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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 各国のお家事情を表す地震研究の国際ワークショップ(入倉孝次郎)

(広報誌「地震本部ニュース」平成20年(2008年)10月号)

各国のお家事情を表す
地震研究の国際ワークショップ

 地震研究の最先端の課題を若手研究者に紹介する国際ワークショップがこの9月にイタリアのトリエステで2週間の日程で開かれた。毎日異なるトピックの講義と解析法演習などが行われる国際的な夏の学校である。講師陣には、CMT解の創始者のウッドハウス(Woodhouse)、動力学震源のダス(Das)、トモグラフィのノレット(Nolet)、地震ハザードのワード(Ward)、など最先端の地震学の研究者が顔をそろえた。私は強震動地震学の話を依頼された。参加者は、おひざ元のEU諸国に加えて、中国、ベトナム、イランなどアジア諸国、それに東欧、中南米、アフリカなどから集まった。
このプログラムはEUの国際援助の一環で、参加者は公募で選ばれた優秀な開発途上国とEUの若手研究者で、ポスドク研究者から修士課程の学生まで含まれる。参加者には往復旅費と3食付きの宿舎が提供される。
 ワークショップでは、ウッドハウスが表面波と波線理論のトモグラフィにより地球のダイナミックスを論じるなど、各講師が取り組んでいる課題の最近の研究の動向についての紹介が中心であった。ポスドク級の参加者には刺激のある話ではあるが、一方、修士の学生には理解が困難なところもあった。 私は、過去の地震の震源過程と活断層の関係に基づく震源モデル化や深部・浅部構造による地震動の増幅のメカニズムなど、地震動予測の方法論について講義の後、具体的な適用例として、地震本部が行っている地震動予測地図について論じた。強震動の話に対する参加者の反応はお国ぶりが出て興味 深い。イタリアや中国の研究者からは、地震災害対策の一環として同様の試みをやりたいが、活断層調査を行う地形・地質の研究者や実際に災害対策を行う工学研究者の協力を得るのが大変難しい、日本でうまくいっているのはなぜか、という質問が出た。イランやパキスタンの地震災害多発国の研究者は、 コストの安い防災対策が急務で、強震動予測の研究をやっても実践には結びつきにくい、と語った。
EUが若手研究者を集めてこのようなワークショップを開くのは、地震研究で国際的リーダーシップを発揮する狙いがあると思われる。世界最大の地震国日本も、世界の若手研究者が地震研究に関心をもつための国際的な教育プログラムを持つべきではないか、というのが私の感想である。

(広報誌「地震本部ニュース」平成20年(2008年)10月号)

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