地震調査研究推進本部地震調査委員会は、4月11日に「警固断層帯(南東部)の地震を想定した強震動評価」をとりまとめ、公表しました。ここではその概要を紹介します。
なお、計算に用いる地下構造モデルの設定等の評価手法の詳細については地震調査研究推進本部のホームページに掲載されている評価文・説明文をご覧下さい。
地震調査委員会では、警固断層帯の位置および形態、週去や将来の活動等に関する評価結果を平成19年3月に「警固断層帯の長期評価について」としてまとめ、公表しています。一方、2005年福岡県西方沖の地震についても、観測記録に基づく強震動評価手法の検証結果を公表しています。今回、これらの報告を踏まえ、断層モデルの設定において、長期評価のマグニチユードと整合し、かつ、改良された地下構造モデルを用い、簡便な手順でパラメータを設定できる手法を用いて強震動評価を行いました。
警固断層帯は、福岡市東区志賀島(しかのしま)北西沖の玄界灘(げんかいなだ)から博多湾、同市中央区、同市南区、春日市、大野城(おおのじょう)市、太宰府(だざいふ)市を経て、筑紫野(ちくしの)市に至る断層帯です。
過去の活動時期の違いから、玄界灘から志賀島付近にかけての2005年の福岡県西方沖の地震の震源域にあたる北西部と、志賀島南方沖の博多湾から筑紫野市の警固断層にあたる南東部に区分されます。北西部でごく近い将来に今回評価したような地震が発生する可能性は低いと考えられます。南東部ではマク、二チユード(M)7.2程度の地震が発生すると推定され、その際には断層近傍の地表面で、2m程度の左横すれが生じる可能性があり、今後30年以内の地震発生確率は0.3〜 6 %(基準日:2008年1月1日)と我が国の主要活断層帯の中では高いグループに属することになります。
今回は、警固断層帯の長期評価に基づき、断層帯南東部に対して強震動評価を行いました。図1のとおり、評価に用いる断層を警固断層帯南東部の地表トレースに沿って位置させ、アスペリティ(震源断層面の中で特に強い地震波が発生する領域)が1つの場合と大きさの異なる2つの場合を想定しました。また、震源断層モデルの傾斜角は、断層露頭やトレンチ調査において高角度の断層が確認されているととや、2005年福岡県西方沖の地震後の精密地震観測で、余震分布がほぼ垂直に並んでいることなどから90°に設定しました。破壊開始点は、その位置を特定するだけの情報がないため、アスペリティ分布の北西下端あるいは南東下端としました。各ケースにおける断層の形状、アスペリティおよび破壊開始点の位置を図2に示します。
図3に、それぞれのケースの震動分布を示します。地表の予測震度分布では、いずれのケースにおいても福岡市内の広い範囲で震度6強以上、断層から離れた筑紫平野北東部(筑後川中流域)の広い範囲でも震度6弱以上、南西部の広い範囲でも震度5強以上となっています。また、北面倒から破壊が開始した場合(図3ケース1b、2b)には、破壊の進行方向にあたる筑紫平野北東部の広い範囲でも震度6強以上の強い揺れになることが予想されます。
(広報誌「地震本部ニュース」平成20年(2008年)6月号)