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  3. 中国地域の活断層の長期評価~地域評価~を公表

(広報誌「地震本部ニュース」平成28年(2016年)秋号)

地震調査研究推進本部 中国地域の活断層の長期評価~地域評価~を公表

地域評価とは

 地震調査研究推進本部では、社会的・経済的に大きな影響を与えると考えられるマグニチュード(M)7以上の大地震に着目し、それを引き起こす可能性のある主要活断層帯(長さが20km以上)について、個別に地震規模や発生確率の長期評価を行ってきました。しかし近年、主要活断層帯以外でも、平成16年(2004年)新潟県中越地震(M6.8)などのM7未満の地震によっても被害を生じています。そのため、ある地域で発生する陸域の浅い地震による危険度がどの程度あるかを検討するためには、主要活断層帯を評価するだけでなく、周辺のより短い活断層等も含めて総合的に評価する必要があります。
 このような背景のもと、地震調査研究推進本部では、対象地域に分布する活断層で発生する地震を総合的に評価する「地域評価」の考え方を導入しています。具体的には、地表の長さが短い活断層や沿岸海域の活断層など、評価対象とする活断層の範囲を広げ、地域毎に地震発生確率や地震規模の評価を実施しています。こうした新たな評価方法に基づき、陸域及び沿岸海域に分布し、M6.8以上の地震を引き起こす可能性のある活断層について、対象とする地域ごとに総合的に評価したものを「活断層の地域評価」と呼んでいます。

 これまで、平成25年2月に九州地域を、平成27年4月に関東地域を対象に公表を行い、今回新たに中国地域の地域評価を平成28年7月に公表しました。


中国の地域評価の特色

 これまで中国地方では、広島県西部から山口県東部の地域を除いて、他の地方に比べて活断層が少なく、日本列島の中では地殻変動が比較的小さい地域であるとされてきました。これらの事からも、一般的に地震に関する危険度が小さい地域であるとの認識がしばしば示されてきました。しかし明治以降でも1872年の浜田地震(M7.0~ 7.2)や1943年の鳥取地震(M7.2)、平成12年(2000年)鳥取県西部地震(M7.3)などの大地震が発生しています(図1)。
 今回中国地域では、評価対象とした活断層が従来の6断層から24断層になりました。新たに評価されたものには、長さが20km未満のために評価対象外であった短い活断層のほか、近年の調査の進展により20kmを超えることが判明したものも含まれています。また従来評価してきた活断層でも、沿岸域での調査が進むことでより長大と再評価されたものや、これまで異なる活断層として評価されてきたものが一体として再評価されたものなどもあります。
 中国地域の評価では、全体を3つの区域に分割して評価をおこないました(図2)。区域は、活断層の性質、断層が生まれた起源や背景、地震発生様式に関連した地質構造の違いや、近年の地震活動の活発さなどを考慮して決定されました。この区域分割によって、個々の活断層で生じる大地震だけでなく、区域内で評価した全ての活断層の活動から、その区域内におけるM6.8以上の地震発生確率が算出可能になります。また近年の地震観測からも、同様の地震発生確率を算出することができるため、これらの異なる手法から求められた区域内の地震発生確率を加味することができます。それぞれの区域において今後30年以内にM6.8以上の地震が発生する確率を表1に示しています。

表1 中国地域の各区域でM6.8以上の地震が今後30年以内に発生する確率と区域内で生じる最大の地震の規模

 3区域はそれぞれ特徴が異なり、地震発生確率が最も高い区域は北部区域で40%となります。この区域は活断層が少ないものの、2000年の鳥取県西部地震のように活断層が知られていない領域でも大地震が発生しており、近年の地震活動は比較的活発です。西部区域は活断層が相対的に多く、中国地域の半数以上の活断層があり、地震の発生確率は14-20%となります。この発生確率は、一連の熊本地震が発生した九州中部・南部区域と同程度であることと比較して、決して危険度が小さいことを示す値ではないことが分かります。一方で、東部区域の地震発生確率は2-3% と、他の区域と比べて活断層も少なく地震活動も低調です。ただし、人口が集中する瀬戸内の沿岸域は、活断層による地震とは別に南海トラフで発生する海溝型地震の影響が大きいことから注意が必要です。

図1 中国地域の浅い陸域で発生したと考えられる主な歴史・被害地震

図2 中国地域で評価した活断層と区域分け(北部・東部・西部)活断層の色は、個別の活断層で今後30年以内に地震が発生する可能性の大きさに応じたランク分け(S、A、Z、X)に対応。

今後に向けて

 今回公表した地域評価では、次のような課題があります。まず、評価した活断層のうち、過去の活動履歴が不明なもの(図2中のXランクに該当)は、一部区間がそのようなものも含めると17断層にのぼり、その結果、地震発生確率が不明で地震の危険度を示せないものが多くあります。また、隣接する活断層で同時または短期間に活動が集中した可能性があるものの、現状のデータだけではそれらを十分に検討できていないものがあります。さらに、今回の評価対象とはしませんでしたが、地域内で活断層の可能性のある構造が16挙げられており、短い活断層や伏在断層を見落としている可能性も否定できません。地域評価を行う上で、これらの解明と信頼度の向上のためには、更なる調査が必要となります。
 今回の評価は、北部区域のように、地表で明瞭な活断層があまり見られない(見えづらい)地域であっても、地震の発生について潜在的に大きい危険度が存在し得ることを示しました。このようなことも念頭に、地域住民の皆さんには、自分の住む地域の活断層の存在とそれらの活動によって引き起こされる災害のリスクを改めて認識し、同様の地震は地域内のどこでも発生し得ることを前提に、防災意識の向上や地震災害への備えをしてもらいたいと思います。
 評価された活断層については個別に、想定された地震が発生した場合の周辺で生じる揺れの予測結果を示す「地震動予測地図」を現在作成しています。まずは簡便なものを年末年始頃に、より詳細なものを来春に公開する予定です。

(広報誌「地震本部ニュース」平成28年(2016年)秋号)

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