長周期地震動予測地図(ハザードマップ)作成等支援事業
平成15年十勝沖地震(M=8.0)において、震源から遠く離れた苫小牧地域で長周期地震動による石油タンクの火災が発生したことを踏まえ、地震調査研究推進本部(地震本部)では、平成19年度から長周期地震動を予測する手法の研究に着手し、その研究成果は平成21年、平成24年および平成28年に長周期地震動予測地図試作版として公開した。
平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では、長周期地震動によって東日本から西日本の広い範囲で高層ビルが揺れてエレベーターの損傷や什器転倒などの被害が発生し、高層ビルの長周期地震動への対策の見直しが必要となった。そのような中、地震本部は、海溝型巨大地震の強震動予測を見直す必要があると指摘した(「新たな地震調査研究の推進に関する新総合施策」の改訂(平成24年9月6日))。
平成23年度および平成24年度の成果報告書では、上記の長周期地震動予測地図試作版や東北地方太平洋沖地震に関する知見等を踏まえて、南海トラフ及び相模トラフで発生するマグニチュード8~9級の海溝型地震を対象として、長周期地震動ハザードの評価に必要な時刻歴波形の計算を行い、震源モデル、地下構造モデル、計算手法の妥当性について検討した。
平成25年度の成果報告書では、南海トラフおよび相模トラフの長周期地震動に対して不確実性を考慮した検討を実施し、長周期地震動の確率論的ハザード評価を行う枠組みを提案し試行した。
平成26年度の成果報告書では、相模トラフの地震に対する長周期地震動ハザード評価へ向けて、これまでの検討内容を踏まえ、長周期地震動ハザードマップの広帯域化に向けた検討を実施した。
平成27年度の成果報告書では、これまでの検討内容を踏まえ、M8クラスの相模トラフ巨大地震を対象として、周期2秒まで広帯域化した長周期地震動ハザード評価に必要な時刻歴波形の計算を行い、震源モデル、地下構造モデル、計算手法の妥当性について検討した。
平成28年度の成果報告書では、南海トラフの地震の長周期地震動ハザード評価のための震源モデル、濃尾平野の浅部・深部統合地盤モデル試行版を作成した。また、周期1秒まで広帯域化する上での課題と濃尾平野を対象とした南海トラフ地震の長周期地震動ハザード評価の試行結果を示した。
平成29年度および平成30年度の成果報告書では、震源の多様性と破壊過程の不均質性を考慮した震源モデルと、最新の調査観測結果に基づいて改良した地下構造モデルを用いて、南海トラフ地震の長周期地震動ハザード評価の試行結果を示した。