本蔵義守 (東京工業大学理学部長)


(1)兵庫県南部地震直後

 六甲断層群が顕著な活断層であり、発生時期は特定できないにしても、いずれの日にかM7クラスの地震が発生することはわかってはいたが、地震が実際に起こったということは衝撃であった。震源域近傍での観測体制が不十分であったにせよ、地震関係者としては大変無念であった。当初の政策委員会のメンバーとしては、とりあえず日本列島全域を対象とした観測網の整備を急ぐべきであると思った。とくに、GPS観測網に期待していた。

(2)その後の5年間

 地震観測網、GPS観測網の整備は急ピッチで進み、当初予定が完成しつつあることは正直言って驚きである。関係者の努力に敬意を表したい。貴重なデータがどんどん蓄積しており、日本列島における地震活動状況、地殻変動状況がかなりわかりつつある。

(3)トルコ地震と遭遇して

 8月17日にM7.4地震が発生したが、そのときたまたま現地観測中であった。とくに、震源域近傍で貴重なデータが取れた。しかし、現時点では明確に異常と思える現象が見つかっておらず、短期地震予知への道のりはまだまだ遠いとの思いである。

 ところで、この地震は中期的には予測されていたものである。にもかかわらず、30年程度の時間スケールで地震学者といえども緊張感が薄れてしまう傾向にあった。一般市民にとっては、30年という期間はやはり長すぎるようである。しかし、行政としてはこの程度の時間スケールでは当然対応すべきある。

 この地震の震源域の東方に破壊しそこなったと思われる領域が残ったことから、そこで近い将来、再び地震が起こると予想した。ところが、わずか3ヶ月後に発生してしまい、何ら防災対策が取れなかった。

 今度は西側地域での地震発生が心配されているが、これが8月17日の地震のように30年程度先になるのか、あるいは11月12日の地震のような起こり方になるのか、現時点では断定できない。地震観測からは、群発地震域を特定できるので、地震発生域の推定はある程度可能である。GPS観測による地殻変動モニタ体制があれば、ある程度の時間予測も可能かもしれない。我国の観測体制の整備は、こうした例からも大変重要であることが実感できる。

(4)これからの課題

 地震発生長期予測が、主に活断層の情報から試みられているが、地震活動および地殻変動データに基づく中期予測の進展も図るべきである。トルコの例のように、30年程度という時間スケールで考えられることができれば、地震災害はかなり防げるのではないかと思う。地震観測、GPS観測全国網の次の目標は、深部構造探査を含めた活断層近傍の集中観測で、研究者陣の奮起を求めたい。


阪神・淡路大震災からの5年間を振り返ってへ戻る
議事次第へ戻る
地震調査研究推進本部のホームページへ戻る