(1)地震に関する基盤的調査観測の推進
(2)地震に関する調査観測研究データの蓄積・流通の推進
(3)基礎的、基盤的研究の振興
(4)地震調査研究推進における国の関係行政機関、調査観測研究機関、大学等の役割分担及び連携
(5)地震防災対策側からの要請の地震調査研究推進への反映
(1)地震防災工学研究の推進と地震調査研究との連携促進等
(2)地震調査研究の成果の活用にあたって必要とされる国民の理解のための広報の実施
(3)地震調査研究の成果の活用にあたっての国の役割と地方公共団体の役割への期待
(4)推進本部と地震調査研究に関連する審議会等との連携
(5)国際協力
(1)予算の確保及び効率的使用等
(2)人材の育成及び確保
(2)海溝型地震の特性の解明と情報の体系化
(3)地震発生可能性の長期確率評価
(4)強震動予測手法の高度化
(5)地下構造調査の推進
総合的かつ基本的な施策に関する小委員会は、地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策について、平成9年10月以来、議論を進めてきたところであり、今般、これまでの議論を踏まえ、小委員会としての案をとりまとめたので、別添のとおり報告する。
地震調査研究に関する総合的かつ基本的な施策は、多くの関係機関、関係者、さらには一般国民に関係するものであり、今後、これら関係各方面の意見を求め、さらに、地震防災対策特別措置法の規定に基づき中央防災会議の意見を聞いて、最終的な施策とすることが必要である。
この総合的かつ基本的な施策は、推進本部の活動の指針となるべき重要な施策であるので、慎重かつ十分な検討を経て、今般、その策定に取り組むこととした。
この総合的かつ基本的な施策により推進すべき地震調査研究の基本的目標は、地震防災対策特別措置法の趣旨に則して、地震防災対策の強化、とくに地震による被害の軽減に資することである。
本施策は、単に、地震調査研究の基本的な方向性を示すのみならず、地震調査研究の効果的な推進及びその成果の活用のために必要な施策をも含むものとする。また、本施策は、その性格上、今後、10年程度にわたる地震調査研究推進の基本となると同時に、推進本部が行う予算等の事務の調整、総合的な調査観測計画の策定、広報等の指針となるべきものとする。地震防災対策特別措置法において、本施策の立案に当たっては中央防災会議の意見を聴かなければならないとあることを踏まえると、本施策は、地震調査研究の成果を地震防災対策に活かす方策を示すとともに、地震防災対策に関係する者からの要請を地震調査研究の推進に反映させる方策を示すものでなければならない。
地震防災対策と地震調査研究は、相互に連携を図りながら推進されなければならない。具体的には、地震防災対策に関係する者からの地震調査研究に対する要請が地震調査研究の推進に係る施策に適切に反映されるとともに、地震調査研究の成果を国の地震防災対策等に反映させるように努めなければならない。これらの観点から、地震調査研究の成果として、どのような情報を出していけば地震防災に活かせるかを常に念頭に置き、地震調査研究の方向を考えるべきである。地震防災対策は、国民の対応によるところも大きく、具体的な地震調査研究に関する施策の策定に際しては、国民による地震調査研究の成果の活用を常に意識する必要がある。このため、国民の身近で行政を行う地方公共団体や、防災対策で重要な役割を果たす官民の防災関係機関による地震防災につながる調査研究の実施及びその成果の活用を重視すべきである。
また、地震発生の予測は重要であり、地震による被害の軽減にあたって地震予知に対する期待は高い。過去に繰り返し活動している活断層による地震や海溝型の地震について、その活動履歴などに関する調査研究の進んでいる場合には、過去の活動の知見等を踏まえて、将来起こる地震の場所や最大規模のある程度の予測が可能となっている。しかし、時期、場所、規模という地震予知の3要素のうち、地震の起こる時期を、警報を出せるほどの確かさで予知することは、異常な地殻の変動等の現象が現れた場合に予知できるとされている「東海地震」を除き、現在の科学技術の水準では一般的に困難である。このため、重要な構造物や施設等の地震被害の軽減対策に地震調査研究の成果が積極的に活用できるよう、その推進及び成果の普及に努めなければならない。
他方、警報を出せる程度での地震の直前予知が可能となれば、適切な予防措置をとることによって、地震による人的被害や火災等の二次災害の発生を大幅に軽減できる。このため、地震予知に関する努力は着実に継続することが適切である。
地震発生の長期的な予測の精度向上によって、ある地域において、大きな被害をもたらすと予想される地震発生までの期間がある程度明確になれば、それに応じた地震防災対策が可能となる。仮にそれが明確に示せない場合においても、起こりうべき地震の規模及びその可能性の程度が予測できれば各種の地震防災対策をとりうる。
地震防災対策は、発信側が意図した地震に関する情報が受信側に正確に伝達され理解されることによって、はじめて可能となる。地震に関するあらゆる広報活動を通じて、地震現象の基礎的知識の普及や新たな知見の周知に努めていくことが必要である。この際、特定の地域における地震に関する調査観測の強化や、地震の切迫性の指摘などは、ともすれば、それ以外の地域には大きな地震は来ないとの誤解を招く恐れがある点にも留意する必要がある。
本施策は、地震に関する科学技術の進展、関係省庁・関係機関の役割、国民の地震調査研究への期待等の各般の状況に大きな変化が生じた場合には、その状況に応じて、見直すものとする。
(1)地震に関する基盤的調査観測の推進
これらの調査観測の実施に際しては、従来から全国的に行われている調査観測、地域的に強化して行う調査観測、及び研究的な調査観測との連携を図る。
地震観測、地殻変動観測(GPS連続観測)などの基盤的調査観測は、地殻活動の現状を評価する上で最も基本的な情報の一つである。また、基盤的調査観測は、大規模地震の発生メカニズムや余震活動の正確な把握を可能とするとともに、地殻に歪が蓄積され、それが解放された後、再び歪が蓄積されていく長い期間の一連の過程の解明など、地震予知のための研究にも貢献する。
また、過去になされた調査観測研究のデータを収集・整理し、提供する機能を充実することも重要である。
とくに、研究者の創意・発意に基づく研究は重要である。観測データがこれを必要とする研究者に広く公開されていることを前提として、研究者の創意・発意を活かすための競争的な研究資金の活用等を検討する。
大学は、研究及び研究的な調査観測をより一層主体として行い、その研究成果はもとより、観測の成果も可能な限り広く公表し、地震調査研究の進展に貢献することが期待される。また、防災関係者に指導、助言を与えるなど、地震調査研究の成果の防災への活用に積極的に貢献することが期待される。さらに、基盤的な調査観測に関し、大学は、観測施設の整備が進み観測の空白域が解消されるまでの当面の間、基盤的な調査観測の実施に協力することが期待されているが、時々の財政事情等を踏まえつつ可能な限り早期の観測施設の整備が望まれている。
さらに、国は、地方公共団体が地域における地震防災対策の推進を図るために行う活断層調査等の地震調査研究、研究者等の養成を支援していく必要がある。
特に、推進本部と中央防災会議は、地震による被害の軽減という共通の目標に向かって、より一層の連携を図る必要がある。このため、中央防災会議と推進本部の政策委員会及び地震調査委員会の間で情報交換を行うための場を設けるなど、地震防災対策を行う側からの要請を地震調査研究に反映させるように、地震防災対策と地震調査研究のより一層緊密な連携の具体的なあり方を検討する。
また、防災関係機関が実施する地震防災対策に地震調査研究の成果が活用できるよう、成果の所在等の必要な情報の防災関係機関への提供に努める。
(1)地震防災工学研究の推進と地震調査研究との連携促進等
具体的には、強震動予測の手法の高度化に関連して、その最終成果が構造物や施設の耐震性の向上等に活用されるよう、地震防災工学分野における活用を十分に念頭においた強震動予測手法の高度化や、このために必要な断層パラメータの提供など、地震防災工学と地震調査研究の連携を促進する。
また、地震の被害は国民の生命やその財産に及ぶことから、地震防災対策に地震調査研究の成果を活用していくためには、人間の心理、行動や経済活動などに関する知見などの社会科学的な知見が重要である。このため、社会科学の関連する分野と地震調査研究との連携・協力を推進する。
国民各個人が地震に対して適切な対応をとるためには、地震現象に関する最新の知識の適切な普及・徹底が前提であり、我が国の地震活動、地殻変動、地震動等に関する情報を、多様な手段で国民にわかりやすく提供することが重要である。
このため、現在得られている各種の地震に関する情報を地域別に集大成して地震調査委員会がとりまとめた「日本の地震活動―被害地震から見た地域別の特徴―」を適宜改訂し、これを広く頒布する。また、「週間地震火山概況」など定期的な刊行物が気象庁から発表され、報道機関等に提供されているが、この種の情報が直接、国民の目に触れる機会が増えるよう、報道機関等の関係者の理解の促進に努める。さらに、整備が進みつつある基盤的な調査観測網による観測データも含めた地震に関する調査観測結果の提供や、調査観測結果等に基づく地震に関する総合的な評価結果、余震の確率的な評価結果などに基づく広報を行い、地震被害の軽減に活かしていく。
地震調査研究の成果が国民一般にとって分かり易く、防災意識の高揚や具体的な防災行動に結びつき、国や地方公共団体等の防災関係機関の具体的な防災対策に結びつくよう、地震活動の総合的な評価に基づく広報及び地震調査研究の成果の効果的な普及方策を、政策委員会と地震調査委員会が協力して検討する場を推進本部に設ける。さらに、この検討結果を踏まえた説明性の高い広報を実施する。その際、気象庁から発表された情報の内容を踏まえる等により、気象業務法に基づく業務の円滑な実施に配慮する。
地震についての基礎知識の普及のため、防災関係者をはじめとする国民各層を対象としたセミナー、シンポジウムの開催や、地震及び地震防災に関する教育、研修などを充実する。
さらに、国民一般が地震調査観測データを利用し地震防災に活用する場合、その支援に努める。
地震による被害軽減のための地震調査研究の成果の活用においては、国、公共機関、地方公共団体、事業者、住民それぞれの、地震防災に対する積極的かつ計画的な行動と相互協力の地道な積み重ねが必須であり、国と地方公共団体との連携・協力、さらに地方公共団体相互の連携・協力が重要である。
地震調査研究の成果を国が自らの地震防災対策に積極的に活用していくことは当然であるが、地域における地震防災対策の中核的な役割を担う地方公共団体においても、地震調査研究の成果を積極的にその地震防災対策に取り込み、住民の被害軽減につなげていくことが望まれる。このため、国は地方公共団体に対して、地震調査研究の進捗状況及び成果を十分に説明する機会を設けるとともに、必要に応じて専門的見地から指導・助言を行うなど、地方公共団体の活動を支援する。
推進本部は、地震予知研究を含む地震調査研究に関する総合的かつ基本的な施策の立案、総合的な調査観測計画の立案にあたり、測地学審議会の建議を踏まえつつ検討していく。なお、「推進本部において政府自らが地震に関する総合的な調査観測計画を策定することとなった現状において、地震予知計画については、従来この点で果たしてきた役割は終えており、計画内容の見直しが必要となっている」(平成10年1月「震災対策に関する行政監察結果に基づく勧告」)という指摘もあり、推進本部としては、今後の、測地学審議会の動向を見守っていく。
推進本部の発足により、地震調査委員会が地震に関する調査結果等の収集、整理、分析、並びにこれに基づく総合的な評価を行うようになったため、現在地震予知連絡会は、これと類似した地震予知に関する総合的な判断を行っていない。しかし、地震予知に関する学術的情報及び意見交換の場としての地震予知連絡会の重要性は、現時点でも失われていないと考えられる。今後のあり方については、地震予知連絡会自身が検討を進めているところであり、その進捗状況も踏まえつつ、推進本部として、地震調査研究に関する情報交換及び意見交換の望ましい姿に関し、地震予知連絡会との連携の強化も含めて検討する。
大規模地震対策特別措置法(大震法)に基づき、地震防災対策を強化する必要がある地域が地震防災対策強化地域として、中央防災会議の審議を経て指定されることとなっており、現在、「東海地震」に係る地域が指定されている。気象庁長官は、気象業務法に基づき、いわゆる東海地震が発生するおそれがあると認めた時には、内閣総理大臣に「地震予知情報」を報告する義務を負っている。地震防災対策強化地域判定会は、この気象庁長官の責務遂行のために気象庁に設けられているものである。推進本部はこの業務の円滑な実施に配慮して、地震に関する調査研究の推進に努める。
(1)予算の確保及び効率的使用等
地震調査研究の成果を地震防災対策に反映するためには、地震調査研究に対する深い理解を持った防災関係者の存在が必須である。この観点から国は、地方公共団体等の防災関係者が、地震調査研究の成果を理解するために役立つ基礎知識に関する研修を行うなど、所要の教育、研修等の機会を設ける。
国民一般に対して、地震調査研究の成果を正しく伝えていくためには、必要な情報をできるだけ多様なメディアを通じて伝達することが大切である。したがって報道関係者の役割は極めて大きく、報道関係者に対する地震調査研究に関する研修等の機会を設けることを検討すべきである。
また、国民一般が地震調査研究の成果を正しく理解し、自らの防災対応に反映できるよう、その理解力、対応力を醸成するための、教育、研修等の機会を設けることを検討する。
調査観測に関しては、基盤的な調査観測計画に基づく調査観測の実施状況等を、推進本部として評価し、基盤的調査観測計画の改訂、総合的な調査観測計画の策定等を進める。
なお、推進本部による予算等の事務の調整は、これらの評価を受けたものはその結果も踏まえて行う。
推進本部は、地震調査研究の推進方策全般について所要の評価を行い、必要があれば、総合的かつ基本的な施策を見直すものとする。
このような観点から、国として当面推進すべき地震調査研究の主要な課題は以下のとおりである。なお、これらの地震調査研究については、地震防災対策に活用可能なものとなるよう、防災関係機関の意見等を十分踏まえるとともに、その成果は、順次、地震防災対策に活用していくことが求められる。
確率的地震動予測は、地震の発生自体の確率的な予測と強震動予測を有機的に統合することにより、対象地域に影響を与える可能性のあるすべての地震を考慮に入れたものである。これは、すべての地震とその発生確率、及びそれぞれの地震による地震動分布の予測を集積して求められるものであり、地震調査研究と地震防災工学の接点を与えるものといえる。
地震動予測地図の一例は、全国を概観し、ある一定の期間内に、ある地域が強い地震動に見舞われる可能性を、確率を用いて予測した情報を示したものである。一般には、期間、地震動レベル、及び確率のうちの2つを固定し、残りの1つの分布を、地図の上に等値線図として示したものである。このような地図により、異なる地域の地震危険度を相対的に比較することが可能となり、国土計画や自治体の防災計画立案に対しても、有用な情報を分かりやすい形で与えることが期待される。
しかしながら、確率を含んだ地震の発生可能性等に関する情報は、必ずしも簡単に理解できない内容を含んでおり、国民の地震防災意識の高揚に結びつき、地震防災対策に活用されるためには、その情報が意味することの丁寧な説明と、社会科学的な視点も含めた検討が必要である。情報をとりまとめる形式については、防災関係機関、その他関係者、住民等の意向を踏まえて十分な検討を行うものとする。この際、国民にとって身近な情報として受け取られるためには数十年程度の期間に関する情報が必要だが、陸域の活断層による地震については、数十年程度の短い期間における地震の発生確率は高い数値にはならないので、これが単なる安心情報として誤って理解されることの無いように十分注意すべきである。
地震動予測地図は、その作成当初においては、全国を大まかに概観したものとなると考えられ、その活用は主として国民の地震防災意識の高揚のために用いられるものとなろう。また、将来的に地震動予測地図が、その予測の精度を向上させ、地域的にも細かなものが作成されることとなった場合には、地震に強いまちづくり、地域づくりの根拠としての活用(土地利用計画や、施設・構造物の耐震基準の前提条件として)など、地震防災対策への活用や、被害想定と組み合わせて、事前の地震防災対策の重点化を検討する際の参考資料とすることも考えられる。さらに、重要施設の立地、企業立地のリスク評価情報としての活用も期待される。
地震動予測地図の作成にあたって前提としたデータ、手法等は原則として公開し、その作成の経緯が関係者によって検証できるものとする。また、このような地図は、活断層調査等によってもたらされる新たな知見、地下構造調査の進展、強震動予測手法の高度化、地震発生の予測精度の向上等の地震調査研究の進展によって、その精度の向上に努めるものとする。
地震動予測地図の作成にあたって推進すべき地震調査研究の項目は以下の通りである。
具体的には、陸域及び沿岸域の主要な活断層について、
@活断層の詳細な位置及び形状に関する情報、
A当該断層が活動した場合に想定される地震の規模等に関する情報
B当該断層の活動履歴及び平均活動間隔に関する情報、
を明らかにすることを目標として、「基盤的な調査観測計画」に基づき、調査を推進するとともに、歴史的な資料、情報の体系的な収集、整理、分析及び古い地震記象紙のデータベース化を進める。
この際、地震学の知見を活用しつつ、強震動予測に利用できる形での断層パラメータを提供することを目指す。
また、基盤的調査観測計画に基づいて地震観測を進め、得られるデータにより、活断層の現在の活動状況・形状の詳細な把握を目指し、これに基づいて活断層の潜在的な活動領域を評価し、強震動予測における基本資料とする。現在知られていない活断層による地震によっても、大きな被害が生ずる可能性もあるため、これらの未発見の活断層の調査のための手法等について検討する。
@その詳細な発生位置に関する情報
A想定される地震の規模等に関する情報
B地震の発生履歴に関する情報
を明らかにすることを目標として、調査研究及び歴史的な資料、情報の体系的な収集、整理、分析を進める。
この際、地震学の知見を活用しつつ、強震動予測に利用できる形での断層パラメータを提供することを目指す。また、津波波高予測技術の高度化を図る調査研究を推進する。
また、現在知られている活断層以外で発生する地震によっても、大きな被害が生ずる可能性もあるため、これらの地震の発生可能性も長期確率評価に含めるべく検討を進める。
また、強震動予測の成果が建造物、構造物の耐震性の向上等にも活用されるよう、地震防災工学分野における活用も十分に念頭におき、地震調査研究と地震防災工学が密接に連携しつつ、強震動予測の手法の高度化を進める必要がある。
また、基盤的調査観測計画に基づき設置されている高感度地震計の設置の際、観測孔掘削で得られたデータなど、関連するデータを有効に活用することが極めて重要であり、このため、関連データの集積を図る。
基盤的な調査は国が行うこととし、そのデータを必要とする関係者が広く活用できるよう、データベースを作成し、広く公開することが重要である。
さらに、地下構造探査のより効率的、効果的な新手法の研究を進める。
また、遠隔地で発生する地震による主要動をその到達前にとらえ、重要施設等における緊急な対応を可能とするリアルタイム地震防災システムの研究開発を進める。
これにより、関係機関の適切な対応による被害の軽減等が期待される。
これらにより、地震発生に至る地殻活動の全容を把握し、理解することによって、地震発生に至る過程の最終段階にある地域の特定を目指す調査研究を推進する。
地震に対する意識は,ややもすれば希薄になりがちである。しかし,我が国の位置する地理的条件から、今後とも、大きな地震の発生は避けられない。したがって、地震による被害を最小限にすることを常に目指して、地震調査研究及び地震防災研究に取り組むことが求められる。
このため、最新の地震調査研究の成果を地震防災対策に活かし、今後発生する大きな地震からひとりでも多くの人の生命を救い、その財産を守ることが求められている。地震調査研究の推進とその成果の活用によって、被害の防止・軽減を実現するよう、関係者一丸となった努力が必要である。
1.地震調査研究推進本部の発足、その構成及び任務等
推進本部は、本部長(科学技術庁長官)と本部員(関係省庁の事務次官及び官房副長官)から構成され、そのもとに、関係省庁の職員及び学識経験者から構成される政策委員会及び地震調査委員会が設置されている。推進本部は、地震に関する以下の事務を行うこととされている。
この間、総合的かつ基本的な施策が策定されていなかったため、推進本部のより一層の効果的かつ円滑な活動に支障を生じている面があった。総合的かつ基本的な施策は推進本部の活動の指針となるべき重要な施策であるので、慎重かつ十分な検討を経て策定に取り組むこととしたものである。
現在、政策委員会には、総合的かつ基本的施策に関する小委員会、予算小委員会、調査観測計画部会の3つの部会・小委員会が設けられている。
総合的かつ基本的施策に関する小委員会は、地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進について総合的かつ基本的な施策を検討してきており、今般、報告書をとりまとめたところである。
予算小委員会は、関係行政機関の地震に関する調査研究予算の事務の調整に関して、関係行政機関からの概算要求構想の説明を聴取し、関係行政機関の予算のとりまとめ・調整方針の検討を行っている。
調査観測計画部会は、地震に関する総合的な調査観測計画の策定のための調査審議を行うこととしている。このため、その中核となる基盤的調査観測等の計画について検討を行い、平成8年1月に中間報告(当面推進すべき地震に関する調査観測について)を、さらに平成9年6月に最終報告(地震に関する基盤的調査観測等の計画について)を取りまとめ、同年8月の推進本部第6回本部会議において「地震に関する基盤的調査観測」として決定した。同部会は現在、その計画の実施に当たっての具体的事項等について、引き続き検討を行っている。
広報小委員会は、地震調査研究に関する的確かつ効果的な広報のあり方について検討し、平成9年6月に最終報告書(地震調査研究推進本部における広報の在り方について)をとりまとめた後、解散した。
このため、地震調査委員会は、定例会議及び臨時会議を開催し、地震活動の現状評価を行っている。また、長期的な観点からの地震発生の可能性の評価等を行うため、長期評価部会を設置している。さらに余震の発生確率の評価手法を検討するため、余震確率評価手法検討小委員会(平成9年6月〜平成10年4月)を設置した。
また、被害地震が発生した場合や顕著な地震活動が発生した場合等には、臨時会議を開催することとしており、これまでに秋田・宮城県境の地震、伊豆半島東方沖の群発地震、鹿児島県北西部の地震、長野県中部(上高地付近)の地震、岩手県内陸北部の地震の発生等に伴い、臨時会を開催し、地震活動の現状や推移について評価を行った。
地震活動の特徴把握では、国民一般に対して地震に関する正しい知識を普及することを目的として、これまでに得られている地震に関する知見をもとに地域ごとの地震活動の特徴について検討し報告をとりまとめた。地震調査委員会は、その報告をもとに、平成9年8月「日本の地震活動−被害地震から見た地域別の特徴−」を刊行した。
また、長期的な観点からの地震発生可能性の評価に関しては、定量的な評価の可能性を含めて同部会で検討している。その一環として、全国の活断層の活動の評価を順次進めており、これまでに糸魚川・静岡構造線活断層系、神縄・国府津−松田断層帯及び富士川河口断層帯について評価を行い、評価結果をもとに地震調査委員会から以下の公表がなされた。
糸魚川・静岡構造線活断層系の調査結果と評価について(平成8年9月)
神縄・国府津−松田断層帯の調査結果と評価について(平成9年8月)
富士川河口断層帯の調査結果と評価について(平成10年10月)
さらに、長期的な地震発生の可能性を確率を用いて評価する手法を検討し、平成10年5月に「長期的な地震発生の確率的評価手法について」(試案)を公表した。
また、気象庁においては、地震調査委員会が取りまとめた手法を活用し、必要に応じて、余震に関する情報に確率的な評価を含めることとしている。
(主査)
片 山 恒 雄 科学技術庁防災科学技術研究所所長
(委員)
安 藤 雅 孝 京都大学防災研究所教授
伊 藤 章 雄 東京都総務局災害対策部長 (第1回〜第7回)
今 井 通 子 評論家
内 池 浩 生 気象庁地震火山部管理課長(第1回〜第4回)
岡 山 和 生 国土庁防災局震災対策課長
春 日 信 気象庁地震火山部管理課長(第5回〜)
木 内 喜美男 消防庁震災対策指導室長(第1回〜第6回)
斉 藤 富 雄 兵庫県防災監
佐 藤 兼 信 東京都総務局災害対策部長(第8回〜)
島 崎 邦 彦 東京大学地震研究所教授(第4回〜)
土 岐 憲 三 京都大学工学部長
鳥 井 弘 之 日本経済新聞論説委員
萩 原 幸 男 日本大学文理学部教授
長谷川 昭 東北大学大学院理学研究科教授
廣 井 脩 東京大学社会情報研究所教授
深 尾 良 夫 東京大学地震研究所教授(第1回〜第3回)
福 山 嗣 朗 消防庁震災対策指導室長(第7回〜)
星 埜 由 尚 建設省国土地理院企画部長
室 崎 益 輝 神戸大学工学部教授
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平成9年10月3日 |
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平成9年11月18日 |
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平成10年1月20日 |
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平成10年2月19日 |
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平成10年4月13日 |
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平成10年6月4日 |
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平成10年7月3日 |
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平成10年10月2日 |
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平成10年11月10日 |
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平成10年12月16日 |
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