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更新過程を利用する事例
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丹那断層については,文献[29, p.821,]のTable 5のcase(2)のうち, Grade Aのみを引用した。
表 3.13: 丹那断層の地震の発生年と発生間隔。文献[29,
p.821,]のTable 5のうち, case(2)(暦年補正を行ったもの)のGrade Aのみを抜粋し,その中央値又は推定された値を使用。以後これをdata
set 丹那Iとし, 1930年の北伊豆地震を除いたものをdata set 丹那I'とする。なお,表中B.P.はbefore
AD1950の意
表 3.14: data set I及びdata set I'について最尤法によって求めた各モデルのパラメータとAICの値,及びPoisson過程(指数分布)のAICの値。
bold体は4モデル中の最小のAICを示す
現時点での発生確率は当然の事ながら非常に低い値にあるが,最新の地震発生直前時点でみると, 1930年の北伊豆地震はかなり低い確率しかないときに発生したことが分かる。
表 3.15: 各分布毎の,丹那断層を震源域とする,今後30年,50年及び100年の地震発生確率
統計的仮説の有意性の検定において,統計学の習慣では,有意水準を5%あるいは1%に設定して,それ以下の確率しか持たない事象は起こらないと判断することが多い。しかし,その有意水準の値に必然的な理由があるわけではない。有意水準は,統計的検定に基づく判断が誤った場合の影響の大きさに応じて設定されるべきものである。また,ここで取り扱っている確率の数字は,それを評価する期間の長短に応じて大小することを指摘しておきたい。つまり,危険水準をある値に設定するとしても,それが30年間の確率か,100年間の確率かも同時に指定する必要がある。
なお,北伊豆地震の発生時期の早さについては,伊豆半島がフィリピン海プレートの北縁に位置し,駿河トラフと相模トラフに挟まれているというテクトニクスが原因しているという考え方もある。文献[30]によれば,北伊豆地震の7年前の1923年関東地震の発生により,丹那断層において北伊豆地震型の断層運動が起こりやすくなる方向で,応力が820kPa増加した。これは,丹那断層の平均活動間隔を約15%,実年代にして約190年短縮させる効果があると概算される。この報告書における伊豆半島のテクトニクスの考察はここまでにとどめ,これ以上は別の場に譲ることにする。