平成12年度科学技術振興調整費 緊急研究
「神津島東方海域の海底下構造等に関する緊急研究」
実施計画

1.研究の趣旨
 三宅島付近から新島・神津島付近においては,平成12年6月26日に三宅島の火山活動が始まって以降,地震活動が続いており、国としては、公共事業等予備費の充当等により監視体制を強化してきたところである。
 しかし、この地震活動及び地殻変動は,従来になく活発であり,地震調査委員会は,「地殻変動が継続している現状では,8月3日から5日にかけてのように,比較的大きな地震が短時間にまとまって起こることもまだあると考えられる。また,同様にして,これまでに発生したと同規模(最大でM6程度)の地震が起こり,発生場所によっては震度6弱となることも現時点では否定できない。」(平成12年8月9日)としており,現状では当該活動の収束の見通しはない。
 本地域は従来から地震が多い地域であったが,過去の例では長くとも1ヶ月程度で地震活動が収束していたが,今回は1ヶ月を越えても活発な状態が続いており,今回の地震活動及び地殻変動は,これまでにない新しい現象であるといえる。また,今回の地震活動のように,2ヶ月足らず(8月21日現在)で,震度6弱6回を含む震度5弱以上の地震が28回も生じるのは,我が国では記録がない。一方,これまでに得られたデータは限られており,海底下の構造が不明であることなどから,十分な検証が行えないため,海底下の構造のデータを中心に新たに取得し,6月末からの地震活動を体系的に検証する。
 三宅島を中心にした地域では平均20年間隔で,新島・神津島近海については平均5年間隔で,マグマ活動及び地震活動が活発になっており,今回の地震が収束したとしても,将来同様の地震活動が確実視されている。このため,マグマの活動と応力の関係について調査研究を行うことにより,将来,同地域でマグマ活動が起きた時に,地震活動の誘発の可能性を分析することが可能になる。また,我が国では神津島地域ほどではなくとも,マグマが地震活動を誘発する可能性のある地域は全ての活火山地域にあり,特に伊豆半島東部では繰り返し顕著な誘発地震が生じている。本研究の成果は,こうした地域における地震活動の評価にも役立つことが期待される。
 今回のような現象をより的確に解明するには,現象の変化を把握すること,地下構造を明らかにすること,可能な限り精密な観測を行うことが必要である。
 
2.研究の概要

2.1 地震活動域の海底下構造調査による応力源の分布解析
 今回の一連の地震活動は,主として神津島東方海域の岩脈状のマグマの活動に関連していると考えられていることから,この海域のマグマの活動を中心に解析する。このため,以下の調査研究を実施する。
(1)海底下構造調査及び地質調査
 神津島東方海域を中心にして,マルチチャンネル音波探査による海底下構造調査を実施し,既存の調査成果と合わせて解析することにより,深さ5km程度までに貫入したマグマがあれば,その深さ,形状を含む海底下の地質構造を3次元的に推定する。また,マルチチャンネル音波探査における音波源と海底地震計とを用いて屈折法探査を行い,震源決定の向上に役立つ速度構造を推定する。さらに,海底岩石などを船上から比較的広域に採取し,これを分析し,海底下構造調査の成果及び海底地形などのデータと合わせて,この海域の海底火山の分布及びそれらの活動期や活動頻度を解明する。
(2)海底下構造の総合解析
 前項の海底下構造調査の成果と,この海域の海底地形,地磁気などのデータ,島嶼部,海底における各種地殻変動や海底地震計のデータを合わせて,海底下の構造を総合的に解析し,海底下における応力源の位置,形状,及び実態を推定する。
 
2.2 地殻変動・地震活動の精密観測による応力源の力学特性解析
(1)GPS等による地殻変動観測
 新島・神津島付近から三宅島付近にかけては,地殻変動が連続的に観測され,地震活動が活発に継続している。この海域の地殻変動・地震活動の応力源の位置及び特性を解析するためには,その応力を直接反映してると考えられる地殻変動を精度良く押さえる必要がある。そのため,現在展開されているGPS観測点網で設置密度の低いところ,特に新島の北部に観測点を設置し,海域の周辺から当該海域を取り囲む。さらに,神津島の東方沖の海底に位置測定装置を設置し海底における地殻変動を真上で捉える。これらの結果と,従来から行われている地殻変動観測データを合せて解析することにより,当該海域における地殻変動を精密に捉え,地下の応力源の力学特性解析を行う。
(2)中周期海底地震計等による地震観測
 中周期の自己浮上式海底地震計等を設置し,マグマ活動に伴い海底下に発生する低周波地震を捕捉する。また,地震発生域を取り囲む観測を行うことで,発生している地震と応力の係わりを分解能高く推定する。さらに,従来からの,主として精密な震源決定のための自己浮上式海底地震計等の観測結果及び,これらのデータと既存の島嶼部における観測データと合わせ,応力の向き等の把握に有効なメカニズム解析を行う。これにより,当該海底下で発生している現象の応力源の力学特性解析を行う。

2.3 応力源等の総合解析
 地震活動域の海底下構造調査による応力源の分布解析の成果,及び地殻変動・地震観測の精密観測による応力源の力学特性解析の成果を総合的に解析し,応力源等を総合的に解明する。

3.研究の年次計画(予定)
    研究項目 12年度      研究実施機関

1.地震活動域の海底下構造調査
 による応力源の分布解析
(1)海底下構造調査及び
  地質調査



(2)海底下構造の総合解析
 



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科学技術庁研究開発局
 海洋科学技術センター(委託)
通商産業省工業技術院地質調査所
海上保安庁水路部

海上保安庁水路部
 

2.地殻変動・地震活動の精密観
測による応力源の力学特性解析
(1)GPS等による地殻変動観測





(2)中周期海底地震計等による 
 地震観測

 



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←調査研究→


 



通商産業省工業技術院地質調査所
  名古屋大学(委託)
建設省国土地理院
科学技術庁防災科学技術研究所
  東京大学地震研究所(委託)

科学技術庁防災科学技術研究所
 東京大学地震研究所(委託)
気象庁気象研究所
 

3.応力源等の総合解析

 

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科学技術庁防災科学技術研究所
  東京大学地震研究所(委託)
 

4.研究推進
 

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科学技術庁研究開発局
 

神津島東方海域の海底地下構造等に関する緊急研究
実施計画概要


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