パソコン版のウェブサイトを表示中です。

スマートフォン版を表示する

  1. 地震・津波の知識
  2. コラム
  3. 観測調査研究が進む日本海地震・津波調査プロジェクト
調査研究プロジェクト 観測調査研究が進む日本海地震・津波調査プロジェクト

1.日本海地震・津波調査プロジェクト

 2011年の「東北地方太平洋沖地震」は、極めて甚大な被害を及ぼしました。日本海側には、津波や強震動を引き起こす活断層が多数分布していますが、観測データが不足している地域もあり、日本海側の地震・津波災害に対する情報は十分ではありません。2013年より始まった文部科学省「日本海地震・津波調査プロジェクト」では、日本海の沖合から沿岸域及び陸域にかけての領域で観測データを取得し、日本海の津波波源モデルや沿岸・陸域における震源断層モデルを構築すること、これらのモデルを用いて津波・強震動シミュレーションを行うことを目的としています。また、このような科学的側面に加えて、調査・研究成果にもとづく防災リテラシーの向上のため、地域研究会などにより、行政と研究者間で津波災害予測に関する情報と問題意識の共有化を図ることも目的です(図1)。これらの目的を受けて、本プロジェクトでは、(1) 地域の防災リテラシー向上に向けた取り組み、(2)津波波源モデル・震源断層モデルの構築、(3)津波及び強震動の予測の三つのサブテーマを設定し、調査観測を行っています)。

図1 日本海地震・津波調査プロジェクトの概要

2.これまでの「日本海地震・津波調査プロジェクト」の取り組み 

 サブテーマ(1)では、これまでに日本海沿岸地域を対象に、住民の方への調査を実施しました。その結果、地域によって意識差があり、その原因に関する分析を行っています。また、「被害想定」が公表された際の自治体についての課題についても分析を行い、課題の検討を行っています。沿岸防災手法として、日本海側の海岸の特性を分析するとともに、堤防の設置形態と高さを整理しました。日本海側では、冬期季節風への対応が中心となっていることがわかりました。さらに、堤防越流に伴う後背地のリスク評価のために、海岸堤防の津波被害軽減性能に関する実験も行っています(図2)。地域研究会については、初年度に6地区での地域研究会と2地区での合同地域研究会を立ち上げて開催し、地震・津波防災の取り組み状況と課題の抽出を行っています。二年度目は、さらに1地区で新規に地域研究会を立ち上げました。これらの研究会では、日本海における地震・津波の特性に関する基礎情報の提供と意見交換を行い、地域の防災リテラシー向上を図っています。
 サブテーマ(2)に関しては、日本海で過去に発生した地震を対象として、地震カタログや地震波形記録を用いた地震学的解析を行い、断層パラメータの推定を行っています。また、津波の発生履歴を高度化するために、複数の地点で、ボーリング調査を実施して、過去の津波との関連が推察される堆積物を採取しました。加えて、津波波源モデルや地震断層モデルを高度化させるために、沿岸海域および海域と陸域にまたがる地域を対象とした地下構造調査(図3)、陸域における活構造調査を実施しています。また、地震が発生する深さを推定するために、陸域観測データを用いて沿岸域の地震活動の把握を実施しています。高度化されたモデルを作成するためには、構成岩石や、より深部の地下構造の情報が必要です。これらについても、実験や観測を実施して、データの収集に努めています。
 サブテーマ(3)に関しては、津波シミュレーションに必要な断層や津波波源に関する情報を整理すると共に、海底地形データ、計算コードの整備を行いました。その後、既存の断層モデルを用いて沿岸での津波高を計算し(図4)、津波高の頻度分布を作成して、確率論的津波予測のための基礎資料としたほか、大きな津波を発生する断層の抽出を行っています。強震動予測の高度化には、震源モデル及び地下構造モデルの高度化が必要です。そこで、計算に必要な情報を収集すると共に、地震基盤までの堆積層の速度構造情報が不足している地域では、微動アレイ観測を実施し、地下構造モデルの検証並びに改良を行いました。また、近年発生した内陸被害地震の震源モデルを収集し、強震動生成の観点に立った震源モデル特性化について検討しています。
 本プロジェクトは、2013年から開始され、プロジェクト開始当初から一部計画的に調査観測研究が進められ、すでに、新たな成果や知見が得られ始めました。今後も、引き続き調査観測及び必要な情報収集を実施するともに、これまでに得られたデータの解析・解釈をさらに進める予定です。
 本プロジェクトには、以下の機関が参加しています。東京大学地震研究所,海洋開発研究機構,京都大学防災研究所、東京大学大学院工学系研究科、東京大学大学院情報学環附属総合防災情報研究センター、新潟大学災害・復興科学研究所、横浜国立大学大学院環境情報研究院 、防災科学技術研究所。

図2 海岸堤防模型に対して、越流する津波の実験を実施し、越流する津波のエネルギー減殺という点では、直立堤が効率的であることが明らかとなりました。

図3 平成26年度に実施した「かほく- 砺波測線」海陸統合反射法調査測線の位置(上)と反射法地震探査深度変換断面の地質学的解釈(下)です。地下構造探査により、断層位置を推定します。

図4 日本海沿岸の津波高を再現するための津波シミュレーションの結果です。
1983年日本海中部地震(左)と1993 年北海道南西沖地震(右)の津波による最大水位上昇分布を示しています。

篠原 雅尚(しのはら・まさなお)

著者の写真

東京大学地震研究所 教授。
1986 年九州大学理学部卒業、1991 年千葉大学自然科学研究科修了。学術博士。東京大学海洋研究所助手などを経て、2010 年より現職。専門は、海底観測地震学、海底観測機器開発。

このページの上部へ戻る

スマートフォン版を表示中です。

PC版のウェブサイトを表示する

パソコン版のウェブサイトを表示中です。

スマートフォン版を表示する