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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 国土地理院の地殻変動の観測・監視と地震に関する調査・研究

(広報誌「地震本部ニュース」平成21年(2009年)3月号)


 国土地理院は災害対策基本法に基づく指定行政機関として、地殻変動の監視、災害対策に必要な基礎資料となる地理情報の整備、地震に関する調査研究を推進しています。
 国土地理院が整備・運用している全国1,238箇所(平成21年1月現在)の電子基準点から構成されるGPS連続観測システム(GEONET)は、地震調査研究推進本部が策定した「地震に関する基盤的調査観測計画(平成9年8月)」において、地震に関する基盤的な調査観測網の1つとして位置づけられており、日本列島の定常的なプレート運動や地震に伴う地殻変動を連続的に観測・監視しています。また、地震・火山活動が活発な地域等では、機動的なGPS連続観測などを実施して三次元変動を監視し、地殻変動のモデル化を通して防災情報の提供を行っています。
 さらに、VLBI(超長基線電波干渉法)により、地球的規模のプレート運動とプレート変形を広域的かつ精密に観測を行うとともに、SAR(合成開口レーダー)を活用した地殻変動の把握を行っています。
 加えて、山間地域を含む都市域周辺部に地震被害が広範囲に及ぶと考えられる主要な活断層帯について、詳細な位置や関連する地形の分布などの情報を整備・提供する全国活断層帯情報整備を行っており、その成果は都市圏活断層図として提供しています。
 地震に関する施策の平成21年度の実施内容は、以下の4項目を基本としています。

 GEONETとVLBIを骨格として、三角点、水準点等で構成する測地基準点体系により、あらゆる測量の基準となる測地基準点に正確な位置と高さを与えます。また、GEONETによる日々の地殻変動監視と、三角点、水準点などの測地基準点の繰り返し観測により、全国の地殻変動を三次元的に捉えます。
 特に、GEONETによって地震に伴う地殻変動がすみやかに検出できるようになり、例えば1994年北海道東方沖地震以来、2008年岩手・宮城内陸地震などの被害地震で地殻変動の概況を迅速に捉えるとともに、これらのデータから震源断層モデルを作成するなどの成果をあげています。その結果は、地震調査委員会の臨時会等に報告されています。
 また、GEONETは広域的な地殻変動の詳細な様相を検出することも可能です。これまでに長期の連続観測により日本列島の定常的な地殻変動を把握するとともに、東海地方、房総半島や豊後水道などにおいては、「ゆっくりすべり」の検出など、今後の地震学の発展に役立つことが期待される新しい観測結果が得られています。
 また、電子基準点のデータはインターネットで常時公開され、多くの大学や関係研究機関によって、地震研究のための基礎的データとして活用されています。

 地殻活動の活発な地域などにおいて地殻変動の様相を明らかにするために、高精度な水準測量やGPSなどによる機動観測、変動地形調査、測地観測所における地磁気や地電流の常時観測を実施し、総合的な解析を行います。また、人工衛星から地球表面の変動を監視するSAR干渉解析により、地殻変動等を面的に把握します。
 これらの成果は、地震防災対策強化地域や重点的調査観測対象地域などの地殻活動の活発な地域において、地殻変動の様相を明らかにします。
 東海地域では水準測量による地殻上下変動の観測から、内陸部を基準として御前崎付近が沈降を続けており、海側のプレートの沈み込みに伴う陸側の変形が進行していることが観測されています。
 また、2007年能登半島地震、2007年新潟県中越沖地震、2008年岩手・宮城内陸地震などでは水準測量、GPS連続観測、SAR干渉解析などの成果が総合的に活用され、地殻変動の推移や地震活動の消長に関する情報が得られました。特に、陸域観測技術衛星「だいち」のデータを用いたSAR干渉解析により、2008年岩手・宮城内陸地震や硫黄島の火山活動などに伴う面的な地殻変動の分布を観測し、地殻活動の解明に貢献しています。
 以上の結果については、防災や地震調査研究に活用されており、今後も引き続き、地殻活動の活発な地域等における繰り返し観測や地殻活動の解析などの体制を強化します。

 1995年兵庫県南部地震を契機にして、直下型地震を引き起こす活断層が大きく注目されました。このため、2万5千分1地形図上に陸域の活断層の詳細な位置、関連する地形の分布などの情報をとりまとめた都市圏活断層図を整備、公表するとともに、国土地理院が配信する地図に様々な地理情報を重ねることが可能な電子国土Webシステムでもこれらの情報をインターネットで公表しています。
 整備範囲は平成18年度までは都市域を対象にしていましたが、平成19年度からは山間地域を含む都市域周辺部において、特に地震被害が広範囲に及ぶと考えられる主要な活断層帯について調査範囲を広げており、今後も引き続き調査を行い、情報の整備と公表を継続します。

 測地学、地球物理学、地球力学、衛星技術、コンピュータ技術、通信技術などを含む高度な測地計測技術および地理情報解析技術を用いて、地殻変動を通じた地震・火山活動の解明、宇宙測地技術の高精度化、時間的・空間的な災害危険度分布の把握手法の研究開発等を行います。
 SAR干渉解析では、2007年能登半島地震において局所的な地盤変動パターンを抽出し、このうちの数箇所で数cm〜10数cmの地すべり性の地表変状があったことが現地で確認されました。また、2007年新潟県中越沖地震では、本震の震央から約15km離れた西山丘陵に帯状の隆起域があることがわかり、本地域を含むひずみ集中帯のテクトニクスを理解する上で重要なデータが得られました。
 さらにGEONET観測データ、SAR干渉解析、水準測量から、震源断層モデルの位置・形状や断層面上のすべり分布が明らかとなっています。
 これらの成果は、それぞれの地震の評価や今後の地震活動の予測に活用できます。
 また、内陸・近海で発生したM7以上の地震を対象として電子基準点データから震源断層モデル推定を迅速に行ない、震源域と津波波源域に関する防災情報の提供が可能となるように、震源断層即時推定手法の開発を行います。

 平成21年度は以上に紹介した基盤的な調査観測を引き続き実施するとともに、電子基準点データから震源断層を迅速に推定する手法の研究開発や、日本列島の地殻活動メカニズム解明の高度化等に関する研究を進めます。これらの情報は電子国土Webシステムなどにより、一層公開を進める方針です。

(広報誌「地震本部ニュース」平成21年(2009年)3月号)

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