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本報告書に示した確率の数値は,
時間の経過により評価時点が変化することに応じて変化する。
地震の発生間隔が短いほど,その変化の割合も大きい。
その他にも,以下の事項に留意することが必要である。
- データの精度
今後,活断層調査の進展や歴史地震についての新たな知見の蓄積があり,
過去の地震活動に関する確度の高いデータが得られた場合に,
そのデータに基づいて再度,評価を実施すると,
得られる確率の値が大きく変わるということは十分考えられることである。
この報告書で確率の計算に用いたデータも暫定的なものであり,
精度が悪い場合には,将来,数値が大きい方へ,または小さい方へ変更される場合もありうる。 - 確率の信頼度
一般に,信頼度の低いデータに基づいて得られた確率は信頼度が低いと考えられる。
このため,基づいたデータの信頼度を表す何らかの表現
(例えばA,B,C等)が考案できれば,間接的に確率の数値の信頼度が分かることになり,
その利用価値は高いと考えられる。つまり,データの信頼度を示す記号が,
確率の値が今後どの程度変わり得るかを判断する指標となる。 - 確率の上限
確率の数値は,長期確率評価で使用するモデルの性格上,最高に上がっても
100%には達しない(表A.16〜A.18参照)。
例えば30年確率の極大値は,表4.1
に示したように,プレート間の地震の場合でも50%前後のものもあり,
また,陸域の断層では10%に達しない場合もある。
つまり,この評価手法が与える確率の数値は頭打ちになるということである。
したがって,低い数値であっても,単に安心情報と理解せず,
そのモデルがもたらす確率の最大値と比較して考える必要がある。 - 判断への利用
確率の数字を判断に利用する場合には,
統計学の習慣では有意水準を5%あるいは1%に設定して,
それ以下の確率しか持たない事象は起こらないとすることが多い。
しかし,その有意水準の値に必然的な理由があるわけではないので,
判断が誤った場合に重大な影響が生じる案件では,その重大さに応じて,
有意水準をもっと小さな値に設定すべきである。 - 注意喚起の指標の利用
長期評価手法で得られる確率の数値は,その数値のみを一面的に捉えるのではなく,
4.3節で示した断層の活動を注意喚起するための
各種の指標も利用していくことが重要である。
なお,それらの指標の利用方法について,更に検討を進めていくことも必要である。
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地震調査研究推進本部
Wed Jan 13 17:30:00 JST 1999