活断層の存在は、専門家が空中写真からその証拠を読みとることにより認定されることが多いが、断層活動そのものの特徴やその場所の地形的な性質により、活断層の現れ方は様々であり、地形からの判断だけでは、それが活断層であるかどうか、はっきりしないことがある。そのような場合には、各断層についてそれが活断層であることの確からしさを、確実度によって示す。活断層の確実度は、確からしい方から次の三つに分類される。
確実度Iは、断層の位置・ずれの向きがともに明確で、地形的特徴から活断層であることが確実なもの。 確実度IIは、断層の位置・ずれの向きは推定できるが、地形やごく新しい時代の地層が繰り返しずれていることを示す確実な証拠に欠けるなど、確実度Iとするには十分な資料に欠けるもの。
確実度IIIは、活断層である可能性はあるが、ずれの向きが不明であったり、河川や海の浸食作用など他の原因で形成された疑いが残るもの。
活断層とは、最近の地質時代に繰り返し活動し、将来も活動することが推定される断層のことである。最近の地質時代としてどこまでさかのぼるかであるが、「新編日本の活断層」では、第四紀(約200万年前から現在までの間)に動いたとみなされる断層を活断層と定義している。しかし、さかのぼる年代を数十万年前位とする研究者もいる。
活断層の存在は、その活断層が繰り返しずれた跡が地形(図1)や地層に残されていることにより確認される。新しい時代に形成された地形や地層に比べて、古い時代に形成された地形や地層ほど大きくずれていれば、繰り返しずれを生じた証拠と考えられる。古いものほど地震を多数回経験しているので、大きくずれているからである。そしてまた、今後も同じようにずれを繰り返して地震が発生すると考えられる。
図1 活断層のずれによってできた地形
図中の活断層を境に、向こう側が右上方向にずれています。活断層のずれの累積により、段丘や尾根のずれ、河川の屈曲など、様々な地形が認められます。
活動が活発な活断層は、その活動の繰り返しによってずれが累積するため、盆地・平野などの低地と山地の境界を形成する。したがって、活断層はこのような大きな地形の境界の周辺に見つかることが多い。なお、M7程度より大きい陸域の浅い地震は、活断層で発生することが多い。
また、沖積層が厚く堆積している地域などでは、地下にこれまで繰り返し活動してきた断層が存在しても、繰り返しの断層運動により累積したずれが、必ずしも地表には現れない。このような断層を伏在断層という。
陸域の浅い地震が今後起こる可能性を評価するには、一つ一つの活断層の性質(どのくらい活発なのか:活動度、一回の地震に伴ってどれだけのずれが生じるのか、どのくらいの時間間隔で活断層が活動するのか:活動間隔、最近の活動はいつなのか等)を知ることが重要である。これらの情報を得るために、最近の活断層調査では、地形的な調査だけでなく、直接活断層を掘るトレンチ調査が行われることが多い。
陸域の活断層で発生する地震の発生間隔はおおよそ1,000年またはそれ以上であるために、歴史の資料のみから活断層の活動歴を調べることは困難であり、どうしても有史以前の資料が必要である。そのための活断層の調査方法としては、地形調査、トレンチ調査、地下構造調査などがある。一般的にいえば、はじめに空中写真を用いた地形調査を行い断層の位置・確実度を確かめ、さらにその断層で過去どのように地震が発生したかをトレンチ調査によって調べる。そしてさらに、その断層の深部の形態を知るために、地下構造調査を行う。
[地形調査]
活断層に沿って、断層運動の繰り返しによって生じた土地のずれや特殊な地形(断層変位地形という:図1)が認められることが多い。空中写真を用いた地形調査では、二枚の空中写真を使って立体的に地形を観察して、地形の微妙な起伏や食い違いを詳しく読み取り、断層運動の繰り返しによってできた地形を見つけだす。
図1 活断層のずれによってできた地形
図中の活断層を境に、向こう側が右上方向にずれています。活断層のずれの累積により、段丘や尾根のずれ、河川の屈曲など、様々な地形が認められます。
空中写真による調査のほかに、現地での調査も重要である。現地では、ずれている地形の詳しい測量をしたり、地形をつくっている地層や断層が露出している崖などの観察を行ったりする。活断層の活動度を求めるためには、活断層によりずれている地層や地形がいつ作られたものなのかを知る必要があり、そのための試料等も採取する。
地層や地形がいつ作られたかは、地層に含まれる有機物の放射性炭素の年代測定や、地形を覆う火山灰(火山灰は火山の大規模な噴火の時などごく短い期間に堆積するので、年代を決める良い指標になる)などから求められる。
[トレンチ調査]
断層を横切るようにトレンチ(調査溝)を掘り地層を観察して、活断層の過去の活動歴を調査する最も直接的な調査方法(図2)。 掘削によって露出した地層のずれの量やその地層の年代に関する情報を入手し、長期間にわたる過去の活動時期・活動間隔・ずれの量を明らかにして、地震の規模・時期などの今後の活動予測の資料とする。
図2 活断層調査(トレンチ調査)の様子[産業技術総合研究所撮影]
[地下構造調査]
トレンチ調査では通常深さ数mまでの地層の情報が得られるが、それより深い地下の断層の形態や位置を知るためには、様々な地下構造探査技術が用いられる。その中では弾性波探査及びボーリング調査が多く用いられる。地表では活断層が認められない場所でも、地層の食い違いの量と場所を推定するために、地下構造調査が行われることがある。地下構造探査により、トレンチ調査では分からない地下深部の構造や、海底下・川底の様な場所でも断層に関する情報を得ることができる。
活断層の活動間隔とは、一つの断層または断層帯のある部分が繰り返し活動する時間間隔、すなわち地震の繰り返し間隔のことである。大雑把にいえば、活動度A級の活断層の平均活動間隔は千年~数千年程度、活動度B級の活断層のそれは約1万年程度である。
活動度とは、活断層の活動の活発さの程度であり、その活断層が長期間にずれを累積してきた平均的な速さ(これを平均変位速度と呼ぶことがある)により表される。
地形(あるいは地層)が形成されてから現在までの時間(T)、活断層で繰り返し地震が起こり、その結果、地形あるいは地層のずれの量が、Dの値となったとすれば、活断層のずれの平均的な速さ(S:平均変位速度)は、以下のように表される。
S=D/T
なお、活動度を簡便に表すため、ずれの平均的な速さから活断層をA~Cのランクに分けて表現することが多い。
活動度A級の活断層は、1,000年あたりの平均的なずれの量が1 m以上10m未満、
活動度B級の活断層は、1,000年あたりの平均的なずれの量が10cm以上1 m未満、
活動度C級の活断層は、1,000年あたりの平均的なずれの量が1 cm以上10cm未満。
1,000年あたりの平均的なずれの量が10m以上の活断層は、日本の陸域では知られていない。日本では、活動度A級の活断層は約100、活動度B級の活断層は約750、活動度C級の活断層は約450知られている。活動度C級の活断層はずれの平均的な速さが小さいので、地形に残された累積したずれが、その後の侵食によって不明瞭になっていることが多い。そのため、実際に存在する活動度C級の活断層は、もっと多い可能性がある。
前震・本震・余震の区別がはっきりせず、ある地域に集中的に多数発生するような地震群を群発地震と呼ぶことがある。(前震-)本震-余震型の地震活動の場合は、余震の回数は時間とともにある程度規則的に減少するが、群発地震活動の場合は、消長を繰り返しながらやがて収まっていくというような活動をする。
群発地震活動の中で、個々の地震の規模はM6より大きくなることはまれであるが、M5程度の地震が発生して局所的に被害が生じることがある。過去の例としては、1965年から数年間続いた長野県の「松代群発地震」が有名で、有感地震は6万回を超えた。この群発地震で最大の地震のマグニチュードはM5.4であった。最近では、伊豆半島東方沖で、しばしば群発地震が発生している。群発地震は、火山の周辺で発生していることが多いが、火山との関係について、はっきりとしたことはまだ分かっていない。