1. 確率論的地震動予測地図
1.1 概要
確率論的地震動予測地図は、主要活断層と海溝型地震はもちろんのこと、対象地域に影響を及ぼす地震全てを考慮し、地震発生の可能性と地震動の強さを計算し、その結果を地図上に表現したものです。
確率論的地震動予測地図は、設定する「期間」、「揺れの強さ」および「確率」を必要に応じて変えることで、その結果は多様な特徴をもった地図になります。
「期間」と「揺れの強さ」を固定した場合の「確率」の分布図
例:今後30年以内に震度6弱以上(計測震度5.5以上)になる確率の地図
図1.1−1,図1.1−2参照
「期間」と「確率」を固定した場合の「揺れの強さ」の領域図
例:今後30年以内に3%の確率で見舞われる震度(正確にはこの震度以上)の地図
図1.1−3参照
震度6弱以上になる確率 −いろいろな地震による揺れの総合化−
ある地点で今後30年以内に震度6弱以上になる確率は、いろいろな地震について「地震が発生する確率×その場所で震度6弱以上になる確率」を総合的に考慮して求めます。
例として、地点Xにおいて2つの地震A,Bを考えます。
今後30年以内の地震の発生確率 … A:40%, B:30%
地震により地点Xが震度6弱以上になる確率 … A:60%, B:40%
のとき、「30年以内に地震により地点Xで震度6弱以上になる確率」は、
地震Aの場合:0.4×0.6 = 0.24 (24%)
地震Bの場合:0.3×0.4 = 0.12 (12%)
となります。このとき、30年以内に地震Aまたは地震Bにより、地点Xで震度6弱以上になる確率は
1−(1−0.24)×(1−0.12) = 0.3312 (約33%)
となります。確率値の単純な足し算で「24%+12%=36%」とはならないことに注意が必要です。
図1.1−1 今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図(平均ケース)
全国を概観すると、地域によって強い揺れに見舞われる可能性に違いがあることが分かります。まず目につくのは、静岡県から四国南部までの太平洋側で26%以上の地域が広がっていることです。関東平野、宮城県の太平洋側、北海道の太平洋岸でも、高い確率で震度6弱以上の強い揺れに見舞われる可能性があることが分かります。
他にも主要活断層帯のみ及び海溝型地震のみを想定した場合の同様の図などがありますが、それらの図は「主な図の一覧」からご覧下さい。
※図をクリックすると大きな図を見ることができます。
図1.1−2 今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図(最大ケース)
主要活断層帯の平均活動間隔、最新活動時期の評価に幅がある場合が多いため、それぞれの中央値を用いて発生確率値を計算する場合(平均ケース:最もあり得るケース)と、確率の幅のうち最大値をとった場合(最大ケース:防災上の観点で有効)の確率論的地震動予測地図を作成しています。確率論的地震動予測地図は特に断り書きがない場合は、平均ケースのことを示しています。
平均ケースと最大ケースの違いについては、付録1を参照ください。
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図1.1−3 今後30年以内に3%の確率で一定の震度以上の揺れに見舞われる領域図
今後30年以内に3%の確率とは、平均的に約1000年に1回発生することに相当します。
震度6強以上になる地域は、静岡県から四国南部までの太平洋側に広く存在します。この他、四国東部の徳島平野、近畿地方の一部、関東平野の沿岸部の一部、長野県を縦断する線状の地域、仙台平野、北海道の太平洋岸でも見られます。
他にも主要活断層帯のみ及び海溝型地震のみを想定した場合の同様の図などがありますが、それらの図は「主な図の一覧」からご覧下さい。
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