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  1. 地震・津波の知識
  2. コラム
  3. 地震観測データの新しい一元化処理について
古地震・古津波研究の進展と課題

1.地震観測データの一元化処理について

 日本の地震観測網やそのデータ処理のしくみは、平成7年に発生した兵庫県南部地震を契機に大きく変わりました。兵庫県南部地震以前は、気象庁、大学、防災科学技術研究所などの機関がそれぞれの目的(気象庁であれば主に防災情報の発表、大学・防災科学技術研究所は地震の研究など)で地震観測を行い、それぞれ観測結果を解析していました。当時でも必要に応じて互いに地震データの提供・利用を一部行っていましたが、基本的にはそれぞれが独立して観測と解析を行っていました。
 兵庫県南部地震の後、平成7年6月に全国にわたる総合的な地震防災対策を推進するために地震防災対策特別措置法が制定されました。この法律によって、地震に関する調査研究を政府として一元的に推進するために地震調査研究推進本部が設置されました。
 この地震調査研究推進本部が平成9年8月に決定した「地震に関する基盤的調査観測計画」により、各機関の高感度地震観測網は地震現象を把握・評価する上で基礎となる基盤的調査観測に位置付けられました。そして、気象庁がデータ処理センターとして関係機関の高感度地震観測データをリアルタイムで収集し、文部科学省と協力して地震波形の分析と、それに基づく震源の決定等の処理を一元的に行う「一元化処理」をすることになりました。この一元化処理は平成9年10月から開始されました。
 一元化処理の結果は、地震本部の地震調査委員会へ地震活動評価のための基礎資料として提供されるとともに、地震の調査研究の基礎的なデータとして広く活用されています。また、気象庁が発表する各種防災情報(地震発生状況の解説や余震発生確率の発表など)にもそのデータは活用されています。
 図1は、1990年から昨年までの間に気象庁で決定した震源数を年毎のグラフにしたものです。ここでは、気象庁の震源決定数を示しただけなので、一元化処理開始前後の地震の数の単純な比較はできませんが、各機関の観測網のデータが一元的に処理されることによって、それぞれが独自に観測していた時代よりも確実に検知能力は向上しています。特に、防災科学技術研究所が整備した高感度地震観測網(Hi-net)が一元化処理に使われるようになった2000年以降は、さらに検知能力が大きく向上していることが、震源決定数の推移から分かります。


2.平成23年東北地方太平洋沖地震以後の一元化処理の課題

 東北地方太平洋沖地震以降、その活発な余震活動のため、一元化処理の対象となる地震数が著しく増加しました。図1には平成23年だけで約30万の地震数となっていることが分かります。これらの地震の震源の決定等の処理では、処理対象地震の規模の下限を引き上げた(Mの小さいものは処理しない)上で、さらに数年の期間が必要でした。その後も、東北地方太平洋沖地震の余震域(以下、余震域という)の活動は活発な状況が続いているため(図2)、余震域に関しては引き続き震源決定等の処理を行う地震の規模の下限を上げ、処理対象を絞って対処する状況が続いています。また、近年、海域の地震観測網の整備が進められ、海域で発生する地震の検知能力が向上することも見込まれました。
 こうした状況を踏まえ、地震調査研究推進本部地震調査委員会では、平成25年6月に「高感度地震観測データの処理方法の改善に関する小委員会」を設置し、高感度地震観測データの処理・解析結果の品質や、より充実した地震カタログとするための処理方法の改善の検討を行いました。その結果は、平成26年2月に報告書にとりまとめられました。  この報告書では、1)地震検知能力の維持、2)検知された地震の全てを地震カタログへ掲載、3)精度に段階を付けた品質管理、の3つの方向性が示されました。


3.新しい一元化処理について

 気象庁ではこの報告書の方向性を踏まえ、新たに開発した自動震源決定技術(PF法(溜渕・他,2016))を活用するなどして震源決定処理手順を変更し、地震カタログを改善する準備を進めてきました。具体的には、領域と深さごとに精査(人間が観測点毎の地震波の詳細まで分析)を行う地震のMの閾値(以下、Mth と記す)を設定することにより、内陸の浅い地震はM2.0以上の地震についてもれなく精査が行われるようにMthを設定して処理を行い、海域については陸域(観測網)からの距離に応じてMthを上げて精査を行なうことを基本とします。Mth未満の地震については自動震源を基本とし、検知されても自動震源が求まらない地震については、精査は行わず5~10点の観測点を人間が検測する簡易な手順により震源決定などを行うこととしました。  これにより、現在、余震域で検知されても処理基準未満であるため地震カタログに掲載されない地震がある状況は解消され、震源決定精度に応じた品質管理をした上で、検知された全ての地震のデータが地震カタログに掲載されるようになります。また、自動震源の活用を進めることにより、大規模な地震の発生後もより迅速に、地震調査委員会等に地震活動評価のための資料提供をすることができるようになります。
 新しい一元化処理は、平成28年4月1日から開始しています。

文 献 溜渕功史・森脇健・上野寛・束田進也(2016):ベイズ推定を用いた一元化震源のための自動震源推定 手法,験震時報,79,1-13.


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