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  1. 地震・津波の知識
  2. コラム
  3. 災害対策本部会議を構築する




 本稿では、人と防災未来センターにおいて行われている地方自治体の首長向け研修「トップフォーラム」や職員向け研修「災害対策専門研修」を高度化させるために組織的に実施してきた地方自治体の災害対応体制の調査研究の成果や、その他、最新の調査研究で見いだされた知見を踏まえ、地方自治体の災害時のトップマネージメントに必要とされる要諦を4回にわたって紹介します。
 
 災害対策基本法第23条で定められた災害対策本部は、形式上また実質上行政機関にとって災害対応を行う中心機関であることに間違いありません。しかしこの本部は「災害時」にしか設置されない希少性があり、また災害種や規模、さらには地方自治体の規模や体制によっても業務内容が左右されてしまう個別性を持っていて、過去の経験的知見が蓄積、共有されることが困難となっています。そのため近年の災害対応事例をみても、ほとんどの地方自治体で「出たとこ勝負」の本部運営となっているのが現実です。
 この災害対策本部で共通している点は「本部会議の実施」を行うことが計画されていることです。近年の地方分権の流れも相まって、災害時の行政対応および首長の判断・指示に住民の目が集まる中で、本部会議の重要度は高まっていますが、この本部会議も先の理由で必ずしもきちっと設計されたものではありません。
この行政機関の最高意思決定会議である「本部会議」について、これまでの課題をとらえ、きっちりと考え直すことが、実は効果的な災害対応を行う体制や計画を再検討する上で非常に重要であると考えます。


 この本部会議が災害時に果たす役割を考える上で「強み」として以下の3点が挙げられます。
①首長を中心とした幹部クラスが一堂にそろう、②1日に2回・3回と定時的に開かれる、③決定事項について組織としての上意下達性が強い、点です。これらを踏まえて、日常の幹部クラスの集まる会議との違いを考慮しつつ、災害対策本部会議でなすべきことを次にまとめます。
 まず、災害時という環境がもたらす情報の不確定性と変化の速さが日常とは異なります。また災害対応業務は通常業務に加わるものであり、組織業務量が劇的に増大します。この2点からして業務管理の環境が全く異なるものとなり、それ故、幹部クラスが把握する各部局の業務状況の質も変化します。「情報共有の場である」とはよく聞かれますが、「情報共有」の質が通常とは異なることを理解する必要があります。「○○を実施した」という結果報告を共有するのであれば会議は必要ありません。会議をするからには、緊急状況下で、現時点で、各部局が災害対応業務を組織的に実施できているかどうか、課題は何かを出し合うことが重要です。第一の会議の意義は、全体として組織的な業務運営がなされているかどうかを定時的にチェックする機能にあるといえます。
 また災害対応の仕事は多くの部分で被災者対応が求められることから、社会との関係性が近くなる特性を有しています。語弊を恐れずにいうと、日常時より「結果主義・成果主義」が強調されるようになります。これは行政手続きの正当性よりも、被災地環境への適時的な対策実施が重視される傾向があるという意味です。決して手続きを軽視するというものではありませんが、時間と緊急度を鑑みて通常手続きとは異なる方法を用いることが、経験的にも多々存在しています。時には制約条件であった法律でさえ、非常時に枠が拡がることがあります。つまり第二の会議の意義としては、被災地環境に管理視点が移行するので、被災地状況について的確なモニタリングを行い、それを幹部クラスで共有することにあります。例えば近年の事例では、災害ボランティア組織の代表者が本部会議に出席し、情報提供を行うといったことがなされています。
 さらに、膨大な災害関連業務の指示・決定をすべて本部会議でするということは極めて困難であり、会議で議論すべき効果的な議題を
設定する必要があります。災害対応業務は相応部分を法律や条令、計画において規定され、これらが意思決定代行性を有しています。
つまり災害時は日常よりも現場レベルでさまざまな意思決定がなされ、また活動が実施される環境となるわけです。このような中で、本部会議で何を決定するのかを考えることが必要ですが、実はこの内容こそが状況によって変化するものであります。各部局の抱えている業務課題とさらに被災地状況が抱えている課題を総合し、法や計画で想定している以上の対策を行う必要があるのかどうかを、随時検証し最終的に活動実行の可否を意思決定する場こそ「本部会議」です。
つまり第三の意義として、決まっていないこと、このままの活動体制で続けていては解決しないことを組織活動により解決する新たな対策を決定すること、が挙げられます。当然ここには首長としての政治的責任や行動能力を含めたリーダーシップが問われます。災害
時という環境の特殊性故に、この意思決定案件については、決定した後にほぼ即座に実行に移すこととなります。つまり決定者は実施責任を含めて決断を迫られるということになります。


 「各部局の業務状況と課題を見ながら、被災地状況と照らし合わせ、適時的に必要な新たな対策を打ち出していく」と表記すると簡単な内容ですが、これを災害混乱期に実施することは難しいことです。しかもこのような会議は、「不確定な状況下における思考」であるため、事前に綿密に計画し、調整し準備するだけでは実行できない内容となっています。この点が通常の地域防災計画やマニュアル作りの手法では、どれだけアプローチしても届かない部分です。このような意思決定型の会議を運営するためには、災害対策本部に計画・戦略を行う役割、つまり「参謀機能」を果たす人または部局が必要となります。これに必要な知識は、自らの地方自治体の地理環境、および組織状況だけでなく、むしろ災害時に組織が陥る状況に関するものです。またこれがうまく機能するためには、やはり相応の権限付与もする必要があります。
 ここで示した本部会議ですべきことを念頭に置いて、災害対策本部の事務局における情報収集・分析の方法を設計すると、おそらく今までとは異なる体制や情報処理の形が構築されるでしょう。これまで述べてきたことを整理し、今一度本部事務局の機能を再考し、地域防災計画やマニュアル実施の状況を「マネジメント」する本部会議とその運営をする事務局へと、機能的に改変されていくことを望みます。

参考文献
1)DRI調査研究レポートvol.21『地方自治体の災害対応の要諦』人と防災未来センター,2009.3
2)『巨大地震災害へのカウントダウン』東京法令出版,2009.6

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