資料 政11−(3)

 

基盤的調査観測計画の進捗状況について


 

1.地震に関する基盤的調査観測等の実施状況

(1) 高感度地震計(別添1参照)

 「地震に関する基盤的調査観測計画」(平成9年8月29日地震調査研究推進本部決定)に沿って、水平距離で15〜20km間隔の三角網を目安として、全国的な高感度地震観測網の整備を進めている。

 平成9年度までに中部地方(一部)、近畿地方、中国地方、四国地方において、整備を実施。平成10年度は、九州地方、北陸地方、中部地方(一部)、東北地方(一部)において整備を実施する予定。

 

(2) 陸域及び沿岸域における活断層調査(別添2参照)

 「地震に関する基盤的調査観測計画」において基盤的調査観測の対象とする活断層として98断層を選定しており、この中から順次調査を実施している。

 平成10年度までに、継続中を含め79断層についての調査が行われている。

 

(3) その他

「地震に関する基盤的調査観測計画」における指摘等を踏まえ、平成10年度より、地震関係基礎調査交付金を活用して、地方公共団体による堆積平野の地下構造調査に着手する。

 

2.地震に関する基盤的調査観測等の結果の流通についての検討状況

 「地震に関する基盤的調査観測計画」を踏まえ、平成9年10月、調査観測計画部会を開催し、基盤的調査観測結果の収集、処理、提供等の流通の在り方について調査観測結果流通ワーキンググループにおいて検討を実施することとした。同ワーキンググループは、高感度地震観測データの流通の在り方についての検討を行い、平成10年5月にその結果を調査観測計画部会に報告し、了承を得た。(別添3参照)

 


別添1
*0
地震観測施設一覧 (1998年3月現在)
地震調査研究推進本部調べ
          項 目
担当機関
高感度地震計 広帯域地震計 強震計 地殻変動 地下水 地球電磁気 重力 験潮

津波
海底*1 TYPE1*2 TYPE2*3 地上 地下 GPS SLR VLBI 歪計等*4
科学技術庁 21       21 41              
防災科学技術研究所 95 6(1) 11 1059 33 19     46 11  
海洋科学技術センター   3(2)                       
国立大学等 256 6(2) 10 19 42   58     117 49 36 11
工業技術院地質調査所 12       11 11     14 39      
海上保安庁水路部             18         28
気象庁 177*5 8(2)     574         33     81*6
郵政省通信総合研究所                    
国土地理院             947     15 27
合 計 561 23(7) 25*7 30 1675 65 1098 6 10 215 97 75 7 154*6

(*0)臨時観測点は対象外。
(*1)括弧内はケーブルの本数。
(*2)小地震から地球自由振動まで解析可能な周波数帯域をカバーする広帯域地震計。
(*3)微小地震から津波地震のうち比較的卓越周期の短いものまで解析可能な周波数帯域をカバーする広帯域地震計。
(*4)歪計、体積歪計、3成分歪計、傾斜計、伸縮計等を示す。
(*5)気象庁の高感度地震計の中には、TYPE2の広帯域地震計の性能を有する地点が20点ある。
(*6)他機関(地方自治体等)依存観測点として10点を含む。
(*7)根室観測施設は、防災科学技術研究所と国立大学との共同観測施設。

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基盤的調査観測計画の調査対象断層の調査状況

 別添2

No. 断 層 名  No. 断 層 名 
1 標津断層帯 51 伊那谷断層帯
2 十勝平野断層帯 52 阿寺断層帯
3 富良野断層帯 53 屏風山・恵那山断層帯
4 増毛山地東縁断層帯 54 猿投山断層帯
5 当別断層 55 邑知潟断層帯
6 石狩低地東縁断層帯 56 砺波平野断層帯
7 黒松内低地断層帯 57 森本・富樫断層帯
8 函館平野西縁断層帯 58 福井平野東縁断層帯
9 青森湾西岸断層帯 59 長良川上流断層帯
10 津軽山地西縁断層帯 60 濃尾断層帯
11 折爪断層 61 関ヶ原断層帯
12 能代断層 62 柳ケ瀬断層帯
13 北上低地西縁断層帯 63 野坂・集福寺断層帯
14 雫石盆地西縁-真昼山地東縁断層帯 64 湖北山地断層帯
15 横手盆地東縁断層帯 65 琵琶湖西岸断層帯
16 北由利断層 66 岐阜-一宮断層帯
17 新庄盆地断層帯 67 養老-桑名-四日市断層帯
18 山形盆地断層帯 68 鈴鹿東縁断層帯
19 庄内平野東縁断層帯 69 鈴鹿西縁断層帯
20 長町-利府線断層帯 70 頓宮断層
21 福島盆地西縁断層帯 71 布引山地東縁断層帯
22 長井盆地西縁断層帯 72 木津川断層帯
23 双葉断層 73 三方・花折断層帯
24 会津盆地西縁断層帯 74 山田断層
25 櫛形山脈断層帯 75 京都盆地-奈良盆地断層帯
26 月岡断層帯 76 有馬-高槻断層帯
27 長岡平野西縁断層帯 77 生駒断層帯
28 東京湾北縁断層 78 三峠・京都西山断層帯
29 鴨川低地断層帯 79 六甲・淡路島断層帯
30 関谷断層 80 上町断層帯
31 関東平野北西縁断層帯 81 中央構造線断層帯(和泉山脈南縁-金剛山地東縁)
32 元荒川断層帯 82 山崎断層帯
33 荒川断層 83 中央構造線断層帯(淡路島南部)
34 立川断層帯 84 長尾断層帯
35 伊勢原断層 85 中央構造線断層帯(讃岐山脈南縁)
36 神縄・国府津-松田断層帯 86 中央構造線断層帯(石鎚山脈北縁)
37 三浦半島断層群 87 五日市断層
38 北伊豆断層帯 88 岩国断層帯
39 十日町断層帯 89 中央構造線断層帯(愛媛北西部)
40 信濃川断層帯 90 菊川断層
41 糸魚川-静岡構造線断層帯(中部) 91 西山断層帯
42 糸魚川-静岡構造線断層帯(南部) 92 別府-万年山断層帯
43 富士川河口断層帯 93 布田川・日奈久断層帯
44 糸魚川-静岡構造線断層帯(北部) 94 水縄断層帯
45 木曽山脈西縁断層帯 95 雲仙断層群
46 境峠・神谷断層帯 96 出水断層帯
47 跡津川断層 97 伊勢湾断層帯
48 高山・大原断層帯 98 大阪湾断層帯
49 牛首断層    
50 庄川断層帯    

 

No. 調査を行っている断層


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別添3

 

平成10年5月25日

地震調査研究推進本部

政策委員会調査観測計画部会

調査観測結果流通ワーキンググループ

 

 

地震に関する基盤的調査観測結果流通の推進について
−高感度地震観測について−

 

 

はじめに

 

 地震調査研究推進本部は、平成9年8月に地震に関する総合的な調査観測計画の中核となる「地震に関する基盤的調査観測計画」を策定した。政策委員会調査観測計画部会調査観測結果流通ワーキンググループは、同計画を踏まえ、調査観測結果の収集、処理、提供等の流通の在り方について引き続き検討を行った。今回報告する事項は、高感度地震観測データの流通の在り方について、検討した結果をとりまとめたものである。

 

1.高感度地震観測の現状

 我が国の高感度地震観測は、気象庁、大学、科学技術庁防災科学技術研究所等が整備した微小地震観測網等の約600の観測施設で行われている。平成9年10月1日より、大学・防災科学技術研究所等から気象庁へ提供された地震観測データを、気象庁及び科学技術庁が協力してこれを整理し、気象庁が開発した各種技術により分析する業務が開始された。これにより、地震検知能力及び震源決定精度の格段の向上が図られ、整理・分析の結果は、地震調査研究推進本部地震調査委員会での分析及びこれに基づく総合的な評価のための資料として活用されるとともに、地震発生時に気象庁が発表する防災情報へ活用され、さらに地震に関する調査研究の推進のため大学・防災科学技術研究所に提供されている。

 また、「地震に関する基盤的調査観測計画」に従い、これらの既存観測点に加えて全国的に偏りのない高感度地震観測網の構築を目指し、科学技術庁及び同防災科学技術研究所は、これまでに約100箇所に地震計を新たに整備した。

 

2.高感度地震観測における調査観測結果とその利用ニーズについて

高感度地震観測における調査観測結果には、

    

    

     

などがある。このうち、データ量を圧倒的に支配するのは連続波形のデータである。

 試みに基盤的調査観測網として新設する観測点及び既設観測点の連続波形のデータ量を見積もると、1年間で約40TB(テラバイト)になる。

 一方、これらの観測結果を利用する主体は、現状では、次のような利用ニーズを有すると考えられる。
 

@地震調査研究推進本部地震調査委員会

 地震調査委員会は、関係行政機関、大学等の調査観測結果等に基づき、地震に関する総合的な評価を行っている。

 この評価等を行うためには、必要な調査観測結果が速やかに収集及び整理されるとともに、それに基づく分析が適切に行われる必要がある。また、地震調査委員会における評価に必要な過去の観測の成果等についても収集、整理及び分析が行われる必要がある。

 

A研究者

 大学、国公立試験研究機関、民間等において、多数の研究者が、公開されている観測データや研究成果を活用して地震に関する研究を行っている。

 地震に関する調査観測結果に基づき、研究者が自由な発想を創出し、その発想を検証していくことが、地震調査研究の推進に当たっては重要である。このため、研究に必要な調査観測結果が容易に利用できる環境の整備が必要である。

 

B防災担当者

 国、地方公共団体等の防災関係機関が防災活動を行うに際しては、調査観測結果が有効に活用されるよう、これを流通させる必要がある。

 例えば、平常時においては、地域の地震活動の特徴、過去の被害地震、今後起こりうる被害地震のタイプ等についての知見が、防災計画の企画立案等のため必要となる。また、被害地震の発生時には、地震による揺れの速やかな把握、余震活動の推移等の地震活動の評価が必要となる。

 

C国民

 国民が災害発生時に適切に対応できるよう、平常時から地震災害に備えて、地震に関する基本的知見や地震活動の現状等の情報に接していることが必要である。

 国民への調査観測結果の流通に当たっては、分かりやすい整理、解説を行うなど内容の理解を促すための方策が必要である。

 

なお、これらのニーズは、現状における各ユーザーのニーズとして考えられるものであり、今後より高度の解析結果やより早い段階での情報提供のニーズが高まってくるものと考えられる。

 

3.高感度地震観測における調査観測結果の収集・処理・提供の現状について

(1)連続波形データの収集の方法

 高感度地震観測における連続波形データを収集するための方法として、現在我が国内外で行われている主な方式は、

・専用回線による収集
・フレームリレー(以下、FRと略記する。)による収集
・衛星回線による収集

の3種類である。このうち、現在利用されている収集の現状は、次のとおりである。

 

・専用回線による収集

 気象庁は、津波地震早期検知網の収集方法として、地震波形を圧縮せず、リアルタイムで各管区気象台等で収集している。この方法の長所は、地震発生時や群発地震時でも常時同じ量のデータを収集しているため、データの遅延が少なく、安定してデータの収集が行えることで、また、一般公衆回線と異なり、信頼性が得られることである。一方、短所としては回線使用料が他の方式と比べて割高であること、また、回線使用料が距離に依存していることが挙げられる。

 

FRによる収集

 現在、米国のカリフォルニア地区の地震観測で一部採用されている収集方法で、その現状は以下のとおりである。

@米国においては、日本に比して専用回線使用料が安い等の事情があり、データ収集へのFRの導入は必ずしも経済的観点からではないが、経済的にも他の収集手法よりも優れている。特に複数の観測センターにデータを提供する場合、圧倒的に有利である。また、FRそのものの費用も低減されていくことが予想されている。

A米国においては、FRの回線が網目状に発達しており、災害時に回線の一部が切断されたとしても、データの収集が可能となり、専用回線よりも災害時の回線の信頼性が高い。しかしながら、FR網全体がダウンした場合を想定して、全く独立の観測点を確保しておくことが肝要という認識が一般的である。なお、一般回線と異なり、地震発生時にデータの輻輳による通信障害が起きたという事例はないが、FRの中でデータの破棄、消失は若干発生している事例はある。これに対しては、上位の通信プロトコルによる補償が機能しており、最終的に観測データが収集できなかった、という事例はない。

 

以上をまとめると、長所としては、専用線と同じく信頼性が確保されることと、専用線による収集と比べて比較的安価であること、複数のセンターでデータを収集することができること、さらには、現在国内で行われているサービスについては、距離に依存しない料金体系であることが挙げられる。また、その収集速度については、パケットの作成に必要な時間に相当する遅延はあるものの、地震観測データをリアルタイム処理する時間的オーダー(数秒程度)では、ほぼ問題なく収集できると考えられる。

一方、国内では始まったばかりのサービスであるため、大量データを常時送り続けた実績がないことが挙げられる。このため、防災科学技術研究所では関西地区に整備した新規高感度地震観測点の連続波形のFRによる収集実験を行うこととしている。

 

・衛星回線による収集

 現在、大学では、観測点からの連続波形を一旦衛星経由で地上中継局まで送信し、地上中継局で全連続波形を束ね、国内のほとんどに連続波形を送信する方式(2ホップ方式)により、連続波形を収集し、気象庁の地震計データと併せ配信している。また、連続波形を一定の方式により圧縮し、伝送の効率化を図っている。

この方式の長所は、電源設備を有し、衛星の方向にアンテナを設置できる場合、地上の通信回線の敷設状況に依存しない体系で観測点が設置できることである。また、配信の面では全連続波形を全国どこでも入手することができ、効率的なデータ配信ができることである。一方、短所としては、天候の影響、特に降雨、降雪の影響を受けやすいことが挙げられる。また、観測点からのデータ送信や中継局等、初期投資が大量に必要となることも挙げられる。

なお、現在では、収集方法を問わず、中継サービスを行う拠点にデータを送れば、一定量のデータを配信するサービスもある。

 

(2)高感度地震観測における調査観測結果の処理・提供の現状

 現在気象庁では、大学・防災科学技術研究所等の地震観測波形と併せ、各管区気象台等において定常的に収集・処理し、地震調査委員会等に報告するとともに、防災情報への利用及び大学・防災科学技術研究所への処理データの提供を行っている。

 また、大学及び防災科学技術研究所においても地域の地震波形のデータ処理を行っており、独自の研究及び地震調査委員会等への報告を行っている。一方、連続波形については、大学が衛星回線を用いて、既存観測点からの連続波形の配信を行っている。

 しかしながら、現在整備されている高感度地震計は、各設置機関の目的のため整備され、その調査観測結果の利用については、各観測点所属機関の内規、各機関間の協定により定められている。現状の流通に関しては、前節にあげたユーザーのニーズをある程度満たしているものの、必ずしも十分であるとはいえない。基盤的調査観測計画に基づき整備される高感度地震計による観測データと併せ、調査観測結果の処理・提供体制の整備が急務となっている。

 

4.高感度地震観測における調査観測結果の収集・処理・提供の今後の在り方

 

 上記の高感度地震観測における調査観測結果の流通の現状を踏まえ、本ワーキンググループにおいて、今後の調査観測結果流通の望ましい在り方について検討した結果は、以下のとおりである。

 

(1)基盤的調査観測網の運営に当たっての考え方

 基盤的調査観測網による調査観測結果の流通に関しては、観測結果が定常的に活用され、この成果が広く行き渡ることが大前提であり、基盤的調査観測網は、地震調査研究に係わる関係行政機関及び研究者が共有する基盤であるとの認識の下、その運営に当たっては、大学の協力を得つつ、関係行政機関がそれぞれの役割において応分の負担や貢献を行うことが重要である。

 さらに、流通システムの構築に当たっては、既存の人的資源及びシステムを可能な限り活用し、作業の効率化を図ることにより、運営経費を極力低減する必要がある。

 

(2)各機関の役割

気象庁は、即時的に発表する震度情報を始めとした地震防災のための情報発信基地であり、24時間常時地震監視体制をとっている。同庁は、既存の高感度地震観測波形の収集及び科学技術庁と協力して定常的なデータ処理を遅滞なく行っており、処理データについては、関係機関等に提供している。新規高感度地震観測における調査観測結果についても、迅速なデータ処理を行い、地震調査委員会に対して処理データ及び分析資料の提供を行うとともに、気象業務法遂行の観点から、関係防災機関及び一般の利用に供するための情報を発表する。

防災科学技術研究所は、地震に関する研究を行っていることから、地震データ分析に係る研究者のニーズを的確に把握している。このため、地震研究者が利用しやすいデータベースを迅速に作成するとともに、気象庁の行ったデータ処理結果を踏まえ、自らの研究ポテンシャルを生かして、分析資料を作成し、地震調査委員会に提供する。

 大学等の研究者はこれらのデータを利用した解析や研究を行うことにより、地震調査委員会の評価力を高めるとともに必要に応じ処理能力の向上をサポートする役割が期待される。

地震調査委員会は、上記の観測結果を基に地震に関する総合的な評価を行い、地震調査研究推進本部は、評価結果を基に国及び地方自治体の防災担当者並びに国民に対して広報を行う。

 

(3)高感度地震観測における調査観測結果の流通

 

@高感度地震観測における原データ収集

 新規観測点については、今後の通信コストの動向、地域の観測網の実状等を勘案しつつ、専用回線、FR、衛星回線等の内のいずれかを選択する。その際、防災担当者に活用される調査観測結果の信頼性を失うことがないよう、例えば一定地域の観測網のデータが全て欠測することを避けるよう、データ収集の確実性について十分配慮する必要がある。

原データ(連続波形及びイベント波形)は、防災科学技術研究所及びその観測点のデータ処理を行う管区気象台等に収集される。

気象庁とデータ交換を現在行っている大学は、必要に応じた設備の増強等により、管区気象台等からそこに集まる新規観測点の原データを分岐することができる。

また、防災科学技術研究所は、新規観測点以外の気象庁の地震計の原データについても、管区気象台等からデータ収集を行うこととし、その手法について、別途、技術的検討を進める。

さらに、大学等の地震計の原データについても、その収集に関して、大学間で利用されている既存の衛星回線の活用を含め、関係機関、大学関係者で検討が進められることが望まれる。

 

A高感度地震観測におけるデータ処理

 震源データ等処理データを得るために、収集された連続波形について自動験測処理を行う。しかし、海域で発生する地震などは、現状でも人手による験測処理が必要な場合もあり、大小頻繁に起こる地震を遅滞なく震源決定するために、自動験測処理技術の高度化に加え、人手を介した験測作業を各管区気象台等において迅速に行う必要がある。その験測データは震源、発震機構解とともに処理データとして利用に供する。

 防災科学技術研究所は、その処理データを用い、さらに地震波形に含まれる各種情報を抽出付加して、必要に応じ震源の精密決定を行い、研究者等の利用のために各種データベースを作成する。

 

B高感度地震観測における調査観測結果の提供

 気象庁が作成する処理データ及び解析資料は、防災業務遂行の観点から、即座に地震調査委員会を始めとする関係機関及び国民に必要な情報として提供されるほか、気象業務法遂行の観点から、一般の利用に供するため発表される。媒体はインターネット、ファックス等の他、ユーザーのニーズに応じて適切な媒体を用いる。

 また、防災科学技術研究所が作成する原データから処理データまでの各種データベースは、インターネットを中心としたデジタルベースのデータとして広く一般まで含めた利用に供される。

さらに、大きな地震直後の調査観測結果のニーズが集中する場合など、ユーザーの利便性を考慮し、既存の大学間の衛星通信の活用方策についても、今後、関係機関間で検討を行うものとする。

 

これら高感度地震観測データをはじめとする各種調査観測結果を基に地震調査委員会は、地震に関する総合的な評価を行う。平成9年6月16日に政策委員会において策定された「地震調査研究推進本部における広報の在り方について」に従い、地震調査委員会の評価を基に地震調査研究推進本部から防災担当者及び国民に広報される。その手段は、主に地方自治体を対象に行われている定例説明会、マスメディア、インターネット、セミナー等、現在行われている各種手段を通じて、広く国民に広報することが望ましい。

 

(4)データ流通推進機構

上記の調査観測結果の流通体制については、データ処理技術の向上や通信技術の発展、コスト等の動向に応じて、関係機関が有機的な連携を保ちつつ、機能的な運営を行うことが必要である。このため、関係機関の代表者等からなる高感度地震観測データ委員会(仮称)を設け、同委員会において、関係機関のデータ流通に係る運用、関係機関間の連絡・調整を行うものとする。また、同委員会では、各種データベースの内容、配布提供の方法や各種データ処理機能の向上についても検討を行うものとする。

さらに、同委員会は、他の地震調査観測データの流通について同様に委員会が設けられた場合に、それらの委員会と連携し、データ流通推進機構(仮称)を形成するものとする。

 

 以上の考え方をもとに、高感度地震観測における調査観測結果の流通の在り方について、図示したものが、図1である。

 

おわりに

 

今後、図1に示された考え方を基本として、さらに具体的内容については、データ流通推進機構を中心として、連絡・調整、検討を行い、実施していくものとする。また、今後のデータ通信技術、通信コスト等の動向をみつつ、同機構において、最適なデータ流通手法について、引き続き検討を行っていくものとする。

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