もし細分化された区間の長さ が小さければ は ほとんどの kでは0で,たまに点を含む区間で 1の値をとる時系列(0-1系列)と考えられる。 実際には点過程データは点を含む(つまり となる)時刻 のみの系列 で表記される。このとき,ある時刻 の 分割区間が点を含むかどうかは, となる条件付き確率 によって決まる。 この条件付き確率の極限的表現として,条件付き強度関数 が 次のように定義される。
ここで は時刻 t以前に発生した点事象の履歴 であり, は に対して高位の無限小,すなわち
を満たす量を示す。すなわち,簡単に言えば,無視できる程度に小さい量のことである。 強度 のとる値の大小につれて,微小区間 で 点事象が発生する確率が変化する。 この関数は時刻 t及びそれまでの履歴 の非負値関数である。 この関数は他のデータなどの情報に依存することも考えられる。 条件付き強度関数が与えられれば,これに対応する点過程が完全に決まる。 例えば が履歴 に無関係で時刻 tだけの関数である場合は 非定常Poisson過程であり, 時刻 tにも無関係な定数のときは定常Poisson過程である。そして,
のように ( は時刻 tより前にあって最後に発生した点の時刻) だけの関数であれば,これは更新過程であることが証明できる。 関数 は2.1.2で述べた危険率に他ならない。
は予測問題に直接に関係している。すなわち現時刻を tとしたとき, 極めて近い将来 に点事象が発生する確率は, 定義式(2.6)によって近似的に であり, 簡単な確率計算によれば[14],xだけ先の未来まで点事象が発生しない確率は,
となる。別の見方をすると,xだけ先の未来までに点事象が1回以上発生する確率は,
である。
以後,我々は更新過程を用いることとする。すなわち,条件付き強度関数 が 式(2.7)の形をしている場合を考え, かつ時刻の原点を にとる。 このとき,式(2.8)に関連して,
なる量を考える。これは,式(2.8)から類推すると, 次の地震(故障)が前回の地震(故障)発生時点から tまでは起こらない (逆に言えば,t以降に起こる)場合の確率を表している。 一般にこれを信頼度関数と呼んでいる。 なお,確率密度関数 f(t)は, 式(2.10)の微分によって
と表すことができる。
この信頼度関数を用いて,式(2.9)と同様に, 前回発生年からの経過時間 Tまで地震が発生していないという条件の下で, T以後の時間 以内に 地震が発生する確率 は次のように求められる。
以後の議論で,各モデルの危険率・信頼度関数・分布の平均(以下, と記す) などの特性値は重要な役割を果たす。 本報告で扱うモデルのこれらの特性値を表2.1にまとめておく。
表 2.1: 本報告で扱うモデルの危険率・信頼度関数・分布の平均
式(2.1)〜(2.5)から, 式(2.12)及び表2.1を用いることによって, 最新の地震発生から地震が発生せずに T年経過した時点で, その後の 年間に地震が発生する確率 は, 以下の式(2.13)〜(2.17)のように求められる。
式(2.18)の は今後確率計算の過程で頻繁に出現するが,
この関数値は,正規分布表から,あるいは数値計算
で求めることができる。