平成14年1月9日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

2001年12月の地震活動の評価


1 主な地震活動

12月2日に、岩手県内陸南部でマグニチュード(M)6.4のやや深発地震が発生し、最大震度5弱を観測した。また、12月9日に、奄美大島(奄美大島近海)の深さ約40kmで、M5.8の地震が発生し、最大震度5強を観測した。これらの地震は被害を伴った。

この他、最大震度5弱を観測した地震として、12月8日に神奈川県西部の深さ約25kmでM4.5の地震があった。また、12月18日に、沖縄県の与那国島近海の深さ約10kmでM7.3の地震が発生し、沖縄県内で津波を観測した。 補足説明へ

2 各地方別の地震活動


(1) 北海道地方

目立った活動はなかった。 補足説明へ

(2) 東北地方

○ 12月2日に、岩手県内陸南部の深さ約120km(補足説明3参照)でM6.4のやや深発地震が発生し最大震度5弱を観測し、被害を伴った。余震活動は低調であった。

○ 12月8日に、福島・栃木県境(福島県中通り地方)の深さ約5kmで、M4.5の地震が発生した。この付近では、16日にもM4.1の地震が発生した。 補足説明へ

(3) 関東・中部地方

○ 12月8日に、神奈川県西部の深さ約25kmでM4.5の地震が発生し、最大震度5弱を観測した。余震活動は低調であった。

○ 三宅島付近から新島・神津島付近にかけての地震活動は、12月9日から10日にかけて新島西方沖でM4.5の地震を含む活動、また12月28日から29日にかけて神津島北東沖でM3.3の地震を含む活動がそれぞれあり、一時的に活発化した。一方、周辺のGPS観測によれば、最近の地殻変動は、まだ完全な停止にまでは至っておらず、変化傾向は一定となっている。しかし、地殻変動には、今回の一時的な地震活動の活発化に応じた新たな変化は見出されていない。

○ 12月28日に、福井・滋賀県境(滋賀県北部)の深さ約5kmでM4.2の地震が発生し、被害を伴った。

○ 駿河湾及びその周辺の地殻内の地震活動はやや活動レベルの低い状態が続いていたが、回復傾向が引き続き認められる。

東海地方のGPS観測結果に認められた、静岡県西部を中心とする地域での微小な変化は、その後も継続しているものの最近はやや鈍化の兆しが認められる。 補足説明へ

(4) 近畿・中国・四国地方

5月下旬から、和歌山・奈良県境付近で、微小地震の活動が続いている(補足参照)。 補足説明へ

(5) 九州・沖縄地方

○ 12月9日に、奄美大島(奄美大島近海)の深さ約40kmで、M5.8の地震が発生し、最大震度5強を観測し、被害を伴った。この地震は、陸側のプレート内部に発生した地震と考えられる。発震機構は、東西方向に圧力軸を持つ型であった。M5.8の地震の発生約20分前に、M4.0の地震が発生している。当該地震活動は、前震−本震−余震型の地震活動で、余震活動は、その後、消長を繰り返しながら減衰してきている。

○ 12月18日に、与那国島近海の深さ約10kmで、M7.3の地震が発生した。この地震により、沖縄県内で津波を観測した。この地震は、南西諸島海溝の陸側のプレート内部の浅いところで発生したと考えられる。発震機構は、東西方向に張力軸を持つ横ずれ成分を含む正断層型であった。当該地震活動は、本震−余震型で、余震活動は消長を繰り返しながら減衰してきており、日本周辺の過去の平均的な余震の減衰の仕方とほぼ同じである。12月28日にはこれまでで最大のM5.6の余震が発生した。 補足説明へ


(6) 補足

2002年1月4日に、和歌山・奈良県境の深さ約10kmで、M4.0の地震が発生した。この付近では、2001年5月下旬から微小地震の活動が続いており、12月まではM3.0以上の発生が、月に1〜2回程度であった。2002年1月になって活発になり、1月4日にはM3.0以上の地震が15回発生した。この地震活動は、過去の周辺の活動から見て、今後、消長を繰り返しながらしばらく続く可能性が考えられる。



2001年12月の地震活動の評価についての補足説明

平成14年1月9日
地震調査委員会

1 主な地震活動について

日本及びその周辺域では、マグニチュード(M)4.0以上の地震の発生は105回(11月は47回、2000年末までの30年間の月平均は約46回。)観測された。この内、M5.0以上の地震の発生は8回(11月は10回)であった。
 また、M6.0以上の地震の発生は、1998〜2000年の間で、年に平均16回(2000年までの30年間の年平均も約16回)発生している。2001年12月には、2回観測された。2001年は、12月までに11回発生している。なお、7月3日にマリアナ諸島(父島の南方約600km)で、M6.7のやや深発地震が1回発生しており(横浜などで震度1)、これを含めると12回である。
2000年12月以降2001年11月末までの間、主な地震活動として評価文に取り上げたものは次のものがあった。

−新潟県中越地方 2001年1月2日M4.4(深さ約10km)
−新潟県中越地方(1月2日の地震から南南東に40kmのところ)
2001年1月4日M5.1(深さ約10km)
−兵庫県北部2001年1月12日M5.4(深さ約10km)
−新島・神津島付近2001年2月13日M3.9(深さ約10km)
−安芸灘「平成13年(2001年)芸予地震」
2001年3月24日M6.7(深さ約50km)
−静岡県中部2001年4月3日M5.1(深さ約35km)

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2 各地方別の地震活動

(1) 北海道地方

北海道地方では、特に補足する事項はない。

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(2) 東北地方

東北地方では、他に、次の地震活動があった。
− 12月23日に、仙台湾の深さ約100kmで、M4.5の地震。

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(3) 関東・中部地方

「12月28日に、福井・滋賀県境(滋賀県北部)の深さ約5kmでM4.2の地震が発生し、被害を伴った。」
 この付近では、2001年4月16日に今回の震央より北東側約3kmでM4.0の地震が発生しており、また、北側約7kmではM3.1をこれまでの最大とする微小地震の活動が8月頃より続いている。

「駿河湾及びその周辺の地殻内の地震活動はやや活動レベルの低い状態が続いていたが、回復傾向が引き続き認められる。」:
長期的に見ると1996年頃からやや地震の発生頻度が低下し、2000年10月頃からさらに低下していたが、最近半年程度で見ると、地殻内の地震活動は、若干、発生頻度が高くなっているように見え、12月も引き続きその傾向が続いている。
「東海地方のGPS観測結果に認められた、静岡県西部を中心とする地域での微小な変化は、その後も継続しているものの最近はやや鈍化の兆しが認められる。」:
東海地方から中部地方にかけての太平洋側は、フィリピン海プレートの北西方向への沈み込みなどにより、西北西にほぼ一定速度で移動しているが、GPS観測結果では、静岡県西部を中心とする地域において、2001年4月頃から、この移動に、やや変化している傾向が見られるようになり、12月に入っても継続している。しかしながら、最近、この変化に鈍化の兆しが認められる。

(なお、本評価結果は、12月25日に開催された地震防災対策強化地域判定会委員打合会における見解(参考参照)と同様である。)
(参考)最近の東海地域とその周辺の地震・地殻活動(平成13年12月25日気象庁地震火山部)
「 東海地域においては、本年の前半はスラブ内の地震活動はやや多い状態が続きましたが、最近は平常かやや少ない状態です。
   駿河湾及びその西岸域の地殻内の地震活動については、活動の低い状態が継続していましたが、本年の後半はやや多い状態で推移しています。
 また、東海地域及び周辺の地殻変動には、国土地理院の観測によれば本年の初め頃から長期的な変化が認められますが最近は鈍化の兆しが認められます。これまでに東海地震に直ちに結びつくような変化は観測されていません。」
関東・中部地方では、その他、次の活動があった。
    − 12月23日に、父島近海でM5.8の地震。

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(4) 近畿・中国・四国地方

近畿・中国・四国地方では、特に補足する事項はない。

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(5) 九州・沖縄地方

「12月18日に、与那国島近海の深さ約10kmで、M7.3の地震が発生した。・・・(略)・・・。」
この付近のGPS観測の結果では、本震の発生に伴って、震央の北側では南向きの、東側では東向きの水平地殻変動が観測されており、今回の地震の発震機構に整合している。なお、本震の約20秒前に、M4.1の地震が、ほぼ同じ場所で発生している。
九州・沖縄地方では、その他、次の地震があった。
    − 12月21日に西表島付近で、M4.2の地震。

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(6) 補足

「2002年1月4日に、和歌山・奈良県境の深さ約10kmで、M4.0の地震が発生した。・・・(略)・・・。この地震活動は、過去の周辺の活動から見て、今後、消長を繰り返しながらしばらく続く可能性が考えられる。」
5月下旬から続いている和歌山・奈良県境付近の深さ約10kmでの微小地震の活動(12月までの最大M3.6)は、1月に入ってからは、南側(奈良県側)を中心に続いてい
る。5月下旬からの一連の活動の発生域は、南北約6km、東西約5kmに及び、西に緩やかに傾斜するような面状となっているが、活発なところとそうでないところがある。当該地域には顕著な地殻変動は見出されていない。
最近では、三重県中部で、最大M4.0程度の地震を含む地震活動が、1999年1月下旬から1年半程度続いた例がある。

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3 12月2日に発生した岩手県内陸南部のM6.4の地震の震源の深さの変更について

12月2日に、岩手県内陸南部に発生したM6.4の地震の深さは、「2001年11月の地震活動の評価」では、約130kmとしていたが、約120kmに変更する。
 (説明)この地震は、地震波の解析から、二つの地震がほぼ同じ場所を震源として連続して発生したことが確認された。二つの地震の発生時刻の差は0.6秒程度であり、このことを踏まえて、震源を再精査した結果、M6.4の地震の震源の深さは約120kmとなった。

訂正 2001年に公表した各月の補足説明のうち、「1 主な地震活動について」中のM6.0以上の地震回数について誤りがあったため、以下の下線部分について訂正します。なお、7月3日のマリアナ諸島の地震は含めていません。

 (
3月の補足説明)2001年は1月〜3月までに、2回発生している。→3回
 (4月の補足説明)2001年は1月〜4月までに、3回発生している。→4回
 (5月の補足説明)2001年は1月〜5月までに、4回発生している。→5回
 (6月の補足説明)2001年は1月〜5月までに、5回発生している。→1月〜6月までに、6回
 (7月の補足説明)2001年は1月からこれまでに、5回発生している。→6回
 (8月の補足説明)2001年は1月からこれまでに、7回発生している。→8回
 (9月の補足説明)2001年は1月からこれまでに、7回発生している。→8回
 (10月の補足説明)2001年は1月からこれまでに、8回発生している。→9回
 (11月の補足説明)2001年は1月からこれまでに、8回発生している。→9回

参考1 「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安
M6.0以上のもの。又は、M4.0以上(海域ではM5.0以上)の地震で、かつ、最大震度が3以上のもの。
参考2 「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安
「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。
「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。
評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。