断層が曲げられる?
断層が乗り移る?
断層が乗り移る?
断層が他の面に乗り移ることは、地表付近ではよくあることらしい。しかし、パークフィールドの例は極めて興味深い。断層が曲げられて、その結果断層が乗り移るというのだから。
カリフォルニア州を北西—南東方向に走るサンアンドレアス断層沿いのパークフィールドでは、約20年間隔でM6程度の地震が繰り返し発生してきた。
やがて起こると予測される次の地震を詳細に把握するため、この地域には各種の稠密観測網が設置されるとともに、様々な調査が行われてきた。そして2004年9月28日に、予測通りM6.0の地震が発生した。この地震を震源直上で観測したデータやそれ以前に得られたデータの詳細な解析から、多くの重要な発見があった。そのうちのひとつがこれである。
サンアンドレアス断層は、パークフィールドの北西側では常にずるずると滑っている。一方南東側は1857年のM7.9の地震で滑った後、現在まで固着したままである。約150年前に大地震を起こしたこのアスペリティ(固着域)が固着しているので、固着域の北西端、つまりパークフィールドで、サンアンドレアス断層はその浅部が局所的に北東側に曲げられる。そして、1857年のような大地震で固着域が滑ると元に戻る。ところが実際には地殻浅部が完全には弾性的でないので、まったく元の位置までは戻らず、幾らか曲がりが残ってしまう。地震後固着すると、また曲げられる。それを何度も繰り返した結果、現在は本来の位置から大きいところで2km程度北東側にずれている。
そして、このずれが大きくなり過ぎると、本来の直線上の位置に新たな断層をつくってそちらに乗り移る。事実、パークフィールドでは、現在のサンアンドレアス断層の北東側に、ひとつ前の時代のサンアンドレアス断層の痕跡が認められる。しかも、この現象は500万年以上前から続いている —— というのである。
この考えが正しいとすると、①アスペリティは極めて長期間保持される、②アスペリティをつくる原因が断層の北東側の物質にある、ということになる。
地震発生予測のためには、アスペリティの振る舞いと成因をきちんと理解することが基本であり、その点でこの研究結果は重要である。注意深い観察と鋭い洞察力が研究に不可欠なのは言うまでもないが、そのことを改めて思い出させてもらった気がする。
(広報誌「地震本部ニュース」平成21年(2009年)1月号)