平成12年4月12日 |
地震調査研究推進本部 |
地震調査委員会 |
2000年3月の地震活動について
北海道有珠山の火山活動に伴って、活発な地震活動があり、震度5弱を複数回観測した。補足図 補足説明へ
○ 3月27日から、有珠山及びその近傍において、火山活動に関連する活発な地震活動が始まった。主な地震活動の深さは10km以浅であり、3月末までの最大の地震は30日のマグニチュード(M)4.3であった。その震源は主な地震活動域の北西部で、発震機構は、南北方向ないし北東−南西方向に圧縮軸を持つ逆断層型であった。これを含め3月末までに震度5弱を観測した地震が7回発生した。また、GPS観測においても、火山活動に関連する地殻変動が観測された。今回のこれらの地震活動及び地殻変動は、有珠山の火山活動に関係するものである。
(4月に入っての地震活動)
有珠山及びその近傍では、3月31日の噴火開始前から地震回数は減少し始め、4月1日には火山活動開始以来最大のM4.6の地震が発生し、震度5弱を観測した。火山活動に伴った地震活動の変化は有珠山の周辺10km程度以内に限られており、また、GPS観測の結果にも顕著な広域的な影響は見られていない。
○ 3月30日に、北海道東方沖の深さ約50kmでM5.3の地震が発生した。これは、1994年北海道東方沖地震の余震域で発生したものであり、その余震と考えられる。 補足説明へ
3月20日に、仙台湾の深さ約80kmでM5.0の地震が発生した。この震源付近では、1997年12月及び1998年11月にM5クラスの地震が発生している。 補足説明へ
○ 3月19日に、新潟県中越地方の深さ約15kmでM4.3の地震が発生し、また3月25日に、そこから西約10kmの深さ約15kmでM4.0の地震が発生した。これらの地震の震源の南約10kmでは、1990年末から1991年半ばにかけて、M5.4を最大とする地震活動が発生している。
○ 3月24日に、福井・岐阜県境の深さ約10kmでM4.0の地震が発生した。この周辺30kmの範囲では、最近5年間では年1回程度M4クラスの地震が発生している。
○ 静岡県中部の、沈み込むフィリピン海プレート内の地震活動は、平均的な活動レベルより低い状態が続いている。一方、東海地方のGPS観測の結果には従来の変化傾向から変わるものは見られていない。
○ 三重県中部では、昨年1月から深さ約10kmで活発な微小地震活動が始まり、その後活動が低下していた。本年2月半ばから活動がやや活発化し、その主たる活動域が北側に約2km広がったが、最大の地震でも3月26日のM3.1である。 補足説明へ
目立った活動はなかった。 補足説明へ
目立った活動はなかった。 補足説明へ
3月28日に父島の南約600kmの深さ約120kmで、M7.6の地震(やや深発地震)が発生した。発震機構は、太平洋プレートの沈み込む方向に張力軸を持つものであった。 補足説明へ
○ 宮崎県北部山沿い地方で4月2日にM4.5のやや深発地震が発生した。
○ 新潟県上越地方で4月7日にM4.1の地震が発生した。
○ 茨城県南西部で4月10日にM4.6の地震が発生した。
訂正
「2000年2月の地震活動について」の関東・中部地方の記述に誤りがありましたので訂正します。
2月29日に新潟県沖の深さ約25kmで発生した地震のMの値:誤M4.2、正M4.3。
平成12年4月12日 |
地震調査委員会 |
「北海道有珠山の火山活動に伴って、活発な地震活動があり、震度5弱を複数回観測した。」:
有珠山の火山活動に関連する地震活動で強い揺れを繰り返し観測したものの、日本及びその周辺域では、M4.0以上の地震の発生は42回(2月は42回。昨年末までの30年間の平均は43回。)観測され、内M5.0以上の地震の発生は3回(2月は5回)で、M4.0以上の地震発生回数からみた今月の活動レベルは先月と同様であった。また、昨年1月以降の主な地震活動として次のものがあったが、これらの地震の活動域及びその周辺域では、北海道東方沖の余震と見られるものを除いて、目立った活動はなかった。
− 種子島近海 | 1999年1月24日M6.2(深さ約50km) |
− 長野県中部 | 1999年1月28日M4.7(深さ約10km) |
− 秋田県沿岸南部 | 1999年2月26日M5.1(深さ約20km) |
− 新島・神津島近海 | 1999年3月14日M4.7(深さ10km以浅)、 |
1999年3月28日M5.0(深さ20km以浅) | |
− 釧路支庁中南部 | 1999年5月13日M6.4やや深発地震(深さ約100km) |
− 和歌山県北部 | 1999年8月21日M5.4(深さ約70km) |
− 台湾 | 1999年9月21日M7.7(米国地質調査所による。) |
− 瀬戸内海中部 | 1999年10月30日M4.5(深さ約15km) |
− 熊本県熊本地方(深さ約10km)、 | 福井県沖(深さ約15km)及び |
愛知県西部(深さ約50km)で1999年11月にM4を超える地震 | |
− 北海道東方沖 | 2000年1月28日M6.8(深さ約60km) |
「火山活動に伴なった地震活動の変化は有珠山の周辺10km程度以内に限られており、また、GPS観測の結果にも顕著な広域的な影響は見られていない。」:
現在まで、有珠山から半径10km〜100kmの範囲の地震活動に変化は見られず、また有珠山から半径50km〜100kmの範囲のGPS観測結果に変化は見られていない。有珠山周辺に知られている主要な活断層は、有珠山の東方にある石狩低地東縁断層帯及び西方にある黒松内(くろまつない)低地断層帯であり、ともに有珠山から約50km離れている。
また、4月1日に発生したM4.6の地震は地震活動域の南端で発生したもので、その発震機構は、北西−南東方向に圧縮軸を持つものであった。
なお、火山噴火活動時に多くの地震が発生するのが通例であるが、そのMが6.0を超えることは希である。有珠山に関しては、1910年の噴火活動では、噴火開始の前日にM5クラスの地震が発生したが、噴火後から噴火終息までの間にM5.0を超える地震が観測されたという報告はない。また、前回1977年の噴火活動でも、有珠山から半径100km以内において、噴火開始後1年間にM5.0を超える地震は観測されていない。
「北海道東方沖の深さ約50kmでM5.3」:
1月28日に北海道東方沖に発生したM6.8の地震の余震活動は、引き続き順調に低下している。今回の地震はその活動域から北西約50kmの所で発生した。
補足図
「仙台湾の深さ約80km」:
沈み込む太平洋プレートの二重地震面の下面に当る場所であり、ここで発生する地震の発震機構はプレートの沈み込む方向に張力軸を持つのが通例である。
今回の地震の発震機構も同様であった。なお、この近傍では3月26日にもM4.3の地震が発生した。
この他、東北地方では、次のような地震活動があった。
岩手県内陸北部で3月7日に深さ約5kmにM3.8の地震が発生。
「新潟県中越地方の深さ約15km」:
当該地域に発生する地震の発震機構は、北西−南東方向に圧縮軸を持つものが多く、3月19日のものも同様であったが、3月25日のものは圧縮軸が北東−南西方向であった。1926年以降においては、当該地域(半径30km程度)ではM5.0を超える地震は10年に1回程度発生してきている。
「福井・岐阜県境の深さ約10km」:
当該地域のGPSの観測結果では、北西−南東方向が最大縮みとなっている。この地域で発生する地震の発震機構は、GPSの観測結果に調和的で、北西−南東ないし東西方向に圧縮軸を持つものが知られており、3月24日のものも同様であった。また、この地域は1961年8月に発生した北美濃地震M7.0の余震域の南端付近に当る。
「静岡県中部の、沈み込むフィリピン海プレート内の地震活動は、平均的な活動レベルより低い状態が続いている。」:
静岡県中部のフィリピン海プレートの地震(M1.5以上)の発生頻度が、平均して1ヶ月に6回程度であったものが、1999年8月頃から1ヶ月に2〜4回と平均より少ない状態となり、3月も同様の状態が継続している。
(なお、本評価結果は、3月27日に開催された地震防災対策強化地域判定会委員打合会における見解(参考参照)と同様である。)
(参考)最近の東海地域とその周辺の地震・地殻活動(平成12年3月27日気象庁地震火山部)
「 東海地域においては、地殻内および潜り込むスラブ内の地震活動は低調で、昨年来の駿河湾およびその西岸域の地震活動の低い状態は、なお依然として継続しています。
伊豆半島などの地震活動も昨年来の低い状態で推移しています。
東海地域の地殻変動に関しても、注目すべき特別な変化は観測されていません。」
「三重県中部では、昨年1月から深さ約10kmで活発な微小地震活動」:
三重県中部では、1999年1月下旬から活発な微小地震活動が始まり、1999年11月頃には活動が低下していた。2月半ばには再び1999年9月頃の活動レベルまで戻ったが、M3.0を超すものはM3.1の地震だけで地震の規模としては小さい。
近畿・中国・四国地方では、次のような地震活動があった。
− 1995年兵庫県南部地震の主たる余震域の南西端(淡路島)近傍の深さ約15kmで、3月18日にM4.1の地震があった。発震機構は概ね東北東−西南西方向に圧縮軸を持つ横ずれ型であり、兵庫県南部地震のそれに近いものであった。
− 瀬戸内海中部では、1999年3月から微小地震の活動が続いている。3月に入り、主たる活動域の西側約2kmのところで一時ややまとまった活動があったが、その後収まっている。
九州・沖縄地方では、次のような地震があった。
−3月29日に種子島の深さ約5kmでM4.0の地震が発生した。この近傍で1996年9月にM5.7の地震が発生している。
−3月4日に鹿児島県北西部の深さ約5kmでM3.5の地震があり、一時的に微小地震活動が半径1km程度の中に集中して発生したが、1日程度で低下した。当該活動域は、1997年3月末に発生したM6.5の地震の震央の近傍であり、その余震域の中に位置する。
「父島の南約600kmの深さ約120km」:
当該震源は、沈み込む太平洋プレート内であり、この付近で発生する地震の発震機構は、太平洋プレートの沈み込む方向に張力軸を持つものが知られている。
参考1 「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安 M6.0以上のもの。又は、M4.0以上(海域ではM5.0以上)の地震で、かつ、最大震度が3を超えるもの。 参考2 「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安 1 「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。 2 「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。 3 評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。 |