(平成20年度予算額:478百万円)
これまで、文部科学省においては、全国の主要活断層帯を対象とした調査を実施し、その調査結果は、地震調査研究推進本部(以下、地震本部)が行う長期評価や強震動評価、研究成果を取りまとめた「全国を概観した地震動予測地図」等に活用されてきました。
今後、地震本部において、これらの評価の高精度化や、地震動予測地図の高度化、さらには、活断層の詳細位置図に各種調査・評価結果を重ね合わせた「活断層基本図(仮称)」の作成を進めるにあたり、活断層に関する各種情報の取得が不可欠となることから、文部科学省において活断層調査を総合的に推進します。
平成21年度は、これまで調査されてこなかった「沿岸海域」に存在する活断層調査を新たに開始し、長期評価等に必要となる情報を取得します(図1)。
また、地震の発生確率が高い活断層等を対象とした「重点的調査観測」については、平成17年度より実施してきた糸魚川−静岡構造線断層帯を対象とした調査観測研究(平成17〜21年度、研究代表機関:東京大学)が最終年度を迎え、その成果を取りまとめるとともに、「重点的調査観測」の対象活断層から新たに神縄・国府津−松田断層帯を選定し、3カ年の調査観測プロジェクトを開始します(図2)。また、「追加・補完調査」については平成21年度も引き続き調査を実施します。
なお、これらの調査から得られた成果は地震本部へ速やかに提供し、活断層の長期評価や強震動評価に順次反映していく予定としています。
(平成20年度予算額:1,406百万円)
(平成20年度補正予算額:1,557百万円)
東南海地震の高精度な地震発生予測や、地震・津波発生状況の早期検知による緊急地震速報及び津波予測技術の高度化等を目的として、地震計、水圧計等を組み込んだマルチセンサー20基を備えたリアルタイム観測可能な高密度海底ネットワークシステムの開発を推進し、東南海地震の想定震源域である紀伊半島熊野灘に敷設します。(平成18〜21年度、研究代表機関:(独)
海洋研究開発機構)(図3)
平成21年度は、基幹ケーブルや観測機器等の各種パーツの製作を完了させ、紀伊半島熊野灘にシステムを敷設します。これにより、平成21年度中にシステムの試験運用を、平成22年度中に本格運用を開始する予定としています。
なお、南海地震の想定震源域へ敷設するための次世代ネットワークシステムについて、平成21年度より(独)海洋研究開発機構と(独)防災科学技術研究所が共同開発に着手します。
(平成20年度予算額:495百万円)
東海・東南海・南海地震は今後30年の発生確率が高く、過去の記録や最新の研究成果によると、これら3つの地震は将来連動して発生する可能性が高いとされています。このため、東海・東南海・南海地震の連動発生可能性を明らかにするとともに、高精度な地震発生予測・強震動予測を実現し、効果 的・効率的な防災・減災対策に寄与することを目的として、南海トラフ全域における海底地震・津波・地殻変動観測、シミュレーション研究、強震動・津波予測、被害想定研究等を総合的に推進します。(平成20〜24年度、研究代表機関:(独)海洋研究開発機構、東京大学)平成21年度は、南海地震の想定震源域周辺において、200台程度の海底地震計を稠密展開し、詳細な地殻構造イメージングに必要となる地震・地殻変動データを取得します。また、シミュレーション研究や強震動・津波予測研究等も引き続き実施します。
(平成20年度予算額:401百万円)
2004年新潟県中越地震や2007年新潟県中越沖地震等が発生した「ひずみ集中帯」(図4)は、これまで地震調査研究の空白域となっていたことから、その地震発生メカニズムが十分に解明されていない状況にあります。このため、日本海東縁部等に存在するひずみ集中帯の活断層及び活褶曲等の活構造の全体像を明らかにし、ひずみ集中帯における地震発生メカニズムを解明することを目的として、当該地域における重点的な調査観測・研究を推進します。(平成19〜24年度、研究代表機関:(独)防災科学技術研究所)
平成21年度は、平成19年度補正予算で整備した観測機器を用いた自然地震観測や、日本海東縁部における大規模な海陸統合地殻統合調査、GPS観測、地形地質調査等を実施します。また、ひずみ集中メカニズムを解明するため、ひずみ速度の速い火山周辺地域における調査観測研究を強化します。
(平成20年度予算額:1,102百万円)
首都直下地震の姿(震源域、将来の発生可能性、揺れの強さ)の詳細が未だ明らかになっていないことから、首都直下地震による大幅な被害軽減に資することを目的として、首都圏における稠密自然地震観測及び地殻構造調査や、実大三次元震動破壊実験施設(E−ディフェンス)を活用した実大実験、広域的危機管理・減災体制の構築に関する研究等を総合的に推進します。(平成19〜23年度、研究代表機関:東京大学、(独)防災科学技術研究所、京都大学)
平成21年度は、引き続き、中感度地震計を首都圏周辺の小中学校に整備し、より稠密な自然地震観測や、大規模な地殻構造調査等を実施します(図5)。また、長周期地震動による高層建築物等の耐震性能を評価するための実大実験や、首都直下地震発生時の被災者の「危機対応能力」、「生活再建能力」、「地域抵抗力・回復力」を総合的に向上させるための研究についても実施します。
図5 自然地震観測設置分布
(平成20年度予算額:30百万円)
国民の一人ひとりが自然災害を正しく理解し、自らの的確な判断の下で防災・減災行動をとれるよう、学校や地域等における防災教育の取り組みを積極的に推進していく意義は深く、社会の期待も大いにあります。
これらの実現には、社会の防災力を高めるため、科学技術の発展が我が国の防災・減災の推進にとって不可欠であり、将来の研究や技術開発を担う人々に対する防災科学技術教育の視点からの人材育成も重要です。
防災教育支援推進プログラム「防災教育支援事業」では、防災研究を実施する研究機関・大学等の研究者や、地方公共団体の防災担当者、教育委員会・学校の教職員等の連携による防災教育に関する取り組みを推進・高度化し、その成果を集約するとともに、全国への普及を図ります。
本事業では、自然災害に対する正しい理解、学びへの動機付け、新しい災害文化の浸透等を図り、児童生徒や地域住民の「生きる力」を養い、能動的に防災に取り組む人材育成を目指します。具体的には、防災教育の受け手である児童生徒や地域住民等に対する教育内容・方法の充実や、防災教育に携わる人材(担い手・つなぎ手)の研修カリキュラム開発等の支援を行います。
また、防災教育支援推進プログラム「防災教育推進フォーラム」では、国と地方公共団体の共催により、教育関係者、行政関係者、地域防災リーダー等を対象にフォーラムを開催し、防災教育支援事業の成果の紹介や、パネルディスカッション、研修等を実施します。
(平成20年度予算額:30百万円)
その他、地震調査研究関係予算として、宮城県沖や根室沖の海溝型地震の調査観測を推進する「地震調査研究の重点的推進」(平成21年度予算案:62百万円 平成20年度予算額:131百万円)や、地震調査研究推進本部の円滑な運営を図るための経費(平成21年度予算案:740百万円 平成20年度予算額:837百万円)を平成21年度予算案に計上しています。
(広報誌「地震本部ニュース」平成21年(2009年)2月号)