中央構造線断層帯(金剛山地東縁−伊予灘)
中央構造線断層帯は、近畿地方の金剛山地の東縁から、和泉山脈の南縁、淡路島南部の海域を経て、四国北部を東西に横断し、伊予灘に達する長大な断層帯です。
中央構造線断層帯は、奈良県香芝(かしば)市から五條市、和歌山県和歌山市、淡路島の兵庫県南あわじ市(旧三原郡南淡町)の南方海域を経て、徳島県鳴門市から愛媛県伊予市まで四国北部をほぼ東西に横断し、伊予灘に達しています。断層はさらに西に延びますが、ここでは佐田岬北西沖付近よりも東側を評価の対象としています。全体として長さは約360kmで、右横ずれを主体とし、上下方向のずれを伴う断層帯です。なお、断層帯の最東端の奈良県香芝市から五條市に至る金剛山地東縁部は西側が相対的に隆起する逆断層です。
※それぞれの図をクリックすると大きく表示されます。
隣接する有馬−高槻断層帯、六甲・淡路島断層帯、大阪湾断層帯との位置関係図はこちら
【 断層帯の過去・将来の活動 】 【 将来の地震発生の可能性 】 【 もしこの地震が発生したら 】 【 リンク 】
○断層帯の過去・将来の活動 [上に戻る]
<過去の活動>
中央構造線断層帯は、過去の活動時期の違いなどから、全体が6つの区間に分けられます。
金剛山地東縁の奈良県香芝市から五條市付近までの区間では、約2千年前以後、4世紀以前に最新活動があったと推定され、その平均的な活動間隔は約2千−1万4千年であった可能性があります。
和泉山脈南縁の奈良県五條市から和歌山市付近に至る区間では、7世紀以後、9世紀以前に最新活動があったと推定され、1回の活動に伴う右横ずれ量は4m程度であった可能性があります。また平均的なずれの速度と1回のずれの量から求められる平均的な活動間隔は、約1千1百−2千3百年であった可能性があります。
和歌山市付近ないしその西側の紀淡海峡から鳴門海峡に至る区間の最新活動は、約3千1百年前以後、約2千6百年前以前で、その平均的な活動間隔は、約4千−6千年であった可能性があります。本区間の最新活動の際に東側または西側の区間が同時に活動したかどうかは不明です。
四国東端の鳴門市付近から愛媛県伊予市を経て伊予灘の佐田岬北西沖付近に至る範囲では、16世紀に最新活動があったと推定される。この時には、鳴門市付近から佐田岬北西沖付近まで同時に活動したと推定されるが、複数の区間に分かれて活動した可能性もある。また、一つ前の活動では、石鎚断層及びこれより東側の区間(讃岐山脈南縁−石鎚山脈北縁東部)、石鎚山脈北縁の岡村断層からなる区間、川上断層及びこれより西側の区間(石鎚山脈北縁西部−伊予灘)の3つに分かれて活動したと推定されます。岡村断層は、その東半分が讃岐山脈南縁−石鎚山脈北縁東部の区間と並走し、また、西半分が石鎚山脈北縁西部−伊予灘の区間と並走します。各区間の1回の活動に伴う右横ずれ量は、讃岐山脈南縁−石鎚山脈北縁東部で6−7m程度、石鎚山脈北縁の岡村断層で6m程度、石鎚山脈北縁西部−伊予灘で2−3m程度であった可能性がある。それぞれの区間の平均的な活動間隔は、東側の讃岐山脈南縁−石鎚山脈北縁東部では、約1千−1千6百年、中央の岡村断層では、約1千−2千5百年、西側の石鎚山脈北縁西部−伊予灘では、約1千−2千9百年であった可能性があります。
<将来の活動>
中央構造線断層帯は連続的に分布しており、地表における断層の形状のみから将来同時に活動する区間を評価するのは困難です。ここでは主に過去の活動時期から全体を6つの区間に区分しましたが、これらの区間が個別に活動する可能性や、複数の区間が同時に活動する可能性、さらにはこれら6つの区間とは異なる範囲が活動する可能性も否定できません。
6つの区間が個別に活動する場合には、以下のような地震の発生が想定されます。
金剛山地東縁の区間が活動すると、マグニチュード6.9程度の地震が発生すると推定され、その際に金剛山地の東縁では断層の西側が東側に対して相対的に1m程度高まる段差や撓みが生じる可能性があります。
和泉山脈南縁の区間が活動すると、マグニチュード7.6−7.7程度の地震が発生すると推定され、その際に4m程度の右横ずれが生じる可能性があります。
和歌山市付近もしくはその西側の紀淡海峡から鳴門海峡に至る区間が活動すると、マグニチュード7.6−7.7程度の地震が発生すると推定されます。
讃岐山脈南縁から石鎚山脈北縁東部の石鎚断層に至る区間が活動すると、マグニチュード8.0程度もしくはそれ以上の地震が発生すると推定され、その際に6−7m程度の右横ずれが生じる可能性があります。
石鎚山脈北縁の岡村断層が活動すると、マグニチュード7.3−8.0程度の地震が発生すると推定され、その際に6m程度の右横ずれが生じる可能性があります。
石鎚山脈北縁西部の川上断層から伊予灘の佐田岬北西沖に至る区間が活動すると、マグニチュードが8.0程度もしくはそれ以上の地震が発生すると推定され、その際に2−3m程度の右横ずれが生じる可能性があります。
また、上記6つの区間とは異なる範囲が活動する可能性や断層帯全体が同時に活動する可能性も否定できません。断層帯全体が同時に活動した場合は、マグニチュード8.0程度もしくはそれ以上の地震が発生すると推定されます。この場合の地震発生の長期確率は求めることはできませんが、上で想定した6つの区間が個別に活動する長期確率を超えることはないと考えられます。
地震発生の長期確率にはいずれも幅がありますが、その最大値をとると、金剛山地東縁と和泉山脈南縁の区間は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の活断層の中では高いグループに属することになります。また、紀淡海峡から鳴門海峡に至る区間、讃岐山脈南縁から石鎚山脈北縁東部の石鎚断層に至る区間、石鎚山脈北縁の岡村断層からなる区間、及び石鎚山脈北縁西部の川上断層から伊予灘の佐田岬北西沖に至る区間は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の活断層の中ではやや高いグループに属することになります。
詳しい内容を知りたい方は、「中央構造線断層帯(金剛山地東縁−伊予灘)の評価(一部改訂)」( html版 / PDF版(37MB) )をご覧下さい。
○将来の地震発生の可能性 [上に戻る]
≪金剛山地東縁≫
地震の規模 : M6.9程度
地震発生確率: 30年以内に、ほぼ0%〜5% (地震発生確率値の留意点)
地震後経過率: 0.1−1.0 (地震後経過率とは?)
平均活動間隔: 約2000年−14000年
最新活動時期: 約2000年前−4世紀
≪和泉山脈南縁≫
地震の規模 : M7.6−7.7程度
地震発生確率: 30年以内に、0.07%〜14% (地震発生確率値の留意点)
地震後経過率: 0.5−1.3 (地震後経過率とは?)
平均活動間隔: 1100年−2300年程度
最新活動時期: 7世紀−9世紀
≪紀淡海峡−鳴門海峡≫
地震の規模 : M7.6−7.7程度
地震発生確率: 30年以内に、0.005%〜1% (地震発生確率値の留意点)
地震後経過率: 0.4−0.8 (地震後経過率とは?)
平均活動間隔: 約4000年−6000年
最新活動時期: 約3100年前−2600年前
≪讃岐山脈南縁−石鎚山脈北縁東部≫
地震の規模 : M8.0程度
地震発生確率: 30年以内に、ほぼ0%〜0.4% (地震発生確率値の留意点)
地震後経過率: 0.3−0.5 (地震後経過率とは?)
平均活動間隔: 約1000年−1600年
最新活動時期: 16世紀
≪石鎚山脈北縁(岡村断層)≫
地震の規模 : M7.3−8.0程度
地震発生確率: 30年以内に、ほぼ0%〜0.4% (地震発生確率値の留意点)
地震後経過率: 0.2−0.5 (地震後経過率とは?)
平均活動間隔: 約1000年−2500年
最新活動時期: 16世紀
≪石鎚山脈北縁西部−伊予灘≫
地震の規模 : M8.0程度もしくはそれ以上
地震発生確率: 30年以内に、ほぼ0%〜0.4% (地震発生確率値の留意点)
地震後経過率: 0.1−0.5 (地震後経過率とは?)
平均活動間隔: 約1000年−2900年
最新活動時期: 16世紀
詳しい内容を知りたい方は、「中央構造線断層帯(金剛山地東縁−伊予灘)の評価(一部改訂)」( html版 / PDF版(37MB) )をご覧下さい。
○もしこの地震が発生したら [上に戻る]
≪金剛山地東縁≫【詳細法震度分布】 | 【簡便法震度分布】 |
≪和泉山脈南縁≫
【詳細法震度分布】
【ケース1】 |
【ケース2】 |
【ケース3】 |
【ケース4】 |
≪紀淡海峡−鳴門海峡≫
【詳細法震度分布】
【ケース1】 |
【ケース2】 |
【ケース3】 |
【ケース4】 |
≪讃岐山脈南縁−石鎚山脈北縁東部≫
<入倉・三宅(2001)によりパラメータを設定するが、すべり量が観測事実に整合するようM0を調整する(ここでは0.6×M0)>
【詳細法震度分布】
【ケース1】 |
【ケース2】 |
<まずはセグメントごとにM0を算出し、それらを合算したM0から各パラメータを設定する>
【詳細法震度分布】
【ケース1】 |
【ケース2】 |
≪石鎚山脈北縁≫
【詳細法震度分布】
【ケース1】 |
【ケース2】 |
【ケース3】 |
【ケース4】 |
≪石鎚山脈北縁西部−伊予灘≫
<入倉・三宅(2001)によりパラメータを設定する>
【詳細法震度分布】
【ケース1】 |
【ケース2】 |
<まずはセグメントごとにM0を算出し、それらを合算したM0から各パラメータを設定する>
【詳細法震度分布】
【ケース1】 |
【ケース2】 |
詳しい内容を知りたい方は、 「全国地震動予測地図」 をご覧下さい。
○リンク [上に戻る]
地震動予測地図等
- 強震動評価 (中央構造線断層帯(金剛山地東縁−和泉山脈南縁)の地震を想定した強震動評価) ( html版 / PDF版(7.1MB) )
中央構造線断層帯(金剛山地東縁−和泉山脈南縁)で地震が発生した場合の揺れの大きさを計算したものです。 - 中央構造線断層帯(金剛山地東縁区間、和泉山脈南縁区間)での地震を想定した予測震度分布(PDF 3.3MB)
「中央構造線断層帯(金剛山地東縁−伊予灘)の評価(一部改訂)」とあわせて示した予測震度分布です。 - 全国地震動予測地図
「全国地震動予測地図」 のページです。 - 地震ハザードステーション(J−SHIS)
防災科学技術研究所の地震ハザードステーション(J−SHIS)です。地震動予測地図の各種地図の閲覧、数値データ等のダウンロードが可能です。 - 長周期地震動予測地図
将来ある特定の地震が発生した際に生じる長周期地震動の揺れの強さや性質を予測した地図です。 - 内閣府 中部圏・近畿圏直下地震対策
内閣府「防災情報のページ」の中部圏・近畿圏直下地震対策のページです。内閣府では中部圏・近畿圏直下地震対策で、中央構造線断層帯の金剛山地東縁−和泉山脈南縁の地震を応急対策の検討対象、紀淡海峡−鳴門海峡の地震を検討対象としています。
活断層評価等
- 長期評価(中央構造線断層帯(金剛山地東縁−伊予灘)の評価(一部改訂)) ( html版 / PDF版(37MB) )
中央構造線断層帯(金剛山地東縁−伊予灘)の将来の地震発生の可能性についての評価です。 - 長期評価(中央構造線断層帯(金剛山地東縁−伊予灘)の評価) ( html版 / PDF版(25MB) )
中央構造線断層帯(金剛山地東縁−伊予灘)の将来の地震発生の可能性についての評価です。 - 中央構造線断層帯(金剛山地東縁−和泉山脈南縁)における重点的な調査観測
文部科学省では、「今後の重点的な調査観測について」(地震調査研究推進本部,2005)の中で、将来地震が発生した場合に予想される地震の規模が大きく(マグニチュード8程度を目安とする)、地震の発生確率が高い断層とされた中央構造線断層帯(金剛山地東縁−和泉山脈南縁)について、大学に委託し、重点的な調査観測を実施しています。 - 活断層調査
- 和歌山県 平成10年度 中央構造線断層帯(和泉山地南縁−金剛山地東縁)に関する調査成果報告書
- 徳島県 平成9年度 中央構造線断層帯(讃岐山脈南縁)に関する調査成果報告書
- 徳島県 平成10年度 中央構造線断層帯(讃岐山脈南縁)に関する調査成果報告書
- 徳島県 平成11年度 中央構造線断層帯(讃岐山脈南縁)に関する調査成果報告書
- 愛媛県 平成8年度 中央構造線伊予断層帯に関する調査成果報告書
- 愛媛県 平成9年度 中央構造線断層帯(愛媛北西部)に関する調査成果報告書
- 愛媛県 平成10年度 中央構造線断層帯(愛媛北西部・石鎚山脈北縁)に関する調査成果報告書
- 兵庫県 平成11年度 中央構造線断層帯(愛媛北西部・石鎚山脈北縁・讃岐山脈南縁)に関する調査成果報告書
- 財団法人地域地盤環境研究所 平成19年度 中央構造線断層帯(和泉山脈南縁−金剛山地東縁)の活動性および活動履歴調査(「基盤的調査観測対象断層帯の追加・補完調査」成果報告書 No.H19−5) (PDF 23MB)
- 産業技術総合研究所 活断層データベース
日本全国の活断層(活動セグメント)の分布とそのパラメータ、日本の活断層に関係する文献の書誌データ、文献から採録された調査地点ごとの調査結果データ、地下数十キロメートルまでの地下構造データが収録されています。 - 国土地理院 活断層図(都市圏活断層図)
国土地理院の活断層図(都市圏活断層図)のページです。
地震活動等
- 毎月の地震活動の評価
地震調査委員会による毎月(および臨時)の地震活動の評価です。 - 主な地震活動の評価
各地震活動について、これまでに公表された評価結果をとりまとめたものです。 - 日本の地震活動 −被害地震から見た地域別の特徴−
全国の地震活動の概要と地震に関する基礎知識、そして、日本を北海道、東北、関東、中部、近畿、中国・四国及び九州・沖縄に区分し、その地方の地震活動の概要をはじめ、その地域に被害を及ぼす地震のタイプ、これまでに発生した主な被害地震の概要、都道府県別(北海道は地域別)の特徴について書かれています。 - 震源・震度に関する情報
気象庁、防災科学技術研究所、大学などの地震観測データに基づく震源・震度に関する情報です。 - 地震に関するパンフレット
地震発生のしくみ、地震調査研究推進本部の取組などを解説した各種パンフレットです。
地方自治体等
【近畿地方】- 彦根地方気象台
彦根地方気象台のページです。滋賀県の被害地震の情報や気象・地震概況等を閲覧することができます。 - 京都地方気象台
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