熊本県
熊本県に被害を及ぼす地震は、主に陸域や沿岸部の浅い場所で発生する地震と、日向灘など東方の海域で発生する地震です。
熊本県とその周辺の主な被害地震 (図をクリックすると拡大表示)
陸域の浅いところでこれまでに発生した被害地震は、主に別府−島原地溝帯に沿った地域とその周辺(布田川(ふたがわ)断層帯・日奈久(ひなぐ)断層帯に沿う地域など)で発生しています。
別府−島原地溝帯やその縁を走る布田川断層帯の周辺に発生する被害地震は、阿蘇山周辺と熊本市周辺で多く知られています。阿蘇山の南外輪山付近で1894年と1895年にいずれもM6.3の地震が発生しました。1975年に阿蘇カルデラ北部で発生した地震活動(最大M6.1)では、震源域に最も近い阿蘇市一の宮町三野で家屋や道路などに被害が生じました。また、熊本市付近では、1889年に市街地のほぼ直下で、M6.3の地震が発生し、死者20名、家屋の全・半壊400棟以上という大きな被害が生じました。熊本市周辺ではこれ以外に、1625年、1723年、1848年、1907年にもM5〜6程度の被害地震が発生しています。日奈久断層帯周辺では、八代〜水俣付近で被害地震が多く、1619年にM6.0の地震が発生し、家屋等に被害が生じました。この付近では、1916年の地震(M6.1)や1931年の群発地震(最大M5.9)でも石垣の崩壊などの被害が生じました。
県内の浅いところで発生した地震はM6程度以下であり、地震に対応した地表での明瞭なずれが確認された活断層は見つかっていません。
九州東方の海域では、フィリピン海プレートが九州の下へ沈み込むことに関係した地震が発生しています。これらの地震でも熊本県内に被害が生じることがあります。1769年の日向灘北部から豊後水道にかけての地震(M7 3/4)では、肥後(熊本領内各地)で家屋倒壊115棟などの被害が生じました。
また、1941年の日向灘地震(M7.2)で県南部の人吉盆地で死者1名、家屋全壊6棟などの被害が生じました。1984年の日向灘地震(M7.1)でも県内で被害が生じました。さらに、陸域の下へ深く沈み込んだフィリピン海プレート内の地震で被害を受けることがあります。
熊本県では、南海トラフ沿いの巨大地震のなかで、四国沖から紀伊半島沖が震源域となった場合、地震の揺れなどによる被害を受けることもあります。例えば、1946年の南海地震(M8.0)では、死者2名や家屋への被害が生じました。また、1707年の宝永地震(M8.6)では津波の襲来が確認されています。
また、1922年の島原半島の地震(M6.9、M6.5)のように、雲仙断層群や島原半島付近で地震が発生すると、天草や熊本市でも被害が生じます。県南部の人吉盆地は、霧島火山周辺の地震でも被害を受けます。
熊本県に被害を及ぼした津波には、1792年の島原半島の地震での眉山(当時前山)崩壊によるものがあります。そのほか、1960年の「チリ地震津波」では床上浸水や水田の冠水などの被害が生じました。
熊本県の主要な活断層には、大分県の別府湾から熊本・大分県境まで延びる別府−万年山(はねやま)断層帯、阿蘇外輪山から島原湾に延びる布田川断層帯、熊本から八代海南部に延びる日奈久断層帯、県南西部から鹿児島県に延びる出水(いずみ)断層帯、県南東部に延びる人吉(ひとよし)盆地南縁断層、県中部を横切る緑川断層帯があります。短い活断層は阿蘇外輪南麓断層群、鶴木場断層帯、国見岳断層帯、水俣断層帯があります。
八代市や熊本市など島原湾・八代海沿岸は、やや弱い地盤であるため、地震が発生した場合には他の地域より揺れが大きくなる可能性があります。
また、熊本県周辺に震源域のある海溝型地震はありませんが、前述のように、南海トラフ沿いの巨大地震で被害を受ける可能性もあります。
天草市をはじめ県内の10市町村は、南海トラフの地震で著しい地震災害が生じるおそれがあり、「南海トラフ地震防災対策推進地域」に指定されています。
【 熊本県周辺の主要活断層帯と海溝で起こる地震 】
【 熊本県に被害を及ぼした主な地震 】 【 リンク 】
○熊本県周辺の主要活断層帯と海溝で起こる地震 [上に戻る]
地震 | マグニチュード | 地震発生確率 (30年以内) 【地震発生確率値の留意点】 |
|
海溝型地震 | |||
南海トラフ | 南海トラフで発生する地震 | 8〜9クラス | 70%程度 |
日向灘および 南西諸島海溝 周辺 |
安芸灘〜伊予灘〜豊後水道 | 6.7〜7.4 | 40%程度 |
日向灘プレート間地震 | 7.6前後 | 10%程度 | |
日向灘プレート間の ひとまわり小さいプレート間地震 |
7.1前後 | 70%〜80% | |
南西諸島周辺の浅発地震の発生領域 | − | − | |
九州から南西諸島周辺のやや深発地震 の発生領域 |
− | − | |
内陸の活断層で発生する地震 | |||
別府−万年山断層帯 | 別府湾−日出生断層帯 (東部) | 7.6程度 | ほぼ0% |
別府湾−日出生断層帯 (西部) | 7.3程度 | ほぼ0%〜0.05% | |
大分平野−由布院断層帯 (東部) | 7.2程度 | 0.03%〜4% | |
大分平野−由布院断層帯 (西部) | 6.7程度 | 2%〜4% | |
野稲岳−万年山断層帯 | 7.3程度 | ほぼ0%〜3% (最大2.6%) |
|
崩平山−亀石山断層帯 | 7.4程度 | ほぼ0% | |
布田川断層帯・ 日奈久断層帯 |
布田川断層帯(布田川区間) | 7.0程度 | ほぼ0%−0.9% |
布田川断層帯(宇土区間) | 7.0程度 | 不明 | |
布田川断層帯(宇土半島北岸区間) | 7.2程度以上 | 不明 | |
日奈久断層帯(高野−白旗区間) | 6.8程度 | 不明 | |
日奈久断層帯(日奈久区間) | 7.5程度 | ほぼ0%−6% | |
日奈久断層帯(八代海区間) | 7.3程度 | ほぼ0%−16% | |
水縄断層帯 | 7.2程度 | ほぼ0% | |
雲仙断層群 | 北部 | 7.3程度以上 | 不明 |
南東部 | 7.1程度 | 不明 | |
南西部 (北部) | 7.3程度 | ほぼ0%〜4% | |
南西部 (南部) | 7.1程度 | 0.5%〜1% | |
出水断層帯 | 7.0程度 | ほぼ0%〜1% | |
人吉盆地南縁断層 | 7.1程度 | 1%以下 | |
緑川断層帯 | 7.4程度 | 不明 |
○熊本県に被害を及ぼした主な地震 [上に戻る]
西暦(和暦) | 地域(名称) | M | 主な被害(括弧は全国での被害) |
1619年5月1日 (元和5) |
肥後・八代 | 6.2 | 麦島城はじめ公私の家屋が破壊した。 |
1625月7月21日 (寛永2) |
熊本 | 5.0〜6.0 | 熊本城の火薬庫爆発。天守付近の石壁、城中の石垣に被害。死者約50人。 |
1707年10月28日 (宝永4) |
(宝永地震) | 8.6 | 家屋倒壊470棟など。 |
1723年12月19日 (享保8) |
肥後・豊後・筑後 | 6.5 | 肥後で死者2人、負傷者25人、家屋倒壊980棟。 |
1769年8月29日 (明和6) |
日向・豊後・肥後 | 7 3/4 | 延岡城・大分城で被害大。熊本領内でも、死者1人、家屋倒壊115棟。 |
1854月12月24日 (安政元) |
(安政南海地震) | 8.4 | 安政東海地震、伊予西部の地震被害と重なり区別が難しい。死者6人、家屋全壊907棟。 |
1889年7月28日 (明治22) |
熊本 | 6.3 | 熊本市付近で被害大。死者20人、負傷者54人、住家全壊239棟。 |
1941年11月19日 (昭和16) |
日向灘 | 7.2 | 死者2人、負傷者7人、住家・非住家全壊19棟。 |
1946年12月21日 (昭和21) |
(南海地震) | 8.0 | 死者2人、負傷者1人、住家全壊6棟。 |
1975年1月23日 (昭和50) |
阿蘇山北縁 | 6.1 | 一の宮町三野地区に被害集中。負傷者10人、住家全壊16棟。 |
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