三重県
三重県に被害を及ぼす地震は、主に太平洋側沖合で発生する地震と、陸域の浅いところで発生する地震と、沈み込んだフィリピン海プレート内で発生する地震です。
三重県とその周辺の主な被害地震 (図をクリックすると拡大表示)
太平洋側沖合では、南海トラフ沿いでM8クラスの巨大地震がほぼ100〜200年間隔で繰り返し発生してきました。これらの地震のうち、静岡県から三重県にかけての沿岸部を含む太平洋側沖合で発生した場合には、その震源域が三重県の陸域の一部まで達するため、強い揺れに見舞われることが多くあります。例えば1944年東南海地震では三重県のほぼ全域が震度5から6相当の揺れに見舞われました。加えて、津波を伴う場合が多く、過去には10m以上の津波に襲われたこともあります。さらに、フィリピン海プレート内で発生したM7程度の地震であっても被害が生じます。例えば、2004年の紀伊半島南東沖の地震(M7.4)でも、松阪市や香良洲町(旧名、現在の津市)で震度5弱の揺れを観測し、県内で8名の負傷者が生じました。また、1944年東南海地震の西隣で発生した1946年南海地震(M8.0)のように和歌山県から高知県にかけての沿岸部を含む太平洋側沖合で発生した地震によっても、地震の揺れや津波による被害を受けたことがあります。
陸域の浅い場所で発生した被害地震としては、1854年の伊賀上野付近の地震(M7 1/4:伊賀上野地震と呼ぶこともあります)が知られています。この地震により、伊賀上野付近で死者600余名、周辺地域を含めると約1,300名の死者を出すなど、被害は伊賀上野から奈良・大和郡山にかけての地域で著しいものとなりました。この地震は木津川断層帯で発生したと考えられています。木津川断層帯は横ずれ成分を伴う逆断層ですが、この地震による横ずれの大きさは分かっていません。この地震には、一ヶ月程前から前震がありました。また、本震の数時間後には最大余震がありましたが、地域によっては、本震とほぼ同じように感じられ、四日市付近ではこの余震の方が強く感じられたようです。
沈み込んだフィリピン海プレート内で発生した陸域のやや深い地震としては、三重県・奈良県の県境付近で発生した1899年の地震(M7.0、推定の深さ40〜50km:紀伊大和地震と呼ぶこともあります)がこのタイプの地震であると考えられています。この地震では、県内で死者7名などの被害が生じました。また、隣の奈良県のやや深いところで発生した1952年の吉野地震(M6.7、深さ61km)も陸域のやや深い地震であり、三重県でも小被害が生じました。
県外で発生した地震についても、1891年の濃尾地震(M8.0)など周辺地域で発生する地震によっても三重県内で被害が生じたことがあります。さらに、1960年の「チリ地震津波」のような外国の地震によっても津波被害を受けたことがあります。1819年(M7 1/4)の近江の地震でも県北部の川沿いを中心に被害が発生しました。
県内には、中央構造線より北側に、活断層が分布しています。岐阜・愛知県との県境付近に延びる養老−桑名−四日市断層帯とその延長上の伊勢湾内にある伊勢湾断層帯、滋賀県との県境の東側に鈴鹿東縁断層帯があります。北部には、南北方向に布引山地東縁断層帯と頓宮(とんぐう)断層が平行に走っており、それに直交するように京都府南東部から延びる木津川断層帯があります。また、県内に被害を及ぼす可能性のある海溝型地震には、想定東海地震、東南海地震及び南海地震があります。伊勢湾沿岸部ではやや軟弱な地盤になっており、地震が発生したときには、周辺の地域に比べて揺れが大きくなる可能性があります。
県内全域が、南海トラフの地震で著しい地震災害が生じるおそれがあり、「南海トラフ地震防災対策推進地域」に指定されています。また沿岸部の16市町は「南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域」に指定されています。
【 三重県周辺の主要活断層帯と海溝で起こる地震 】
【 三重県に被害を及ぼした主な地震 】 【 リンク 】
○三重県周辺の主要活断層帯と海溝で起こる地震 [上に戻る]
地震 | マグニチュード | 地震発生確率 (30年以内) 【地震発生確率値の留意点】 |
||
海溝型地震 | ||||
南海トラフ | 南海トラフで発生する地震 | 8〜9クラス | 70%程度 | |
内陸の活断層で発生する地震 | ||||
阿寺断層帯 | 主部 (北部) | 6.9程度 | 6%〜11% | |
主部 (南部) | 7.8程度 | ほぼ0% | ||
佐見断層帯 | 7.2程度 | 不明 | ||
白川断層帯 | 7.3程度 | 不明 | ||
屏風山・恵那山断層帯 及び猿投山断層帯 |
屏風山断層帯 | 6.8程度 | 0.2%〜0.7% | |
赤河断層帯 | 7.1程度 | 不明 | ||
恵那山−猿投山北断層帯 | 7.7程度 | ほぼ0%〜2% | ||
猿投−高浜断層帯 | 7.7程度 | ほぼ0% | ||
加木屋断層帯 | 7.4程度 | 0.1% | ||
濃尾断層帯 | 温見断層 (北西部) | 6.8程度 | ほぼ0% | |
温見断層 (南東部) | 7.0程度 | 不明 | ||
主部 (根尾谷断層帯) | 7.3程度 | ほぼ0% | ||
主部 (梅原断層帯) | 7.4程度 | ほぼ0% | ||
主部 (三田洞断層帯) | 7.0程度 | 不明 | ||
揖斐川断層帯 | 7.1程度 | 不明 | ||
武儀川断層 | 7.3程度 | 不明 | ||
柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯 | 主部(北部) | 7.6程度 | ほぼ0% | |
主部(中部) | 6.6程度 | 不明 | ||
主部(南部) | 7.6程度 | 不明 | ||
浦底−柳ヶ瀬山断層帯 | 7.2程度 | 不明 | ||
養老−桑名−四日市断層帯 | 8程度 | ほぼ0%〜0.7% | ||
鈴鹿東縁断層帯 | 7.5程度 | ほぼ0%〜0.07% | ||
鈴鹿西縁断層帯 | 7.6程度 | 0.08%〜0.2% | ||
頓宮断層 | 7.3程度 | 1%以下 | ||
布引山地東縁断層帯 | 西部 | 7.4程度 | ほぼ0%〜1% | |
東部 | 7.6程度 | 0.001% | ||
木津川断層帯 | 7.3程度 | ほぼ0% | ||
三方・花折断層帯 | 三方断層帯 | 7.2程度 | ほぼ0% | |
花折断層帯 (北部) | 7.2程度 | 不明 | ||
花折断層帯 (中南部) | 7.3程度 | ほぼ0%〜0.6% | ||
京都盆地−奈良盆地断層帯南部 (奈良盆地東縁断層帯) |
7.4程度 | ほぼ0%〜5% | ||
有馬−高槻断層帯 | M7.5程度 (±0.5) |
ほぼ0%〜0.03% | ||
生駒断層帯 | 7.0〜7.5程度 | ほぼ0%〜0.1% | ||
伊勢湾断層帯 | 主部 (北部) | 7.2程度 | ほぼ0% | |
主部 (南部) | 6.9程度 | ほぼ0%〜0.002% | ||
白子−野間断層 | 7.0程度 | 0.2%〜0.8% |
○三重県に被害を及ぼした主な地震 [上に戻る]
西暦(和暦) | 地域(名称) | M | 主な被害(括弧は全国での被害) |
684年11月29日 (天武13) |
土佐その他南海・東海・西海地方 | 8 1/4 | (南海トラフ沿いの巨大地震。諸国で家屋の倒壊、津波あり、死傷者多数。) |
887年8月26日 (仁和3) |
五畿・七道 | 8.0〜8.5 | (南海トラフ沿いの巨大地震。京都で家屋倒壊多く、圧死者多数。沿岸部で津波による溺死者多数。) |
1096年12月17日 (永長1) |
畿内・東海道 | 8.0〜8.5 | 東海沖の巨大地震と考えられる。伊勢で津波被害あり。 |
1099年2月22日 (康和1) |
南海道・畿内 | 8.0〜8.3 | (南海沖の巨大地震と考えられる。興福寺、摂津天王寺などで被害。) |
1361年8月3日 (正平16) |
畿内・土佐・阿波 | 8 1/4〜8.5 | (南海トラフ沿いの巨大地震。各地で、強い揺れ、津波により、死者多数。) |
1498年9月20日 (明応7) |
東海道全般 | 8.3 | 南海トラフ沿いの巨大地震。沿岸部で津波被害。伊勢大湊で溺死者5,000人など。 |
1605年2月3日 (慶長9) |
(慶長地震) | 7.9 | 南海トラフ沿いの巨大地震。沿岸部に津波来襲。 |
1707年10月28日 (宝永4) |
(宝永地震) | 8.6 | 南海トラフ沿いの巨大地震。尾鷲付近で、死者1,070人以上、家屋流失1,510棟。その他県内で、死者57人、負傷者73人、家屋全壊2,333棟、同流失601棟。 |
1854年7月9日 (安政1) |
伊賀・伊勢・大和および隣国(伊賀上野地震とも呼ばれる) | 7 1/4±1/4 | 伊賀上野付近で死者約600人、家屋全壊2,000棟余、周辺でも被害あり。 |
1854年12月23日 (安政1) |
(安政東海地震) | 8.4 | (東海沖の巨大地震。強い揺れ及び津波により、関東から近畿にかけて被害。住家全壊・焼失約30,000棟、死者2,000〜3,000人。) |
1891年10月28日 (明治24) |
(濃尾地震) | 8.0 | 北部を中心に被害。死者1人、負傷者17人、家屋全壊625棟。 |
1899年3月7日 (明治32) |
紀伊半島南東部(紀伊大和地震とも呼ばれる) | 7.0 | 南部を中心に被害。木ノ本・尾鷲で死者7人、負傷者62人、家屋全壊35棟。 |
1944年12月7日 (昭和19) |
(東南海地震) | 7.9 | 強い揺れ及び津波により被害。死者・行方不明者406人、負傷者607人、住家全壊1,826棟、同流失2,238棟。 |
1946年12月21日 (昭和21) |
(南海地震) | 8.0 | 強い揺れ及び津波により被害。死者11人、負傷者35人、住家全壊65棟、同流失23棟。 |
1952年7月18日 (昭和27) |
(吉野地震) | 6.7 | (死者9人、負傷者136人、住家全壊20棟。) |
1960年5月23日 (昭和35) |
(チリ地震津波) | 9.5 注) | 津波により被害。住家全壊2棟、同流失1棟。 |
2004年9月5日 (平成16) |
紀伊半島南東沖 →【地震本部の評価】 |
7.4 | 負傷者8人。 |
2011年3月11日 (平成23) |
(平成23年(2011年) 東北地方太平洋沖地震) 【地震本部の評価】 →平成23年3月11日公表 →平成23年3月13日公表 →平成23年4月12日公表 →平成25年3月11日公表 →平成26年3月11日公表 →平成27年3月10日公表 |
9.0 | 負傷者1 (平成27年3月11日現在、警察庁調べ)。 |
注)「チリ地震津波」のマグニチュードはKanamori(1977)によるモーメントマグニチュード(Mw)で、他の地震のマグニチュードと異なります。
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