この5年間を振り返った気象庁の主要施策の概要
気象庁
地震観測データの一元化:
地震に関する調査研究の推進を目的として制定された地震防災対策特別措置法の趣旨に沿って,大学等関係機関から地震観測データの提供を受け,科学技術庁と協力してこれを整理し,気象庁が開発した各種技術による分析を行っている。これにより,地震検知能力や震源決定精度の大幅な向上が図られた。これらの成果は,防災情報に活用する他,地震調査委員会や大学等関係機関に提供している。
地震予知のための観測研究の推進:
(1)東海地震予知体制の強化
地殻岩石歪計の増設や関係機関の関連データの集中を推進すると共に,異常現象検出手法の向上を図り,判定会招集基準の見直しなどを行った。また,判定会招集に至らないものの,東海地域の地震・地殻活動等に変化が観測された場合には,変化の原因等の評価を行い,その結果を「東海地域の地震・地殻活動に関する情報」として発表することとした。
(2)地震予知研究の推進
気象研究所においては「内陸部の地震空白域における地震・地殻変動に関する研究」や「地震発生過程の詳細なモデリングによる東海地震発生の推定精度向上に関する研究」などの地震予知研究を実施している。
リアルタイムによる地震情報の伝達の推進:
(1)新しい津波予報
数値シミュレーション技術を利用した新しい津波予報業務を開始し,津波予報区を18区から66区に細分化,津波の高さを0.5m,1m,2m,…10m以上と具体的数値で予報するなどの改善を図った。
(2)全国震度観測網の構築
地震防災上重要な情報である震度を,震度3以上の地震については,震度速報として約2分で発表することとした。震度観測点を全国約300ヶ所から約600カ所に増設するとともに,地方公共団体震度計ネットワークデータを利用し,震度発表地点を大幅に増強した(平成12年1月12日現在,33都府県の約1900ヵ所利用,気象庁と合わせ約2500ヵ所。)。地上回線に加え,気象衛星「ひまわり」経由の情報伝達ルートを加えることにより通信ルートの二重化を図った。また,震度5,6をそれぞれ強,弱に分割し,震度7を自動計測とした。さらに,面的震度分布を推計する手法の開発を進めている。
(3)余震の確率評価手法の活用
地震調査委員会が平成10年4月8日に取りまとめた「余震の確率評価手法について」を受け,この手法を活用し,防災情報を充実していくこととした。
(4)地震発生直後の即時的情報(ナウキャスト地震情報)
地震発生直後に,その発生を震源域近くで捉え,震源から離れた場所に対して大きな地震動が到着する前に予想される地震動の強さなどを伝える「ナウキャスト地震情報」の実用化に向けた検討を行っている。