この度、地震調査研究推進本部地震調査委員会では、「全国を概観した地震動予測地図」について、平成19年1月から12月までに公表した長期評価や強震動評価などの最新情報を反映し、2008年版として更新・公表したので、ここに紹介します。 本委員会は、これまでに主要な活断層帯で発生する地震や海溝型地震の発生可能性の評価(長期評価)や、それらこ基づいた強震動(強い揺れ)の予測(強震動評価)を行い、随時公表してきました。「全国を概観した地震動予測地図」については、これまでの地震調査の研究成果のとりまとめとして、平成17年3月に初めて公表するとともに、平成18年9月に2006年版を、 平成19年4月には2007年版を、それぞれ更新・公表してきました。これらの「確率論的地震動予測地図」は、国民の防災意識の向上や効果的な地震防災対策を検討する上での基礎資料として活用が期待されています。
「全国を概観した地震動予測地図」は、「確率論的地震動予測地図」と「震源断層を特定した地震動予測地図」の異なる2種類の地図で構成されています。「確率論的地震動予測地図」は、主要活断層帯と海溝型地震をはじめ、対象地域に影響を及ぼす地震すべてを考慮 し、地震発生の可能性と地震動の強さを計算し、その結果を地図上に表現し たものです。一方、「震源断層を特定した地震動予測地図」は、特定の想定地震が発生した場合、その地震動の強さの分布を地図上に表現したものです。
今回の2008年版では、とのうち「確率論的地震動予測地図」についてのみ更新しました。
今回の2008年版と前回の2007年版との主な計算条件の違いは以下の通り です。
①主要活断層帯と海溝型地震について地震発生確率を算定するための計算基準日を変更
「平成19年(2007年)1月1日」
↓
「平成20年(2008年) 1月1日」
②平成19年に公表した主要活断層帯の長期評価の公表結果を反映
●警固断層帯 (3月公表)
●魚津断層帯 (5月公表)
●山形盆地断層帯(一部改訂7、8月公表)
●伊那谷断層帯(一部改訂、10月公表)
●サ口ベツ断層帯 (11月公表)
今回、公表した更新結果について、平成20年(2008年)1月1日を基準とした「今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図」の平均ケース図1(最もあり得るケース)と最大ケース図2(防災上の観点で有効)のそれぞれを示します。
また、都道府県庁所在地がある市役所舎及び北海道の支庁舎付近において、今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率について、表1に示します。
最も確率値が上がった高知市や津市などの関東南部から四園地方にかけての太平洋沿岸では、計算基準日を1年更新したことにより、南海トラフの地 震の発生確率が昨年より高くなったため、今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率も高くなりました。また、福岡市をはじめ九州北部では、警固断層帯の長期評価に基づき、警固断層帯の地震発生確率を高くしたため、今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率も高くなりました。
一方、山形市の確率値の低下は、山形盆地断層帯の平均ケースの地震発生確率が低くなったことと想定している地震の規模を小さくしたととが原因です。
平成21年度は、この「全国を概観した地震動予測地図」の高度化を目指した地図の公表を見込んでおり、その試作版として九州地域を対象とした地図を現在作成中です。
また、この高度化した「全国を概観した地震動予測地図」の年更新に関しては、新しい総合的かつ基本的な施策の中で検討する予定です。
(広報誌「地震本部ニュース」平成20年(2008年)6月号)