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確率の数値評価

  例えば時間区間 tex2html_wrap_inline5828 を等分したとき, 各分割区間に含まれている点の個数 tex2html_wrap_inline5830 で表される時系列で, tex2html_wrap_inline5832 が互いに独立であれば (非定常)Poisson過程であるが,一般には 独立ではない。

もし細分化された区間の長さ tex2html_wrap_inline5834 が小さければ tex2html_wrap_inline5832 は ほとんどの kでは0で,たまに点を含む区間で 1の値をとる時系列(0-1系列)と考えられる。 実際には点過程データは点を含む(つまり tex2html_wrap_inline5840 となる)時刻 tex2html_wrap_inline5842 のみの系列 tex2html_wrap_inline5844 で表記される。このとき,ある時刻 tex2html_wrap_inline5846 の 分割区間が点を含むかどうかは, tex2html_wrap_inline5848 となる条件付き確率 tex2html_wrap_inline5850 によって決まる。 この条件付き確率の極限的表現として,条件付き強度関数 tex2html_wrap_inline5852 が 次のように定義される。

  equation316

ここで tex2html_wrap_inline5854 は時刻 t以前に発生した点事象の履歴 tex2html_wrap_inline5858 であり, tex2html_wrap_inline5860tex2html_wrap_inline5834 に対して高位の無限小,すなわち

displaymath5826

を満たす量を示す。すなわち,簡単に言えば,無視できる程度に小さい量のことである。 強度 tex2html_wrap_inline5852 のとる値の大小につれて,微小区間 tex2html_wrap_inline5866 で 点事象が発生する確率が変化する。 この関数は時刻 t及びそれまでの履歴 tex2html_wrap_inline5858 の非負値関数である。 この関数は他のデータなどの情報に依存することも考えられる。 条件付き強度関数が与えられれば,これに対応する点過程が完全に決まる。 例えば tex2html_wrap_inline5852 が履歴 tex2html_wrap_inline5854 に無関係で時刻 tだけの関数である場合は 非定常Poisson過程であり, 時刻 tにも無関係な定数のときは定常Poisson過程である。そして,

  equation328

のように tex2html_wrap_inline5880tex2html_wrap_inline5882 は時刻 tより前にあって最後に発生した点の時刻) だけの関数であれば,これは更新過程であることが証明できる。 関数 tex2html_wrap_inline58862.1.2で述べた危険率に他ならない。

tex2html_wrap_inline5852 は予測問題に直接に関係している。すなわち現時刻を tとしたとき, 極めて近い将来 tex2html_wrap_inline5892 に点事象が発生する確率は, 定義式(2.6)によって近似的に tex2html_wrap_inline5894 であり, 簡単な確率計算によれば[14],xだけ先の未来まで点事象が発生しない確率は,

  equation339

となる。別の見方をすると,xだけ先の未来までに点事象が1回以上発生する確率は,

  equation343

である。

以後,我々は更新過程を用いることとする。すなわち,条件付き強度関数 tex2html_wrap_inline5900 が 式(2.7)の形をしている場合を考え, かつ時刻の原点を tex2html_wrap_inline5882 にとる。 このとき,式(2.8)に関連して,

  equation350

なる量を考える。これは,式(2.8)から類推すると, 次の地震(故障)が前回の地震(故障)発生時点から tまでは起こらない (逆に言えば,t以降に起こる)場合の確率を表している。 一般にこれを信頼度関数と呼んでいる。 なお,確率密度関数 f(t)は, 式(2.10)の微分によって

equation357

と表すことができる。

この信頼度関数を用いて,式(2.9)と同様に, 前回発生年からの経過時間 Tまで地震が発生していないという条件の下で, T以後の時間 tex2html_wrap_inline5914 以内に 地震が発生する確率 tex2html_wrap_inline5916 は次のように求められる。

  eqnarray364

以後の議論で,各モデルの危険率・信頼度関数・分布の平均(以下, tex2html_wrap_inline5918 と記す) などの特性値は重要な役割を果たす。 本報告で扱うモデルのこれらの特性値を表2.1にまとめておく。

   table374
表 2.1: 本報告で扱うモデルの危険率・信頼度関数・分布の平均

式(2.1)〜(2.5)から, 式(2.12)及び表2.1を用いることによって, 最新の地震発生から地震が発生せずに T年経過した時点で, その後の tex2html_wrap_inline5914 年間に地震が発生する確率 tex2html_wrap_inline5916 は, 以下の式(2.13)〜(2.17)のように求められる。

    eqnarray458

   eqnarray487

式(2.18)の tex2html_wrap_inline5956 は今後確率計算の過程で頻繁に出現するが, この関数値は,正規分布表から,あるいは数値計算 gif で求めることができる。


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地震調査研究推進本部
Wed Jan 13 17:30:00 JST 1999