資料 成4−(6)
活断層情報の防災対策への活用事例調査
集計結果
平成12年3月
財団法人 地震予知総合研究振興会
地震調査研究センター
目的:
本調査は科学技術庁が交付する地震関係基礎調査交付金による地方公共団体の活断層調査、及びその他の機関による各種活断層に関する調査研究で成果が公表される中、それら成果が地方公共団体や民間企業等でどのような時にどのようなケースで活用されているか、出来るだけ多くの活用事例を集め活用の現状を把握する目的で行った。なお、本調査は(財)地震予知総合研究振興会地震調査研究センターが科学技術庁の委託を受け実施した。
期間:
平成11年10月〜平成12年3月
調査方法:
1.アンケート調査
@日本災害情報学会 1999年研究発表大会会場(平成11年10月15日 東北大学工学部)で配布。
A地震調査研究推進本部が基盤的観測の対象断層としている98断層の近傍の地方公共団体から無作為に抽出した市・町並びに全都道府県政令指定都市の防災会議事務局に郵送にて配布。
B第3回活断層調査成果報告会に参加申し込みをした民間企業・団体、国の機関などから活断層情報を活用していると思われる機関を抽出し郵送にて配布。
2.聞き取り調査
アンケート調査の結果、さらに詳しい話を聞く必要があると思われた地方公共団体及び民間団体、及び成果を社会に活かす部会委員より頂いた意見、をもとに選んだ地方公共団体及び民間団体の担当者を訪問し聞き取りを行った。
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○回答者の特色
地方公共団体へのアンケートは、防災会議事務局あてに行ったが、回答の8割強が総務部・企画部部局の消防防災課室で残りが消防本部・建設部局などからの回答であった。都道府県政令指定都市レベルでは、防災局などの防災専門部局からの回答も見られたが、市町レベルにおいては、ほとんどが総務部・企画部局の消防防災課室からであり、消防も含めた防災行政全般を担う担当者が、活断層情報の窓口になっていることが分かる。
○関心度
設問2−(1)、設問2−(2)は、活断層に対する関心度を知るために設けた。図−1のように「分からない」という回答は3%で、活断層が「ある」あるいは「ない」と明確に答えている例がほとんどであった。 設問2−(2)では、所属する地方公共団体の行政区内、あるいは近隣にある活断層の名前を上げていただいた。これは、普段から担当者がどのくらい活断層について意識しているかを推し量る意図で設けた設問であるが、これについては、大多数の回答者が断層名を上げている。
設問2−(1)で活断層が「ある」と答えた回答者の94%がその断層名を上げており、活断層に対する関心の高さを伺わせるものであった。「新編日本の活断層」にある、活動度の低いとされる細かい断層名を複数上げているケースも多く見られ、もし、回答時に文献を調べて答えたのでなければ、断層の存在については、かなり高い意識を持っていることを伺わせる回答になっている。
○活断層の活動の可能性と業務への結果の反映
設問2−(3)は、「前の設問で名前を上げた活断層をどのように認識しているか」の設問である。図−2は都道府県を除いた市町(大きな断層が複数ある都道府県では断層ごとに回答しているケースが幾つかあったためこの数からは除いた)が、その名前を上げた活断層を、どのように認識しているかを円グラフで示したものである。約半数の回答者が、それらの活断層について、「活動する可能性がある」と回答している。
都道府県などによる活断層調査によって、切迫性が高い、あるいは活動度が高い、と評価された断層が近傍にある地方公共団体では、「活動する可能性がある」と答えている例が比較的多く見られる。また逆に都道府県などによる活断層調査によって、切迫性が高くない、あるいは活動度があまり高くない、と評価された断層が近傍にある地方公共団体では、「活動の可能性はあるがあまり高くない」と回答している例が比較的多くみられる。ただ、同じ断層に対する認識で、周辺地方公共団体の回答がまったく一致する例は少なく、地域で共通した認識を持っているとは言えないようである。また、同じ断層に対する、都道府県の認識と市町の認識のずれなども複数見られる。情報を受け止める市町村の側が共通の認識を持つためには、断層調査結果を発表する時の表現の仕方や広報の仕方などに工夫が必要であると考えられる。
○活用の事例
設問2−(4)は、「防災計画・都市計画・施設建設などで活断層の情報を考慮して構想や業務を行ったことがあるのか」を知るための設問である。図−3.1、図−3.2は、この設問に対する回答と活断層についての認識について表したものである。当然ではあるが、業務に活断層の情報を活用していると答えた地方公共団体は、その近隣の活断層について、「活動する可能性がある」と認識している割合が高い。逆に活断層の情報を活用していない地方公共団体は、「活動する可能性はあるが高くない」と考えている割合が高い。これらのことは、活断層に対する認識度が行政の施策に与える影響はかなり大きいことを示している。したがって、都道府県が行う活断層調査の結果を市町村にどう的確に伝えるかは、市町村の防災対策を左右する大きな課題と言える。
設問2−(5)では活断層情報を活用していると答えた地方公共団体が、具体的どのように活断層情報を活用しているかを記述してもらった。これについての回答の大多数が、「防災アセスメント・被害想定、防災計画に活用している」という回答であり、次に「広報活動に活用」しているという意見が多かった。回答者の大多数が防災関係部局の担当者ということも、このような傾向が現れている要因かと思われる。あるいは、地方公共団体においては、被害想定−防災計画を通じて間接的に施策に反映させる、広報活動により住民の啓蒙啓発を行うというのが、現状で実現可能な活断層情報の活用手段と考えられているのかもしれない。
設問2−(6)は活断層があると答えた地方公共団体が、「活断層の情報に基づいて土地の利用規制等の条例を制定しているか。あるいは活断層の情報を参考にして都市計画法等に基づく土地利用規制を行っているか」と言う設問である。活断層について何か条例等で対策を行っているかを知るための設問であったが、設問中で土地利用規制と限定してしまったためか、「ある」という回答は0件であった。
ただ、1市のみ「マンション開発に対して行政指導を行っている」という回答があった。
○広報活動
設問2−(8)、設問2−(9)は活断層が近隣にあると答えた地方公共団体が「活断層の情報を市民に広報を行っているか。行っている場合はどのような形で広報しているか。」との設問である。
図4.1と図4.2は、活断層の情報の市民への広報と地方公共団体の近隣活断層に対する認識について表したグラフである。「活動する可能性がある」と認識している地方公共団体が、活断層の情報を市民に広報している割合は、「活動する可能性があるが高くない」と認識している地方公共団体が広報している割合より若干高くなっているが、それほど顕著な差として現れていない。また、回答のあった都道府県では、だいたい市民への広報を行っているようだが、市町レベルでは差が見られる。
このアンケートでは、必ずしも一致した傾向は見られないが、県の活断層情報に対する姿勢によって市町の対応にもこのような違いが出ているのかもしれない。
広報の方法は、「パンフレット・冊子・防災マップの作成、配布」が最も多く、次いで、「防災計画などの資料の公共施設等での展示公開」という方法が多かった。市町レベルでは、「パンフレットや防災マップの全戸配布」という事例も見られ、市町においては小回りが利く広報が可能という一例と言える。
○どのような情報が求められているか
設問2−(10)は、「活断層の情報を利用する際どのような情報を重視するか」を選択で聞いている。
最も重視されているのが「断層の位置」、次いで「予想される地震の規模」、「予想される活動の時期」であった。活断層情報では、これらは一般的に重視される情報であると言えるかもしれない。逆に言えば「地表に現れる地盤のズレ」などの情報は、今のところ行政の施策に組み入れ難い情報と言るのかも知れない。
○情報源
設問2−(11)の「活断層の情報を得るためにどのようなメディアを利用しているか」との設問では「官公庁・専門機関の報告書」が最も多く、次いで「活断層地図」、「講演会・セミナー」の順であった。「市販の書籍」について具体的書名を上げていただいているが、ほとんどが「新編日本の活断層」であった。
○今後の活用について
設問2−(12)の「将来的に活断層の情報を利用する計画はあるか」との問いに対しては、「防災計画の修正・被害想定」、「市民への広報」との回答が多数であったが、設問2−(13)の「個人的には仕事でどう活断層情報が利用可能と思うか」との問いに対しては、「土地利用規制」、「建築物への指導」など直接的規制を上げている回答も多く見られた。これは、現状では条件が整わず難しいが、防災担当者としては、活断層に対して、何か直接的な対応を取ることが必要と考えている人が多くいることを端的に示していると思われる。
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(2)アンケート配布枚数−市町285通
都道府県政令指定都市59通
合計344通
回収枚数−市町190通
都道府県政令指定都市46通
合計236通
回収率−市町66%
都道府県政令指定都市78%
全体69%
(3)集計結果
設2−(1)(選択) あなたが所属する自治体あるいは近隣には活断層はありますか。
@ある−222 Aない−7 B分からない−7
設2−(2)(記述)設2−(1)で ある とお答えの方。何という活断層ですか断層名をお書き下さい。
「ある」と回答した中で断層名の記入があった数。−208
設2−(3)(選択)貴自治体では設問2−(2)でお答えの活断層をどのように認識していますか。
@活動する可能性がある−107
A活動する可能性はあるが高くはない−74
B活動する可能性はない−4
Cよく分からない−33
Dその他−13
設2−(4)(選択)活断層の情報を考慮して構想や業務を行っているものがありますか。
@ある−132
Aない−102
設2−(5)(記述)設2−(4)で@あるとお答えの方。どのように活用しているか具体的にお書き下さい。
*自由記述からパターン分け。複数回答あり。
@防災アセスメント・被害想定−15
A防災計画−106
B広報(報告会・印刷物・防災マップ)−14
C震災対策(備蓄・防災訓練)−12
D建築物(耐震化など)−6
Eその他−2
設2−(6)(選択)設2−(1)@ある(活断層がある)とお答えの方。貴自治体では活断層の情報に基づいて土地の利用規制等の条例を制定していますか。あるいは活断層の情報を参考にして都市計画法等に基づく土地利用規制を行っていますか。もしくはそれらを予定していますか。
@している−0
Aしていない−211
B予定している−0
設2−(8)(選択)設2−(1)@ある(活断層がある)とお答えの方。
貴自治体では活断層の情報を市民に広報していますか。
*設2−(1)@ある−210
@している−110
Aしていない−98
B無回答−2
設2−(9)(記述)設問2−(8)@している とお答えの方。
どのような形で広報していますか。
*自由記述欄よりパターン分け。複数回答あり。
@パンフレット・冊子・防災マップなど作成・配布−46
A防災計画などの資料を公共施設等で展示・公開−37
B自治体広報誌で周知−21
Cマスコミに情報提供−10
D講演会・訓練・イベントなどの機会に周知−17
Eその他(インターネットやその他)−13
設2−(10)(選択)活断層の情報を利用する際どのような情報を重視しますか。
設2−(11)貴自治体では活断層の情報を得るためにどのようなメディアを利用していますか。
設2−(12)(記述)貴自治体では将来的に活断層の情報を利用して行く計画はありますか。
*自由記述からパターン分け
@活断層調査−1
A防災対策に活用−8
B防災計画の修正・被害想定等−34
C市民への広報−16
Dその他−8
○回答者の特色
地方公共団体以外へのアンケートでは建設業や製造業や電気・ガスなどのライフライン関係の企業などの民間企業、公益法人や特殊法人、国の研究機関など広い範囲から回答を得た。所属部署に関しても土木・建築の設計部門、地質調査部門、研究開発部門、機器の設計部門や総務部門など多彩である。
○関心度
設問2−(1)と設問2−(2)は回答者の活断層への関心度を知るための設問で、「機関の所在地に活断層があるか」、また「その断層名は何か」を聞いている。地方公共団体へのアンケートと同様、回答者の活断層に対する意識を知るために設けた設問であるが、全国的に展開する企業の場合、自分の現在いる部署の所在地のことを問われているのか、あるいは全国に展開している支社支店を含めた所在地を問われているのか混乱があったようで、その旨記述している回答が多く見られた。「分からない」という回答が20%ほど見られたことについても、地方公共団体に比べて高い数字になっているのは、どう答えてよいか分からなくて「分からない」と回答したのか、本当に活断層があるかどうか知らなくて答えたのか判断は出来ない。設問が民間企業に対しては適当でなかったのかもしれない。
○活用の傾向
設問2−(3)では「所属する機関は活断層の情報を業務上活用しているか」を聞いている。
全体的には活断層情報を「活用している」という回答が多く見られた。これはアンケート配布対象を、活断層調査成果報告会への申込者及び災害情報学会への参加者と、比較的活断層に関心が高いと思われる人々としたためかと思われる。しかしグループ別に見て行くと、直接的に情報が仕事に結びつく建設業、電気・ガスの活用度が他と比較して高い傾向を示す。特に電気・ガスでは「活用していない」という回答は0%で、災害時に最もその活動が重要視されるこれらの企業は、地震災害の要因となりうる活断層の情報に注意を払っていることを伺わせる回答となっている。
○活用の事例
設問2−(4)は「どのような時に活断層の情報を利用したか」を問う設問であるが、全体では「構造物・建物の設計」時に活断層情報を活用したという回答が多く見られた。次いで「構造物・建物の地点選定」、「地震発生時の行動計画の策定」となっている。詳細に見て行けば、ここに○を付けている企業でも、例えば「構造物・建物の設計」を仕事として行っている企業と、自社社屋の「構造物・建物の設計」に反映した企業などに分かれると思われるが、次設問の「どんな情報を重視するか」に対して、全業種を通じて「断層の位置」が、最も多く上げられていることを考えれば、活断層情報の活用法としては「断層の位置」の情報に基づき、「構造物・建物の設計」、「構造物・建物の地点選定」、「地震発生時の行動計画の策定」に使っているのが全業種を通じての共通の活用事例と言えるだろう。個別に見ていけば建設業、電気・ガスで「構造物・建物の設計」が他の回答に比べて多いことが特徴的であるが、先ほど述べた「構造物・建物の設計」への関わり方で、建設業は設計を行う側、電気・ガスは設計を依頼あるいは監督する側の立場の違いはあると思われる。
製造業、サービス業などでは回答にばらつきがみられ、「地震発生時の行動計画の策定」などにも高い数字が見られる。ただこの両グループには色々なタイプの企業を入れているため、その結果とも言える。
「地震発生時の行動計画の策定」に○を付けた回答者は鉄道業や小売業や製造業の総務担当者などが多く、企業の業態による傾向もあるが、その中でも、災害時の避難誘導などに携わる役割を担う部門としての傾向も示しているとも考えられる。
○どんな情報が求められているか
設問2−(6)は「活断層の情報を利用する際どのような情報を重視しているか」を問う設問であるが、
全業種を通じて「断層の位置」が是非必要という回答が最も多かった。また、「断層の位置」については情報として必要ないという回答は0であった。つまり、活断層の情報といえばまず位置の情報が重視されることが如実に現れている。次に「予想される地震の規模」が続く。これも全業種を通じて高い数字となっている。当然ではあるが、防災情報として全業種通じて外せない情報ということであろう。
「予想される活動時期」も前者とほぼ同数に高い数字となっており、理由としても前者と同様なことが想像できるが、活断層の非常に長い活動間隔をどう捉えて業務に活用しているかはこのアンケートからは読みとれなかった。「一定期間内に活動する確率」ではガス・電気で是非必要という最も積極的回答が、必要という回答を下回っている。逆にガス・電気では「予想される地震規模」について是非必要という回答が「断層の位置」と同数で最も高い数字を示しており、「必要」、「必要ない」といったどちらかといえば消極的な回答が0であることも付け加えておく。
「予想される地盤のズレ」については、地方公共団体からの回答では是非必要という意見がそれ程多くはなかったがこちらでは比較的多くなっている。特に建設業グループ、地質コンサルタント業なども含んでいるサービス業グループや大学・研究機関・その他団体では高い比較的高い数字を示している。
○今後の活用について
最後に設問2−(9)で「所属する機関では将来的に活断層の情報を利用した仕事をする計画はあるか」。また、設2−(10)で「個人的には将来仕事でどのように活断層情報を活かせると思うか」を記述してもらっている。
これらについては詳細にみれば業種により様々な回答になっているが現在の活用事例を継続・発展させて行く旨の回答がほとんどであった。
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(2)アンケート配布枚数−260通(郵送)
121通(災害情報学会)
合計381通
回収枚数−183通(郵送)
30通(災害情報学会)
回収率−56%
内訳−
原油・天然ガス鉱業(2)、建設業(総合工事業)(40)、建設業(設備工事業)(5)、
化学工業(1)、石油製品・石炭製品製造業(3)、鉄鋼業(1)、
電気機械器具製造業(2)、輸送用機械器具製造業(1)、精密機械器具製造業(2)、
その他製造業(2)、電気業(16)、ガス業(7)、鉄道業(3)、
運搬に付帯するサービス業(1)、倉庫業(4)、電気通信業(6)、各種商品小売業(5)、
保険業(6)、公共放送業(1)、民間放送業(2)、情報サービス業(2)、
放送業・情報サービス業・調査業のその他(各種コンサルタント)(30)、
放送業・情報サービス業・調査業のその他(シンクタンク)(2)、
放送業・情報サービス業・調査業のその他(調査業)(1)、
放送業・情報サービス業・調査業のその他(行政書士)(1)、
大学(7)、自然科学研究所(1)、人文・社会科学研究所(2)、
その他の団体(財団等)(12)、国の期間(10)、地方自治体の機関(4)、その他(2)
(3)集計結果
設2−(1)(選択) あなたが所属する機関の所在地に活断層はありますか。
@ある−80 Aない−69 B分からない−35
設2−(3)(選択)あなたが所属する機関は活断層の情報を業務上活用していますか。
設2−(4)(選択)設2−(3)で@している とお答えの方。どのような時に活断層の情報を利用されましたか。
設2−(6)(選択)設2−(3)で@している とお答えの方。活断層の情報を利用する際どのような情報を重視しますか。
是非必要と思われるものには○、必要だと思うものには△、必要ないと思うものには×を入れて下さい。
設2−(7)設2−(3)で@している とお答えの方。あなたの所属する機関では活断層の情報を得るためにどのようなメディアを利用していますか。(複数回答有り)
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調査対象:
アンケートの結果から知った、特に活断層の情報の活用や地震防災に力を入れていると思われる地方公共団体と成果を社会に活かす部会委員より頂いた意見を参考にして1府2県7市1町に対して調査を行った。
調査期間:
平成12年3月1日〜平成12年3月31日
調査項目:
調査項目は地方公共団体によって異なるが主に下記の項目を中心に聞き取りを行った。
@防災計画・被害想定と活断層情報の関係
A活断層の情報を具体的な施策に反映した事例及び問題点
B住民への広報
C国の情報の出し方への要望 など
結果概要:
@防災計画・被害想定と活断層情報の関係
聞き取りを行った府県で活断層を抱える地方公共団体では何らかの形で防災計画の前提になる被害想定に活断層の情報を盛り込んでいる。市町においても政令指定都市では独自の被害想定を行われており、また独自の被害想定を行っていない市町でも県の被害想定に基づき防災計画を策定しているため活断層の情報は防災計画を通じて行政に何らかの形で反映しているというところがほとんどであった。
A活断層の情報を具体的な施策に反映した事例及び問題点
活断層直上の開発などの規制や行政指導などについて、調査団体のうち条例を制定し活断層直上の民間の開発に行政指導を行っている例が1件。条例制定まではしていないが断層直上の開発に対して行政指導を行っている例が1件あった。その他の地方公共団体では、活断層調査は行われたがはっきり位置が特定出来ていない。直上だけが危険だとは言い切れない。既に活断層上に市街地が形成されており、今からの規制は法的な網を被せるなど国としての取り組みなければ不可能。との意見が多数であった。
また、海溝型地震の危険性も指摘されている地方公共団体では強震動に対する対策はそちらでかなり対策が進んでいるという意見もあった。
多くの地方公共団体に共通しているのは、活断層の情報を正しく住民に伝えることで住民自らが高い防災意識を持つように啓蒙、啓発活動を続けることが一番の対策であるという認識のようである。
B住民への広報
聞き取りを行った地方公共団体全てが何らかの形で活断層について、住民に情報を提供しているとの回答であった。特に市町レベルの地方公共団体では自主防災組織の強化・活用に力を入れていると回答した地方公共団体が多く、その会合の場で調査結果を分かりやすく説明して、防災意識を高めてもらう一助にしているといった例が多く見られた。
今後の課題として、学校教育に活断層情報やその他防災情報を積極的に活用してもらうよう働きかけたいとの意見も幾つか見られた。
C国の情報の出し方について
現在、地震調査研究推進本部から出されている活断層の評価結果については、行政として、それを基に何か対策をするには表現があいまいであるという意見が多数あった。また、国の評価には防災的な視点が欠けており、そのまま防災行政に活用できないとの意見もあった。
地方公共団体として、活断層の調査結果をもとに何か対策を行うなら、国から活断層に対してどのように対処するといった指針なり法的な措置が出てこなければ、具体的に強制力のある措置は執れないとの意見も多く見られた。
また、広報面でもっと容易な活断層のパンフレットが欲しいとの意見も幾つかの地方公共団体が上げている。活断層の知識を平易に解説しているというパンフレットが以外に少なく、地方公共団体独自でパンフレットを作ろうと思っても参考にするべきものがない、自主防災組織や学校教育などの場で住民の防災意識を高めるため、活断層の情報を普及させるためには是非、国からそのようなパンフレットを出して欲しいとの意見もあった。
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調査対象:
ライフライン関係企業及び地震災害に関心が高いと思われる企業の担当者を対象に行った。部署については、第3回活断層調査成果報告会の参加申込み者及び参加申込みの無かった団体で聞き取りが必要と思われた所にについては、活断層情報に関心が高いであろうと思われる部署をピックアップして調査対象とした。
調査期間:
平成12年3月1日〜平成12年3月31日
調査項目:
調査項目は主に下記の項目を中心に聞き取りを行った。
@どのような媒体から活断層の情報を入手しているか。
A活断層の情報を業務に使う時どのような情報を必要としたか。
B国の情報の出し方への要望 など
結果概要:
@どのような媒体から活断層の情報を入手しているか。
活断層情報に関しては学会誌を活用しているという意見が多かった。また地震調査研究推進本部のホームページの認知度も、今回調査した中ではあまり高くなかった。また、活断層情報と直接関係ないが科学技術庁の地震関係のパンフレットについては、新入社員教育に使っているといった積極的に活用している例がある一方でまったく見たことがないという会社もあった。
A活断層の情報を業務に使うときどのような情報を必要としたか。
民間団体においては具体的活用については各社とも各部署、支店単位で収集活用しているようであり、会社全体ではどのような活用状況であるかということは本調査では分からなかった。ライフライン関係企業の中には構造物の地点選定に活断層の情報を考慮しているといった意見も見られたが調査先部署においては活断層の情報は特に活用していない、また現在活用するような業務がないが他部署では活用しているかもしれないとの意見も数社から聞かれた。
各社とも活断層に関する新聞・雑誌報道には関心を高い持っているようでそのような記事は回覧しているという企業が多かった。
全体として行政からもらえる情報は何でも歓迎するといった意見が多かったが、積極的に今こういう情報を必要としているという声は本調査では聞かれなかった。また、自治体の活断層調査が終わったら速やかに報告書が閲覧できるようにして欲しいとの意見もあった。
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