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  3. 「内陸で発生する地震の調査観測に関する検討ワーキンググループ」を設置しました!

(広報誌「地震本部ニュース」令和5年(2023年)冬号)

 地震調査研究推進本部(以下、「地震本部」という)では、内陸で発生する地震の長期予測手法の高度化(以下、「本手法高度化」という。)にむけて、内陸で発生する地震の調査観測に関する検討ワーキンググループ(以下、「本WG」という。)を設置し、議論を開始しました。

 これまでの議論の経緯や、どのようなワーキンググループなのかについて紹介します。

 地震本部では、令和元年5月に、将来を展望した新たな地震調査研究の方針として、「地震調査研究の推進について―地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策(第3期)―」(以下、「第3期総合基本施策」とする。)を策定しました。陸域を中心とした地震調査研究に関して、内陸の浅いところで発生する大地震は、海域で発生する巨大地震に比べて規模が小さくても市街地に近いことから、防災上その発生予測が重要であり、既知の活断層以外の震源断層において大きな被害を伴う地震が発生しています。これらを踏まえて、第3期総合基本施策の中で、本手法高度化を基本目標の一つとして掲げています。この基本目標の達成に向けて取り組むべき項目として、

 ・地震活動の分布
 ・歴史地震の調査による地震活動の履歴
 ・活断層で発生した地震の調査

等の情報を総合して評価する手法の開発を進めることを掲げています。

 政策委員会第87回調査観測計画部会(令和5年1月31日)において、本手法高度化についての議論をキックオフしました。この部会の中で、高度化を進めるにあたり、関連部会において議論を深めて、最終的には地震調査委員会等で評価を進めることを事務局より提案し、賛同いただきました。委員からは主に、

・活断層の長期評価ではなく「内陸で発生する地震の評価」であり、これまでと発想が違う。活断層のみではなく、その他の地球物理学的なデータ、歴史地震学的なデータ、地質学的、地形学的なデータを全て合わせて、内陸で起きる地震の長期評価を行う方向に進むことが重要。

・国民の生命、安全確保の観点で、中規模の地震であっても被害が発生することについて広報が大切。さらに、M5やM6クラスがどの程度の頻度や空間分布で発生するのか、どのような発生状況になっているのかといったサイエンスのバックグラウンドが欲しい。

・M6や7の地震でも、百年に1度、数十年に1度でも発生する可能性があることを周知できれば、地元の自治体や個人でも耐震対策の意識がさらに変わると考える。

といった意見をいただきました。

 また、同部会会議において、文部科学省科学技術・学術審議会により建議された地震火山観測研究計画(「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」、以下「建議計画」とする。)を推進するコミュニティと、地震本部との連携についても指摘がありました。地震本部の取組は、建議計画のもと、大学や研究開発法人等により生み出された基礎的研究の成果も取り入れながら推進されてきており、第3期総合基本施策のなかでも、建議との連携強化を強調しています。本手法高度化に関連した基礎的研究が、建議計画を基に進められていることについても委員から指摘がありました。

 そこで、建議計画のとりまとめを担う、文部科学省科学技術・学術審議会測地学分科会の第48回会合(令和5年3月29日)において、地震本部事務局より、本手法高度化の方針について共有するとともに、測地学分科会において学術的な観点からの助言等へ協力を依頼しました。

 測地学分科会では、建議計画の推進を担っている地震・火山噴火予知研究協議会(以下、「予知協」とする。)と連携して、地震本部に対して、成果の情報提供や学術的な観点からの助言等を行うこととし、測地学分科会及び予知協から、海上保安庁の石川直史地震調査官と東京大学地震研究所の加藤愛太郎教授が対応することが決定されたことから、第88回調査観測計画部会(令和5年7月4日)では、この両名をお招きし、現在の取組を報告いただきました。

 報告では、測地学分科会としても、地震本部との組織的な連携体制の構築が必要であるという認識である旨が述べられた上で、成果を地震本部側で取り入れるための仕組みの構築が必要であると述べられました。また、具体的な取組として、測地(GNSS)データや地震カタログを用いた地震発生確率評価手法の検討状況について報告がありました。

 これまでの議論を踏まえて、地震本部において検討を進めるために、事務局より「内陸で発生する地震の調査観測に関する検討ワーキンググループ」の設置を第88回部会において諮り、承認されました。また、建議計画との連携の観点も踏まえて、日野良太調査観測計画部会長より、本WGの主査として加藤愛太郎氏を主査として指名することとしました。

 令和5年11月21日に本WGの第1回会合を開催しました。当面、本ワーキンググループでは、本手法高度化にむけて必要な調査観測について、新しい予測手法で得られるプロダクトの基本的な考え方や、多様な情報を総合して評価するために必要な観点、これら多様な情報を総合するために必要な調査観測項目等について、審議することとしています。

 具体的に、どのような情報を総合するかについては、第3期総合基本施策、有識者へのヒアリング(図)や予知協での取組状況を踏まえて、地震データ、歴史地震データ、活断層データに加えて、測地(GNSS)データを想定しました。これらの情報を総合して評価するために必要な観点を取りまとめるため、各分野の専門家を委員(委員名簿参照)としてお招きしました。

 本WGではまず、第1回(令和5年11月21日)、第2回(令和5年12月26日)会合において、各分野における現状の手法を共有し、その後、情報を総合して評価するために必要な観点等について議論を深め、評価手法の検討に必要な調査観測の例のとりまとめ等を行うこととしています。

本WGの会議資料等はこちら

 

(主査)

加藤 愛太郎 国立大学法人東京大学地震研究所教授

(委員)

石川 直史 海上保安庁海洋情報部技術・国際課地震調査官

石山 達也 国立大学法人東京大学地震研究所准教授

加納 靖之 国立大学法人東京大学地震研究所准教授

近藤 久雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所地質調査総合センター活断層・火山研究部門活断層評価研究グループ主任研究員

下山 利浩 気象庁地震火山部管理課地震情報企画官

遠田 晋次 国立大学法人東北大学災害科学国際研究所災害評価・低減研究部門教授

西村 卓也 国立大学法人京都大学防災研究所教授

日野 亮太 国立大学法人東北大学大学院理学研究科教授

藤原 広行 国立研究開発法人防災科学技術研究所研究主監マルチハザードリスク評価研究部門長兼務先進防災技術連携研究センター長兼務

三宅 弘恵 国立大学法人東京大学地震研究所准教授

宮澤 理稔 国立大学法人京都大学防災研究所准教授

矢来 博司 国土地理院地理地殻活動研究センター地理地殻活動総括研究官

(広報誌「地震本部ニュース」令和5年(2023年)冬号)

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