資料 政12−(2)

 

平成11年度の地震調査研究関係予算概算要求について

(案)


平成10年8月24日
地震調査研究推進本部
政策委員会
予算小委員会

 

 地震調査研究推進本部政策委員会予算小委員会は、平成10年1月9日地震調査研究推進本部決定の「地震調査研究推進本部における予算等の事務の調整の進め方について」に基づき、以下の調整を行った。

 

  1. 予算小委員会は、平成10年3月19日の第8回会合及び4月3日の第9回会合において、関係行政機関より調査研究の実施状況と翌年度以降の調査研究への取り組みについての基本構想をヒアリングした。
  2. この結果を踏まえ、予算小委員会は、5月11日の第10回会合において「平成11年度の地震調査研究関係予算要求に反映すべき事項について」を検討し、6月25日にとりまとめ、関係行政機関に対して示した。
  3. 関係行政機関においては、概算要求とりまとめに先立ち、7月16日の地震調査研究推進本部関係省庁連絡会議において上記の「予算要求に反映すべき事項」を踏まえた要求内容の説明を行った。
  4. 予算小委員会は、上記連絡会議における調整を踏まえた関係行政機関の概算要求構想について、8月5日の第11回会合においてヒアリングを行った。
  5. これらを踏まえ、8月19日の予算小委員会において、平成11年度の関係行政機関の地震に関する調査研究予算の概算要求について検討し、別紙のとおり調整の結果をとりまとめた。


別紙

 

平成11年度の地震調査研究関係予算概算要求について(案)

平成10年8月24日

地震調査研究推進本部
政策委員会
予算小委員会


目  次

1.地震調査研究推進の目的

 

2.地震調査研究関係予算概算要求の基本方針

(1)地震調査観測の推進

(2)観測結果等の収集、流通及び総合的評価とその国民への広報

(3)基礎・基盤研究の推進

(4)地方公共団体における地震調査研究等の推進

(5)必要な組織、人員の拡充及び人材の育成

(6)地震調査研究の実施状況の説明

 

3.具体的な施策

(1)地震調査観測の推進

(2)観測結果等の収集、流通及び総合的評価とその国民への広報

(3)基礎・基盤研究の推進

(4)地方公共団体における地震調査研究等の推進

(5)必要な組織、人員の拡充及び人材の育成

 

別表1.平成11年度地震調査研究関係政府予算概算要求(省庁別)

別表2.平成11年度地震調査研究関係政府予算概算要求(主要項目)

参考資料

(参考1)

 地震調査研究推進本部における予算等の事務の調整の進め方について

(参考2)

 平成11年度の地震調査研究関係予算要求に反映すべき事項について

(参考3)

 平成11年度の予算要求に係る予算小委員会における審議経過

(参考4)

 予算小委員会名簿



1.地震調査研究推進の目的

 地震調査研究推進本部(以下「推進本部」という。)は、平成11年度地震調査研究関係予算の概算要求に当たり、地震による被害の軽減と地震現象の理解を目指した、地殻活動、地震動及び津波を評価、理解する上で必要な地震調査研究を推進するものとする。


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2.地震調査研究関係予算概算要求の基本方針

 平成11年度の地震調査研究関係予算の概算要求に当たっては、以下に示される基本方針を考慮する。また、総合的かつ基本的な施策に関する小委員会において検討が進められている施策の検討状況にも十分留意するものとする。

 

(1)地震に関する調査観測の推進

 総合的な調査観測計画の中核となる基盤的調査観測等については、「地震に関する基盤的調査観測計画」(平成9年8月29日:推進本部)を踏まえることとする。また、従来から全国的に行われている調査観測、地域的に強化して行う調査観測、及び研究的な調査観測については、地震に関する調査研究の推進への貢献、業績を踏まえ整備・維持運営に努めることとする。

 「地震に関する基盤的調査観測計画」の決定においては、

〇地震観測

 ・陸域における高感度地震計による地震観測(微小地震観測)

 ・陸域における広帯域地震計による地震観測

〇地震動(強震)観測

〇地殻変動観測(GPS連続観測)

〇陸域及び沿岸域における活断層調査

を、基盤的調査観測として、また、

〇ケーブル式海底地震計による地震観測

〇海域における地形・活断層調査

を、基盤的調査観測の実施状況を踏まえつつ実施に努める調査観測として、さらに、

〇地殻構造調査

 ・島弧地殻構造調査

 ・堆積平野の地下構造調査

 ・プレート境界付近の地殻構造調査

を、手法の有効性、実施の在り方等について検討する調査として、それぞれ位置づけ推進することとした。また、基盤的調査観測等の推進に当たっては、調査観測を総合的に推進する観点から、基盤的調査観測等と、従来から全国的に行われている調査観測、地域的に強化して行う調査観測、及び研究的な調査観測との連携を図ることとした。

 このうち、基盤的調査観測等の実施内容は次のとおりである。

 

 1)地震観測・地震動(強震)観測・津波観測

 稠密な高感度地震計による地震観測網を整備し、観測を行う。これにより、内陸地震の震源と発震機構(震源における、地震を引き起こした断層運動の様子)の決定精度を高めるとともに、破壊した断層の把握に資することができる。また、これらの総合的な評価は、プレートや地殻構造の解明、地震活動パターンの把握、地殻構造や地殻応力の変化についての知見の蓄積に資するものと期待される。

 広帯域地震計による観測網を整備し、観測を行う。これにより、小地震(マグニチュード3クラス)以上の地震の発震機構や震源過程(断層の破壊の様子)の解明に資することができる。これら調査観測結果の総合的な評価は、震源の複雑さや多様性の系統的な把握、プレートや地殻構造の解明等に資するものと期待される。また、地震の規模と断層の破壊方向を即時に把握して、被害のより大きな地域を特定し、防災活動を有効に展開するための情報を与えることが期待される。さらに、津波地震の検知と解明にも資することができる。

 強震計による観測網を整備し、観測を行う。これにより、地震動の強さ、強い地震動の周期及び継続時間と空間分布の把握、震源域の詳細な破壊過程の解明に資することができる。また、表層の構造が地震動に及ぼす影響を明らかにして、強い地震動の予測にも寄与するものと期待される。さらに、強い地震動を即時に把握して、被害の大きな地域を特定し、防災活動を有効に展開するための情報を与えることが期待される。

 海底地震計の整備を行い、観測を行う。これにより、海域における地震活動を精度よく把握するだけでなく、沿岸域に発生した地震の震源決定精度の向上等が期待できる。

 また、津波計、検潮儀を整備し、観測を行う。これにより、地震時の津波発生規模の評価研究に資することができる。

 

 2)地殻変動等の観測

 GPS連続観測網を整備し、観測を行う。これにより、地殻歪の時間的・空間的変化の即時的、定常的かつ広範囲な把握に資することができる。また、地震の発生に至るまでの歪の蓄積についての知見の蓄積が期待される。さらに、地震発生時及びその後の地殻変動についても即時的に捕捉することができるため、地震の発生過程についての基礎的な知見が得られることが期待される。

 VLBI(超長基線電波干渉計)観測及びSLR(人工衛星レーザー測距)観測を行う。これにより、基盤的調査観測であるGPS連続観測を補完し、プレート運動等の広域地殻変動を捉える。

 また、GPS連続観測と併せて全国の三次元的な地殻変動を面的かつ詳細に捉えるため、高精度三次元測量、高度基準点測量、水準測量、天文測量、重力測量、辺長測量、験潮を行うとともに、よりローカルな地殻変動を捉えるために、歪計、傾斜計、伸縮計等による観測を行う。

 その他、地磁気・地電流の観測、地下水等の地球化学・水位変動観測を行う。

 

 3)地殻構造の調査

 活断層の位置を調査することは、地震が発生する可能性のある場所を評価する上で有効である。また、活断層の過去の活動時期の調査は、地震が発生する時期を長期的に評価する上で有効である。さらに、活断層の運動にともなう地震の規模は活動した活断層の長さ及び変位量に関係することから、それらを把握することは、地震の規模を評価する上で有効である。このため、活断層調査を行う。

 また、人工地震探査等弾性波探査、電磁気探査、重力探査等により、地下深部構造の把握に努め、発生する地震の場所・規模の推定、地震動評価に必要となる地盤構造の把握を目指す。

 

(2)観測結果等の収集、流通及び総合的評価とその国民への広報

 推進本部は、「地震に関する基盤的調査観測計画」の中で、調査観測結果の収集、処理、提供等の流通については、データセンター機能を整備して、円滑に実施していくことが望ましいとした。地震に関する調査観測結果等については、地震防災対策特別措置法に基づき、気象庁(地域地震情報センター)における収集を促進するとともに、推進本部において、これら調査観測結果の分析及び総合的な評価を有効に行えるよう、体制の整備を行うことが必要である。さらに、地震による被害の軽減と地震現象の理解に資するためには、国、地方公共団体の地震防災関係機関、一般国民、研究者が、調査観測結果、研究成果等を得ることを可能とする流通体制の整備が不可欠であり、そのための予算が確保されることが必要である。

 推進本部政策委員会は、「地震調査研究推進本部における広報の在り方について」(平成9年6月16日:地震調査研究推進本部政策委員会)を決定した。この中で、推進本部は、「地震との共存」意識の国民への定着を基本目標とし、地震についての基礎知識の普及、長期的な地震発生の可能性の評価についての広報、発生した地震についての情報の迅速な広報を、地震による被害の軽減に資するために効果的に行う必要があるとした。

 

(3)基礎・基盤研究等の推進

 地震調査研究の進展に資するため、地殻活動、強い地震動及び津波等についての理論研究、実験研究、シミュレーション等を行うことが重要である。学際的な研究領域については、各専門分野の有機的な連携を図り、多分野の国内外の研究者を結集した研究体制を整備することが重要である。また、幅広い視点から地震に関する先端的な研究及び観測成果の即時的な利用についての調査等応用的な調査を推進することが重要である。

 

(4)地方公共団体における地震調査研究等の推進

 上記の地震調査研究及び国民への広報は、国のみならず、地方公共団体の協力も得つつ、地域に密着して行うことが効果的である。このため、平成7年度及び平成8年度に創設された各地方公共団体への交付金制度及び補助金制度に基づく事業を、平成11年度においても引き続き実施する必要がある。

 

(5)必要な組織、人員の拡充及び人材の育成

 これらの施策を円滑かつ効果的に推進するため、地震調査研究に携わる組織、人員の拡充を図ることが不可欠である。また、国・地方公共団体における地震防災担当者を対象に、地震調査研究に関する研修を行う必要がある。

 

(6)地震調査研究の実施状況の説明

 地震調査研究の実施状況については、「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」(平成9年8月7日内閣総理大臣)に沿ってそれぞれの機関で行う評価を踏まえ、ヒアリングにおいて予算小委員会に説明することが重要である。

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3.具体的な施策

(1)地震に関する調査観測の推進

 1)地震観測・地震動(強震)観測・津波観測

 高感度地震計による観測に関しては、大学等における観測研究、科学技術庁等による基盤的調査観測としての観測網の全国的な整備・運営を引き続き推進する。気象庁においては大中小地震観測施設等について、これまでに整備した施設の更新・維持運営を引き続き推進する。

 広帯域地震計による観測に関しては、科学技術庁防災科学技術研究所等における観測研究に加えて、科学技術庁等により、基盤的調査観測としての観測網の全国的な整備・運営を推進する。

 強震計による観測に関しては、防災科学技術研究所により整備された強震ネットワーク及び気象庁により整備された震度観測網による強震観測を継続するとともに、建設省により所管の施設等に設置された地震計ネットワークシステムを運営し、観測点分布図の公開及び観測結果の流通に関して引き続き検討する。また、科学技術庁等により、基盤的調査観測としての観測網の全国的な整備・運営を推進する。

 海底地震計による観測については、科学技術庁、大学、気象庁により、ケーブル式海底地震計や自己浮上式海底地震計による観測・調査・研究を行うとともに、科学技術庁により、引き続きケーブル式海底地震計の整備を進める。

 津波観測に関しては、気象庁等により津波計、検潮儀の整備・運営を継続する。

 

 2)地殻変動等の観測

 GPS連続観測施設に関しては、建設省国土地理院等により基盤的調査観測としての観測網の全国的な運営を進める。

 VLBI、SLRを活用した地殻変動観測・研究に関しては、郵政省通信総合研究所等により引き続き実施する。傾斜計、伸縮計、歪計等を用いた地殻変動連続観測・研究に関しては、大学、気象庁等により引き続き実施する。高精度三次元測量、高度基準点測量、天文測量、水準測量、重力測量等については、国土地理院等により引き続き実施する。

 また、国土地理院等においては、面的に地殻変動をとらえるために、SAR(合成開口レーダ)干渉解析による地殻変動測定の研究を行う。

 海域での地殻変動観測については、海上保安庁等においてGPS、SLRを用いた地殻変動監視観測やプレート運動の観測を行うとともに、船位を向上させるシステム(DGPS)の整備に伴い取得されるGPSデータを利用した地殻変動監視観測を行う。

 験(検)潮については、国土地理院、気象庁等において、引き続き行う。

 地磁気、地電流の観測・研究については、気象庁等において引き続き実施するとともに、海域での観測については海上保安庁等において引き続き実施する。

 地下水等地球化学・水位変動連続観測・研究については、通商産業省工業技術院地質調査所、大学等において引き続き実施する。

 

 3)地殻構造の調査

 地質調査所等において、基盤的調査観測の対象とされた活断層を中心に、トレンチ調査、ボーリング調査、物理探査等の各種調査手法により、活動履歴や地震発生ポテンシャルを解明する調査・研究を実施する。国土地理院においては、都市圏における活断層の詳細な位置の調査を空中写真の判読等の変動地形調査等により実施する。科学技術庁では、活断層調査を実施する地方公共団体及び都市平野部を対象とした地下構造調査を実施する地方公共団体に対して交付金を交付し、活断層調査及び地下構造調査を進める。海上保安庁、地質調査所等により、沿岸海域における活断層の分布の状況等を把握するために、海底活断層調査を引き続き行う。

 大学においては、人工地震による地下深部構造調査を行い、地震発生の場であるプレート沈み込み帯や内陸地殻の詳細な構造を調査する。海上保安庁、地質調査所においては、海域における活構造等を明らかにするため、海底活構造調査を引き続き行う。さらに、海上保安庁は、プレート境界域等において海底の微細な変動地形等を明らかにするため、精密海底反射強度観測、海底変動地形等の調査を行う。

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(2)観測結果等の収集、流通及び総合的評価とその国民への広報

 科学技術庁、大学、気象庁等は、協力して観測結果等の気象庁における収集を進める。また、地震防災、地震調査研究に資するため、基盤的調査観測として新たに整備された高感度地震観測施設からのデータについて、科学技術庁及び気象庁が協力して、収集、処理及び提供のための体制の整備を進める等、観測結果等を積極的かつ迅速に流通するための体制の整備を推進する。

 気象庁では、気象庁本庁の地震活動等総合監視システムの整備・維持運営、管区気象台、沖縄気象台の地震津波監視システムの整備・維持運営に努めるとともに、科学技術庁では、関係機関の協力の下に、推進本部における観測データ等の分析及び総合的な評価に関する体制の整備を進める。

 さらに、気象庁等では、過去に観測された地震に関する資料の保管を継続して進め、データ等のデータベースの構築を行う。

 また、気象庁は、地震の主要動到達前に、規模や揺れの大きさを把握するナウキャスト地震情報(地震発生直後の即時的情報)提供の実用化のための調査を推進する。

 

 また、施設等の一般公開、講演会、ホームページや出版物等を活用して研究成果の普及に努める他、科学技術庁の活断層調査成果報告会等、気象庁の週間地震概況等を用いた防災機関への定期的な説明等の、地震に対する国民の理解を促進するための広報活動等の施策を引き続き進める。

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(3)基礎・基盤研究の推進

 各省庁において、別表2に示された様々な基礎・基盤研究を行う。

 科学技術庁では、原子力施設における活用を念頭においた研究として、各種観測データを活用し、大規模な地震が発生した場合に、リアルタイムで強震動地域の把握を行い、地震の主要動が到達する前に警報を出す試行的なシステムを構築し、その実用性についての研究を行う。防災科学技術研究所では、地震発生機構に関する研究を継続する。大学では、地震発生に至る地殻活動解明のための観測研究、地殻活動モニタリングシステム高度化のための観測研究及び地殻活動シミュレーション手法と観測技術の開発の、総合的観測研究事業を推進するとともに、地震予知関係設備の整備充実を図る。地質調査所では、活断層調査等により、地震発生ポテンシャル評価の研究を行う。また、土木研究所では、第四紀断層の地形的特性と地質的特性との関連を調査し、空中写真判読による客観性と効率性の高い断層認定方法を研究する。海上保安庁は、海底間の音響測距及び海中の音響測距とGPSを組み合わせた海底測地基準点構築のための技術開発を行う。気象庁気象研究所では、内陸部の地震空白域における地震・地殻変動に関する研究を継続して行うほか、地震発生過程の詳細なモデリングによる東海地震 発生の推定精度向上に関する研究を行う。建設省では、GPS連続観測等地殻変動連続観測データの統合化技術の開発を行い、統合化されたデータを用いた地殻活動観測データの総合解析技術を開発する。さらに、モデルを使った解析により、地殻活動現象の発生・進行過程を計算機上で再現し、地殻変形の評価システム及び効率的な監視手法を開発する。

 

(4)地方公共団体における地震調査研究等の推進

 科学技術庁では、活断層調査を主とする地殻構造調査を進めるため、活断層調査等を実施する地方公共団体に対して交付金を交付する。

 また、科学技術庁では、高感度地震計等の地震観測施設の整備を行う地方公共団体に、事業費の補助を行うとともに交付金を交付し、地震観測施設の整備を継続する。

 

(5)必要な組織、人員の拡充及び人材の育成

 これらの施策を円滑かつ効果的に推進するため、各関係機関において必要な組織、人員の充実に努める。また、科学技術庁では、地方公共団体における地震防災担当者を対象に、地震調査研究に関する研修を継続する。  

 

 以上に基づく、平成11年度の地震調査研究関係予算概算要求は、別表1及び別表2のとおりである。

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