この度、「全国を概観した地震動予測地図」が公表(本誌67ページ) されたことを受け、ここでは「全国を概観した地震動予測地図」の解説やFAQを紹介します。
この地図は、そもそも安全度を示すものではなく、危険度を示すもので、国民の防災意識の向上や効果的芯地震防災対策を検討する上での基礎資料と して活用が期待されているものです。
この地図の名称は、「全国を概観した地震動予測地図−今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図」となっています。この名称にはそれぞれに意味があり、例えば、「全国を概観した」とは、大まかな地域的な違いを知るための地図であることを意味しています。そのため、この地図の評価単位は約1km四万の領域とやや粗くなっています。また、「今後30年以内」とは、この数値が国民個々人の将来設計を考えるときに一つの目安になるからです。例えば、ある人が生まれて成人し結婚して家庭を営むようになる期間、中高年世代が老後の人生設計を考える期間等はほぼ30年以内と考えられます。さらに、「震度6弱以上」としたのは、震度6弱の地震が発生したとき、人的被害及び物的被害の発生する可能性が極めて高まることを考慮したことによります。
地震本部が作成する全国を概観した地震動予測地図には、「確率論的地震動予測地図」と「震源断層を特定した地震動予測地図」があります。
「確率論的地震動予測地図」は、地図上の各地点(約1km四方の領域)において、今後の一定期間内に強い揺れに見舞われる可能性を示したもので、 例えば、30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図(図1) があります。
「震源断層を特定した地震動予測地図」は、特定の断層に着目し、そこで地震が発生した場合に、周辺の地域がどの程度の強い揺れに見舞われるかを 示した図です。
この地図は主要活断層と海溝型地震はもちろんのこと、対象地域に影響を及ぼす地震全てを考慮し、地震発生の可能性と地震動の強さを計算し、その結果を地図上に表現したものです。確率論的地震動予測地図は、設定する「期間」、「揺れの強さ」および「確率」を必要に応じて変えることで、その結果は多様な特徴をもった地図になります。
図1は「期間」と「揺れの強さ」を 固定した場合の「確率」の分布図の1例です。この図により全国を概観してみると、地域によって強い揺れに見舞われる可能性に遣いがあることが分かります。また、この図の凡例では、期間30年で0.1%未満、0.1〜3%、3〜6%、6〜26%、26%以上の確率値でランク分けをしており、色調が濃いほど震度6 弱以上の揺れに見舞われる確率が高い地域であることを表しています。ただし、この色分けの確率値および「高い」「やや高い」というランク分けは相対的なものであり、絶対的な評価ではないことに気をつける必要があります。確率の数値自体を感覚的に捉えるととは難しいととから、参考のために、図1の凡例にある確率値のランク分けと我が固における自然災害や事故・犯罪等との年発生確率の比較を示しました(図2)。地震の発生と同様、との数字は確率としては低いものですが、多くの人はその危険性を日頃から意識して気配りをしています。
もちろん、地震は避けられない天災であり、交通事故や火災と単純に比較するととはできませんが、たとえ確率が低くても地震も「身近な危険」としてとらえる姿勢が求められているのです。
(広報誌「地震本部ニュース」平成20年(2008年)6月号)