和歌山県
和歌山県に被害を及ぼす地震は、主に太平洋側沖合で発生する地震と、陸域の浅いところで発生する地震です。
和歌山県とその周辺の主な被害地震 (図をクリックすると拡大表示)
太平洋側沖合では、南海トラフ沿いでM8クラスの巨大地震がほぼ100〜200年間隔で繰り返し発生してきました。和歌山県では、これらの地震の震源域が内陸の一部まで達するため、強い揺れとなります。例えば1946年南海地震(M8.0)では、県内のほぼ全域で震度5相当の揺れが観測されました。また、その直後に大きな津波に襲われることが多く、津波の高さは高いところでは10m以上の高さになることがあります。南海トラフ沿いで発生する巨大地震は安政や昭和のように東海地震と南海地震と二つに分かれて発生する場合と、宝永地震のように1度に全体を震源域として我が国最大級の地震が発生する場合があります。和歌山県は、そのいずれの場合でも、地震の揺れや津波による被害を受けることがあります。
和歌山県では、歴史の資料により938年(M7.0)以降、古くから数々の陸域の地震によって被害を受けてきたことが知られていますが、震源が和歌山県内にあると推定されている地震の数はあまり多くありません。しかし、古い地震の震源の精度や、震源の位置はよく分からないものの紀伊半島南部に被害が生じたとの記録がいくつかあることを考えると、必ずしも県内で発生した地震が少ないかどうかは分かりません。さらに、活断層のない地域や紀伊水道も含めて、県内のところどころで、M7より小さい規模ですが局所的に被害が生ずる地震が発生することがあります。被害地震としては、明治以降では、1906年(M6.2)と1924年(M5.9)の日高川流域の地震、1938年の田辺湾沖の地震(M6.8)、1948年の田辺市付近の地震(M6.7)などが知られています。
周辺地域で発生する地震や1899年の地震(M7.0、推定の深さ40〜50km:紀伊大和地震と呼ぶこともあります)や1952年の吉野地震(M6.7、深さ約60km)のように沈み込んだフィリピン海プレート内で発生するやや深い場所で発生した地震によっても被害を受けたことがあります。また、1960年の「チリ地震津波」のように外国の地震によっても津波被害を受けたことがあります。
和歌山市付近では定常的に地震活動が活発です。ほとんどがM5程度以下の中小規模の地震ですが、和歌山市における有感地震回数は、最近の10年間では年平均19回程度にのぼり、日本で最も有感地震回数の多い地域の一つです。特に1920年以降報告回数が増えたことが知られています。近年この地域に大規模な地震の発生は知られていないので、この地震活動は特定の大地震の余震ではありません。その規模は最大でもM5程度ですが、震源がごく浅いために、局所的に被害が生じたこともあります。この付近の東側と西側では、フィリピン海プレートの沈み込む角度が違い、この付近の地下構造は複雑になっています。また、この付近の深さ数kmまでの浅いところは、堅いけれども脆い性質を持つ古い時代の岩石が分布しています。これらのことが、和歌山市付近の定常的な地震活動の原因と考えられています。また、地震が発生する深さは数kmよりも浅いところに限られており、上記の岩石が分布している深さで発生していると考えられます。なお、この地震活動が発生している地域の北部には中央構造線断層帯があります。その活動を起こす力の向きは、和歌山市付近の地震活動(東西方向の圧縮力)と中央構造線断層帯の活動(北西−南東方向の圧縮力)では異なっていますが、両者の関係についてまだはっきりとは分かっていません。
和歌山県の主要な活断層は、大阪府との境に沿って東西に延びる中央構造線断層帯(和泉山脈南縁)とその延長上に淡路島まで延びる中央構造線断層帯(紀淡海峡−鳴門海峡)があります。
また、県内に被害を及ぼす可能性のある海溝型地震には、想定東海地震、東南海地震及び南海地震があります。
県北部の紀ノ川河口部や御坊など地盤がやや軟弱な場所では、周辺より揺れが強くなる可能性があります。
県内全域が、南海トラフの地震で著しい地震災害が生じるおそれがあり、「南海トラフ地震防災対策推進地域」に指定されています。また沿岸部の19市町は「南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域」に指定されています。
【 和歌山県周辺の主要活断層帯と海溝で起こる地震 】
【 和歌山県に被害を及ぼした主な地震 】 【 リンク 】
○和歌山県周辺の主要活断層帯と海溝で起こる地震 [上に戻る]
地震 | マグニチュード | 地震発生確率 (30年以内) 【地震発生確率値の留意点】 |
||
海溝型地震 | ||||
南海トラフ | 南海トラフで発生する地震 | 8〜9クラス | 70%程度 | |
内陸の活断層で発生する地震 | ||||
京都盆地−奈良盆地断層帯南部 (奈良盆地東縁断層帯) |
7.4程度 | ほぼ0%〜5% | ||
有馬−高槻断層帯 | M7.5程度 (±0.5) |
ほぼ0%〜0.03% | ||
生駒断層帯 | 7.0〜7.5程度 | ほぼ0%〜0.1% | ||
六甲・淡路島断層帯 | 主部 (六甲山地南縁− 淡路島東岸区間) |
7.9程度 | ほぼ0%〜1% | |
主部 (淡路島西岸区間) | 7.1程度 | ほぼ0% | ||
先山断層帯 | 6.6程度 | ほぼ0% | ||
上町断層帯 | 7.5程度 | 2%〜3% | ||
中央構造線断層帯 | 金剛山地東縁 | 6.9程度 | ほぼ0%〜5% | |
和泉山脈南縁 | 7.6−7.7程度 | 0.07%〜14% | ||
紀淡海峡−鳴門海峡 | 7.6−7.7程度 | 0.005%〜1% | ||
大阪湾断層帯 | 7.5程度 | 0.004%以下 |
○和歌山県に被害を及ぼした主な地震 [上に戻る]
西暦(和暦) | 地域(名称) | M | 主な被害(括弧は全国での被害) |
684年11月29日 (天武13) |
土佐その他南海・東海・西海地方 | 8 1/4 | (南海トラフ沿いの巨大地震。諸国で家屋の倒壊、津波あり、死傷者多数。) |
887年8月26日 (仁和3) |
五畿・七道 | 8.0〜8.5 | (南海トラフ沿いの巨大地震。京都で家屋倒壊多く、圧死者多数。沿岸部で津波による溺死者多数。) |
1096年12月17日 (永長1) |
畿内・東海道 | 8.0〜8.5 | (東海沖の巨大地震と考えられる。伊勢・駿河で津波被害あり。) |
1099年2月22日 (康和1) |
南海道・畿内 | 8.0〜8.3 | (南海沖の巨大地震と考えられる。興福寺、摂津天王寺などで被害。) |
1361年8月3日 (正平16) |
畿内・土佐・阿波 | 8 1/4〜8.5 | (南海トラフ沿いの巨大地震。各地で、強い揺れ、津波により、死者多数。) |
1498年9月20日 (明応7) |
東海道全般 | 8.3 | (南海トラフ沿いの巨大地震。紀伊から房総沿岸にかけて津波あり、死者多数。) |
1605年2月3日 (慶長9) |
(慶長地震) | 7.9 | 南海トラフ沿いの巨大地震。津波により、広村で家屋流失700棟。 |
1707年10月28日 (宝永4) |
(宝永地震) | 8.6 | 南海トラフ沿いの巨大地震。死者688人、負傷者222人、家屋全壊681棟、同流失1,896棟。 |
1854年12月23日 1854年12月24日 (安政1) |
(安政東海地震) (安政南海地震) |
いずれも8.4 | 安政東海地震と安政南海地震の被害は区別するのが難しい。紀伊田辺領で、死者24人、住家倒壊255棟、同流失532棟、同焼失441棟。和歌山領で溺死者699人、家屋全壊約1万棟、同流失8,496棟、同焼失24棟。広村で、死者36人、住家全壊10棟、同流失125棟。沿岸の熊野以西では、津波により村の大半が流失した村が多かった。 |
1944年12月7日 (昭和19) |
(東南海地震) | 7.9 | 強い揺れ及び津波により被害。死者51人、負傷者74人、住家全壊121棟、同流失153棟。 |
1946年12月21日 (昭和21) |
(南海地震) | 8.0 | 強い揺れ、津波、地震後の火災による被害。死者・行方不明者269人、負傷者562人、住家全壊969棟、同流失325棟、同焼失2,399棟。 |
1948年6月15日 (昭和23) |
田辺市付近 | 6.7 | 死者1人、負傷者18人、家屋全壊4棟。 |
1952年7月18日 (昭和27) |
(吉野地震) | 6.7 | (死者9人、負傷者136人、住家全壊20棟。) |
2000年10月6日 (平成12) |
(平成12年(2000年) 鳥取県西部地震) →【地震本部の評価】 |
7.3 | 負傷者1人。 |
2004年9月5日 (平成16) |
紀伊半島南東沖 →【地震本部の評価】 |
7.4 | 負傷者1人。 |
○リンク [上に戻る]
地震動予測地図等
活断層評価等
地震活動等
地方自治体等