平成20年4月11日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会
強震動評価部会
地震調査委員会は、平成17年3月に「全国を概観した地震動予測地図」を公表した。現在、地震動予測地図の更なる有用性を目標として、改良を試行している段階にある。また、本委員会強震動評価部会は強震動評価手法としての「ハイブリッド合成法」1の高度化を検討するとともに、これを用いた強震動評価を実施し、「ハイブリッド合成法」の重要性・優位性を継続的に提言している(例えば、地震調査委員会強震動評価部会, 2002a2; 2002b3)。
そのような状況の中で、平成17年(2005年)3月20日に福岡県西方沖の地震(M7.0)が発生し、K−NETおよびKiK−net観測網、気象庁および自治体震度計観測網などにより貴重な強震記録が数多く得られた。そこで、活断層で発生する地震の強震動予測手法の妥当性を検証するため、「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(「レシピ」)」4(以下、「レシピ」という)を用いて得られた理論波形と観測波形との比較を行い、概ね説明できることを確認した。さらに、「レシピ」に関わる事項として、すべり速度時間関数および破壊伝播速度の変化による予測結果、波形インバージョンに基づく震源破壊過程の結果を用いた計算、アスペリティ内のライズタイム(破壊の立ち上がり時間)の違いによる計算の検討を行い、これらに現れる結果の傾向をまとめた。これらの結果は「中間報告5」として公表している。
今回は、深い地盤構造モデルおよび浅い地盤構造モデルを高精度化して強震動予測手法の再評価を行うとともに、「ハイブリッド合成法」を用いた場合の震度算出方法の検討を行った。さらに、浅い地盤構造モデルを用いて地盤応答計算による検討も行ったので、この結果についても報告する。
また、強震動の予測手法の標準化、高度化を目指し、強震動評価に用いた予測手法を最新の「レシピ」として添付してきたが、本報告では「中間報告」時の検討も踏まえ、「レシピ」の更新も併せて行った。
1 震源破壊過程や地下構造の性質を詳細にモデル化し、地震動の時刻歴波形を計算する地震動評価手法。これまでは「詳細法」としていたが、より明確な呼称に改めた。
2 地震調査委員会強震動評価部会(2002a):糸魚川−静岡構造線断層帯(北部、中部)の地震を想定した強震動評価について(平成14年10月31日公表)
3 地震調査委員会強震動評価部会(2002b):鳥取県西部地震の観測記録を利用した強震動評価手法の検証(平成14年10月31日公表)
4 強震動評価において、震源特性、地下構造モデル、強震動計算方法、予測結果の検証の手法や設定にあたっての考え方をまとめたものをここでは「レシピ」と呼ぶ。
5 地震調査委員会強震動評価部会(2007):2005年福岡県西方沖の地震の観測記録に基づく強震動評価手法の検証について(中間報告)(平成19年3月19日公表)
本文と説明 (PDF 320 KB)
付録 震源断層を特定した地震の強震動予測手法(「レシピ」) (PDF 2,914 KB)