全国的な地震・GPS観測網、K-net、活断層調査はいずれもすばらしい成果をあげ、一元化されたデータを通して、地震の多様性、微細構造等、多くの地震活動に関する情報を与え始めている。
今後我々のなすべきことの一つは、観測分野間のギャップを埋めることにあると考える。確かにGPS観測網がヌルヌル地震をとらえたように、GPSと地震観測網との間のギャップは埋まりつつあるといえる。またK-netが明らかにしつつある地盤構造には、活断層との関連も見え始めてきた。しかしまだ全体として分野間にギャップが多く残っている。例えば活断層は深部構造との結びつき、微小地震活動との関連が見えるようにマップ化されなければならないであろう。
陸域の高密度観測網に比べて海域の観測ギャップは大きい。現在のところ海底ケーブル以外に定常的な観測はない。大規模地震の多くが海域に発生している事実からして、今後は重点海域に観測を集中すべきであると考える。技術的には海底地殻変動の高精度検出法の開発が急務である。陸域は陸域、海域は海域と区別せず、両者をまたいだ観測網の設置が必要であろう。
またギャップは広報の問題にもあるように思える。活断層の活動の繰り返し間隔1000年といわれても、地方自治体は行政の立場へどのようにつないだらよいか判然としない。シンポジウムや展示会の催しも専門家と地域住民との間のギャップを必ずしも埋めてはいない。月刊広報誌「サイスモ」に毎月の地震活動マップがあるが、どこもここも真っ黒に地震で埋まっていて見分けがつかない。地域住民の立場からすると、マグニチュード1.5の地震はいらない。むしろ有感地震だけの方が理解できるという。
以上いくつかの点に見られるギャップを指摘した。これ以外にも同様なギャップがあるに相違ない。これらのギャップを埋めることが今後の重要な課題であると考える。
萩原幸男