、2ヶ所の海底基準局の更新を予定しています。
 このようにプレート境界である海溝域直上において海底地殻変動観測を繰り返し実施することにより、プレートの沈み込みによるひずみの蓄積状況のモニタリングや空間分布を把握し、巨大地震の発生予測に必要不可欠な情報を提供していきます。



 戦略的な防災・減災対策に資する取組として、海上保安庁では、南海トラフ(図5)などの海溝域や沿岸域において、海底変動地形調査、海底面の起伏調査及び表層音波探査を行います。詳細な海底地形の情報は、高精度な津波予測に役立ちます。

 日本周辺のプレート運動とそのゆらぎを把握するため、和歌山県にある下里水路観測所において人工衛星レーザー測距観測(SLR)の通年観測を行います。
 また、全国20箇所の験潮所で記録された潮位データをリアルタイムで公開し、津波のシミュレーションなどに貢献していきます。

(広報誌「地震本部ニュース」平成21年(2009年)3月号)

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