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  3. 宇部沖断層群(周防灘断層群)の長期評価

(広報誌「地震本部ニュース」平成21年(2009年)1月号)





 地震調査研究推進本部地震調査委員会は、平成20年11月17日に「宇部沖断層群(周防灘〔すおうなだ〕断層群)の長期評価」をとりまとめ、公表しました。ここではその概要を紹介します。
 なお、宇部沖断層群について評価した結果、この断層群は周防灘の広い範囲に分布することから、以下では周防灘断層群と称します。


 周防灘断層群は、山口県宇部市、山口市及び防府市(ほうふし)にかけての沖から、大分県の国東半島(くにさきはんとう)北方の周防灘東部に分布する断層帯(群)です。周防灘断層群は、概ね北東−南西から南北方向に延びる、並走する多数の断層から構成されますが、分布する断層の位置及び形態から、周防灘断層群主部、秋穂(あいお)沖断層帯及び宇部南方沖断層帯の3つに区分されます。
 周防灘断層群主部は、山口県防府市の南方沖から大分県の国東半島北西沖に至る断層帯です。長さは約44kmで、概ね北北東−南南西方向に延びています。周防灘断層群主部は右横ずれを主体とし、北西側隆起の成分を伴う断層です。
 秋穂沖断層帯は、山口県防府市の南西沖に分布する断層帯です。長さは約23kmで、概ね北東−南西方向に延びています。秋穂沖断層帯は右横ずれを主体とし、北西側隆起の成分を伴う断層です。
 宇部南方沖断層帯は、山口県宇部市の南方沖に分布する断層帯です。長さは約22kmで、概ね南北方向に延びています。宇部南方沖断層帯は横ずれを主体とし、西側隆起の成分を伴う断層です。


 周防灘断層群の過去の活動は次のようであった可能性があります。  

(1)周防灘断層群主部
●最新の活動
 約1万1千年前以後、約1万年以前
●平均活動間隔
 概ね5千8百−7千5百年
●1回のずれの量
 1−2m程度(上下成分)

(2)秋穂(あいお)沖断層帯
●最新の活動
 不明
●平均活動間隔
 不明
●1回のずれの量
 2m程度(右横ずれ成分)

(3)宇部南方沖断層帯
●最新の活動
 不明
●平均活動間隔
 不明
●1回のずれの量
 2m程度(横ずれ成分)




(1)周防灘断層群主部
 全体が1つの区間として活動する場
合、マグニチュード(M)7.6程度の地震が発生する可能性があり、その際、 断層近傍の海底面では、3−4m程度の右横ずれと断層の北西側が南東側に対して相対的に高まる段差が生じる可能性があります。周防灘断層群主部の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は表に示すとおりです。本評価で得られた地震発生の長期確率には幅がありますが、その最大値をとると、周防灘断層群主部は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになります。
(2)秋穂沖断層帯
 全体が1つの区間として活動する場合、M7.1程度の地震が発生する可能性があり、その際には断層近傍の海底面に2m程度の右横ずれと断層の北西側が南東側に対して相対的に高まる段差が生じる可能性があります。ただし、秋穂沖断層帯の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は不明です。
(3)宇部南方沖断層帯
 全体が1つの区間として活動する場合、M7.1程度の地震が発生する可能性があり、その際には断層近傍の海底面に2m程度の横ずれと断層の西側が東側に対して相対的に高まる段差が生じる可能性があります。ただし、宇部南方沖断層帯の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は不明です。


 この度公表した本断層帯の長期評価は、将来発生する地震の規模や可能性について述べています。この評価への理解を深めると共に、地震に対するイメージを持って頂くことを目的に、想定されている地震が発生した場合、どの程度の揺れに見舞われる可能性があるのかについて、計算を行いました。長期評価結果と併せて、防災対策の一助として頂ければ幸いです。
 なお、個別地域の被害想定や防災対策の検討を行う場合は、より詳細な地震動評価を別途行う必要があります。

[解 説]
 3枚の図は各断層帯で想定された地震が発生した場合に予測される、震度分布の概要を示しています。
 各断層帯が活動した場合には、断層帯周辺の周防灘沿岸地域で震度6強以上(赤色)や震度6弱(橙色)の大変強い揺れに見舞われる可能性があります。
 周防灘断層群主部の活動に関しては、山口県の防府市から周南市(しゅうなんし)にかけての沿岸部や大分県の中津平野で震度6強以上の揺れが予測されています。震度6弱の揺れは、山口市・宇部市・別府市の一部に、震度5強(黄色)の揺れは、大分市沿岸や下関市・北九州市の一部にまで及びます。山口県南部・福岡県東部・大分県北部の広い範囲や久留米市・広島市の一部は震度5弱の揺れに見舞われます。
 秋穂沖断層帯の活動に関しては、防府市沿岸の一部に震度6強以上の揺れが予測されています。震度6弱の揺れは、山口市・宇部市の一部、防府市、大分県の中津平野の一部にまで及びます。周防灘沿岸部を中心に、下関市・北九州市・別府市・大分市の一部は震度5弱の揺れに見舞われます。
 宇部南方沖断層帯の活動に関しては、宇部市沿岸の一部に震度6強以上の揺れが、周防灘沿岸部を中心に山口市の一部まで震度6弱の揺れが予測されています。
下関市・北九州市・別府市・大分市の一部は震度5弱の揺れに見舞われます。
 なお、実際の揺れは、個々の地点の地盤条件や断層の破壊の仕方によっては、予測されたものよりも1〜2ランク程度大きくなる場合があります。特に活断層の近傍などの震度6弱の場所においても、震度6強以上の揺れになることがあります。

(広報誌「地震本部ニュース」平成21年(2009年)1月号)

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