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(広報誌「地震本部ニュース」平成28年(2016年)春号)

2016年熊本地震の緊急地震観測

地震調査研究の最先端 2016年熊本地震の緊急地震観測

2016年4月14日、16日に熊本県・大分県を中心として多くの被害をもたらした、マグニチュード6.5、7.3の地震が発生しました。これらは2016年熊本地震と呼ばれ、現在も多くの方々が避難生活を強いられています。内陸地震は人々の住んでいる場所の近傍で発生します。そのため、ひとたび地震が発生すると「あっという間」に強い揺れが襲い掛かる地震です。発生する様式も地震ごとにかなり異なり、今回の熊本地震では震度7を2回計測する地域があるなど、複雑な活動を示しています。このように、内陸地震は活動様式が複雑であることや繰り返し間隔が数千年以上におよぶことから、その発生予測が難しい地震です。

内陸地震を理解するために重要な点のひとつは、地震の発生する場所の特性を知ることです。地震が発生してから余震や引き続く大きな地震がどのような活動パターンを伴うか、地殻の構造がどのようになっているかを詳細に調べることは、地震の起こった地域の特性を知る上で重要です。これが明らかになれば、地震の起こっていないところの評価をするために大きな材料となるはずです。私たちは大きな地震が発生した後、できるだけ早く現地で地震計などを設置して観測を行っています。これは、大きな地震発生直後がもっとも活動の変化や特性が現れるためであり、とても重要です。北海道大、東北大、東京大、名古屋大、京都大、九州大を中心とした研究グループでは、突発的な地震発生後にできるだけ早く地震観測を行える体制を検討し、準備してきました。熊本地震ではこれが生かされ、速やかに観測が始められると同時に、地震調査委員会、地震予知連絡会などを通じて情報発信をすることができました。

熊本地震の発生領域はかねてから地震活動の活発な別府‐島原地溝帯と呼ばれる領域に位置しています。そのため、今回の地震発生前から九州大学・京都大学ではこの周辺に臨時の地震観測を実施していました。熊本地震発生直後から全国の大学が協力して地震観測点を設置し、現在は60箇所以上の臨時観測点で活動を捉えています。このように、熊本地震は、非常に稠密な地震観測がなされていた領域で最大前震から余震までを捉えることに成功した、まれなケースです。現在も観測・解析中ですが、徐々にこの地震の詳細が明らかになってきました。たとえば、今回の活動に関連した断層面は複数あり、複雑な形状であることがわかりました。さらに観測・解析を進めることで、発生メカニズムや地域の特性が明らかになってくると期待できます。

最後に、地震観測実施にあたっては関係機関、地元 住民の方々の大きなご協力をいただきました。記して感謝の意を表します。

図 地震震源域に展開されている地震観測点(2016年5月6日時点)。赤印は熊本地図 熊本地震震源域に展開されている地震観測点(2016年5震発生後に設置された観測点。灰色は震源分布を示す。黑実線は活断層の位置。月6日時点)。赤印は熊本地震発生後に設置された観測点。灰色は震源分布を示す。黑実線は活断層の位置。
松本 聡(まつもと・さとし)
松本 聡九州大学大学院理学研究院准教授。
東北大学大学院修士課程修了。
東北大学大学院理学研究科助手、秋田大学工学資源学部講師を経て現職。博士(理学)。
専門は地震学。内陸地震発生機構や火山との相互作用の研究を行っている。

(広報誌「地震本部ニュース」平成28年(2016年)春号)

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