地震動

 地震により生じた地面の揺れのことを地震動と言う。地震動には、揺れが大きい・小さい、周期が長い・短い、揺れている時間が長い・短いなど、いろいろな性質がある。それぞれの性質によって違いはあるが、一般に地震動が強くなると、家屋の倒壊、地盤の液状化現象、山崩れや地すべりなどが発生し、被害が生じることがある。
 地震動は、一般に震源域に近いほど強いが、震源域から離れていても地盤が軟らかいところでは、強い地震動が生じることがある。また、地震動の強さは、断層運動の進行方向やずれの量、地下構造などにも影響される。例えば、「平成7 年(1995年)兵庫県南部地震」では、断層運動の進行方向や神戸市付近の地下構造によって局所的に地震動が強くなり、それが被害を大きくした一因と考えられている(日本の地震活動2-5(1)参照)
 なお、強い地震動のことを強震動と呼ぶ。また、地震動の強弱を表す数字のひとつに震度がある。


 関連する用語:震度地盤液状化現象土砂災害断層運動

地震の空白域

 プレート境界に沿って繰り返し発生するプレート間地震などは、長い期間を見ると、震源域がある列状に配列する。このような地震が、いくつか発生した場合、まだ地震が発生せずに残されている領域では、将来地震が発生する可能性がある。本報告書では、その領域のことを地震の空白域と呼ぶ。


 関連する用語:震源域

地震波

 地震のときに岩盤がずれ動くことによって、地中に振動が生じ、周囲に波として伝わっていく。この波のことを地震波と言う。地震波が地表に到達し、地面が揺り動かされることによって、我々は地震の揺れ(地震動)を感じる。
 地震波は、地中を伝わる実体波と地表面を伝わる表面波に分けられる。実体波は、さらにP波とS波の二つに分けられる。P波は縦波(波の進行方向と同じ方向に振動する波)であり、伸び縮みが伝わっていく。縦波の例としては音波がある。S波は横波(波の進行方向に対して垂直な方向に振動する波)であり、ねじれが伝わっていく。また、表面波は、池に石を落としたときに水面にできる波のように、地表面を伝わっていく。
 我々が地震の揺れを感じるときは、まずP波によりガタガタと上下方向の小刻みな揺れを感じた後、S波によりゆさゆさと横方向の揺れを感じる。P波がS波よりも速く伝わる(約1.7倍)ためである。P波とS波の到達時間の差(初期微動継続時間とも呼ばれる)から、震源までのおよその距離が分かるので、震源の決定に利用されている。


 関連する用語:地震動震源

地盤

 土木構造物の基礎になったり、工事の対象になる地球の表層部分をさす言葉。地盤は固結の程度によって、固結地盤(岩盤)、半固結地盤、未固結地盤(土)に分けられる。また、盛土や埋立地は人工地盤と呼ばれる。
 非常に柔らかい粘土や緩い砂からなる地盤は軟弱地盤と呼ばれ、建造物の基礎としては建物などを支える力が不足し、すべり破壊や地盤沈下等の障害が発生しやすい。また、地震による液状化、不同沈下なども起こしやすい。
 日本で軟弱地盤を構成する主なものは、最も新しい地層である沖積層で、海岸平野、河川背後の低湿地や台地や丘陵地を刻む浅い谷などに分布している。また、埋め立て造成地盤も軟弱地盤として扱われる。


 関連する用語:沖積層液状化現象

GPS

 GPS(Global Positioning System:汎地球測位システム)は、人工衛星を利用して位置を求めるシステムで、もともとアメリカ合衆国が航空機や船舶などからその位置を知るために開発したシステムである。地上約2万kmを周回する24個の人工衛星(GPS衛星)のうち4 個以上の衛星からの電波を同時に受信し、それぞれの衛星の位置と受信した時刻から受信した位置が求められる。この方法は、現在カーナビゲーションでも利用されている。さらに、複数の地点での受信データを比較することにより、相互の相対的な位置を決定する手法が開発され、非常に高い精度で距離の測定ができるようになった。その精度は、100万分の1から1000万分の1以上(10km当たり1cmから1mmの誤差)である。これを利用することにより、広域の地殻変動を高精度で連続的に検出することが可能になり、長い期間と多くの労力を必要とする従来の測量に代わって活用されている。
 なお、日本では、広域の地殻変動を連続的に観測するため、国土地理院などが平成20年3 月末現在で全国に約1,350点のGPS連続観測点を設置し、効率的に連続観測を行っている。


 関連する用語:地殻変動

震源・震源域

 地震とは地下の岩盤の破壊現象であり、一般にはある面(断層面)に沿って、その面の両側の岩盤が急激にずれ動く現象である。この「ずれ」は、ある点から始まって周囲に面状に広がっていく。最初に「ずれ」が始まった点を震源と言い、「ずれ」が生じた範囲全体のことを、本報告書においては震源域と言う。主な被害地震を示した図などに示した震源あるいは震源域は、それらを地表に投影したものである。なお、震源の直上の地表の点は震央と呼ばれることがある(図1)。


図1:震源・震源域

 このように「地震が生じたところ」は、点ではなく、面的な広がりを持ち、マグニチュードが大きくなるほど震源域は広くなる。例えば、震源域の広がりを見ると、M8程度の巨大地震では、幅数十km以上、長さ100km以上に及ぶことがあるが、M4程度の地震では、幅、長さともに1 km程度である。
 震源は地震波の観測から即座に求めることができるが、震源域の推定には時間がかかる。震源域は余震の分布、津波の波源域、地表に現れた断層などから推定されている。
 本報告書の図中の震源域は、原則として、陸域にかかる地震については断層モデル、海域の地震については津波の波源域を示している。陸域の地震の震源域については、断層が垂直に近いことが多いため、地表面に投影した場合、実際の震源域の大きさより狭く見える。逆に、津波の波源域は津波が発生した範囲を示すので、地下の震源域の地表面への投影より広くなりがちである。


 関連する用語:断層マグニチュード

震度

 震度とは、地震による地面の揺れ(地震動)の強さの程度を表す量である。地面の揺れの強弱は地震被害と密接な関係があるので、震度は地震防災上重要な情報として活用されている。現在日本では、震度計を用いて観測され、地震発生後、すぐに気象庁から発表される。揺れの弱い方から順に、0、1、2、3、4、5弱、5強、6弱、6強、7の10段階で表される気象庁震度階級が用いられている。また、気象庁では、ある震度が観測された場合、その周辺で実際にどのような現象や被害が予想されるかを表にしている(参考資料1)
 日本では、1880年代から震度の観測が行われており、1991年に震度計が導入される以前は、人間が感じた揺れの強さや被害の状況などを基に震度が判断されていた。震度階級は何回か改正されており、現在の震度階級は平成8 年10月から用いられている。それまでは、震度0 ~ 7までの8 階級の震度階級が用いられていた(参考資料2 )。また、震度の観測が始まるより前に発生した地震の震度は、被害状況などから推定されている。
 震度を求める震度計は、地面の揺れの強さを数値化する器械である(参考資料3 )。震度計では、人が従来決めた震度とほぼ一致する数値が得られる。計算により得られた数値を計測震度と言い、計測震度の小数点以下を四捨五入して整数にしたものが、震度となる。なお、震度の5及び6については、表れる現象や被害に幅があることから、5弱と5強、6弱と6強の階級に分けられている。震度の計算には地面の揺れの加速度、周期、継続時間が複雑に関係している。震度7 の下限である計測震度6.5に対応する加速度は、周期が0.1秒のとき約2,700ガル、周期が2.0秒のとき約530ガルである(この値は継続時間が十分長いときの3成分合成値である)。


 関連する用語:マグニチュード

前震・本震・余震

 地震が発生すると、その地震が発生した場所で、それより小さい地震が多数発生する。最初の地震を本震、それに続く小さな地震を余震と言う。余震の回数は、本震の直後には多いが、ある経験式に沿って、時間とともにある程度規則的に減少する。余震の規模は本震のマグニチュードより1 程度以上小さいことが多いが、本震の規模が大きい場合は、余震でも被害が生じる場合がある。なお、余震のうち最大の規模を持つ地震を最大余震、余震が分布している領域を余震域と呼ぶ。また、余震の多くは本震の震源域の中で発生し、特に本震の直後(数時間から1日程度の間)の余震の分布は、本震の震源域をよく表している。
 各地方の被害地震の例で掲載した余震回数の推移を示すグラフでは、余震回数として、ある観測点で観測した回数(有感の場合には、揺れを感じた回数)を示した場合と、気象庁の地震観測網により観測された地震数を示した場合がある。気象庁の地震観測網により観測されている場合には、どこかの観測点で有感であった場合に、有感余震としている。
 本震が発生するより前に、本震の震源域となる領域で地震が発生することがあり、それを前震と言う。前震は、規模も小さく数も少ない場合が多いが、かなり多数発生して被害を及ぼすこともある。また、前震は本震の直前~数日前に発生することが多いが、一ヶ月以上前から発生することもある。ただし、本震が発生するより前に、ある地震が前震であるかどうかを判断することは、現状では難しい。
 上記のうち、本震と余震のみの地震活動を本震-余震型、前震も発生している場合は、前震-本震-余震型の地震活動と呼ぶ。
 なお、前震・本震・余震の区別がはっきりせず、ある地域に集中的に多数発生するような地震群を群発地震と呼ぶことがある。


 関連する用語:震源域群発地震