資料成3−(3)
 
 
地震調査委員会による地震発生可能性等に関する長期評価のあり方
討議用メモ(事務局作成)
 
 
1.確率評価手法の導入(メリット、デメリット)
 
2.予測のタイムスケール
 
3.理解を深める上での指標(例:危険度ランク)
 
4.その他評価結果が地震防災に活用されるための説明のあり方

参考1
 
 検討に資するため、平成11年1月13日に公表された「試案『長期的な地震発生確率の評価手法及びその適用例について』に対する意見募集の結果及び寄せられた意見に対する長期評価部会の考え方について」の中に示された意見を下に整理した。
 
1.確率評価手法の導入(メリット、デメリット)
(1)メリット
ア 地域防災計画(地震災害対策計画)の基礎資料として有用。(意見3)
イ 不確定性を伴う将来の地震発生に対して重要。(意見34)
ウ 客観的な数字。(意見49)

(2)デメリット(下線部については対応方策が提案されており、その内容は第3項及び第4項へ示した。)
ア あいまい性を包含。(意見31)
イ 適用結果の適切な解釈には専門的な知識が必要(意見29)/各種指標も含めて防災業務担当者であっても理解するのは難しい。(意見2,4)
ウ 単独では防災情報として利用不可。(意見2)
エ 小さい値となる確率は注意喚起にならない。(意見28)
オ 明日起こっても不思議でないとされている東海地震の確率が小さい。(意見7)
カ 当該手法については、さらに研究必要。(意見27)/手法的に現在の段階で固定することはこの分野の発展を阻害する(意見34)
・データが増えた場合の検討(意見21)
・他のモデルの検証(意見27)
・平均活動間隔の2倍程度を過ぎると確率が下がりはじめる。モデルの適用限界を超えているため。(長期評価部会)
・対数正規分布で用いるばらつきはデータの精度が上がればずっと小さなものになる可能性がある(意見24)
・イベントの発生時として、推定年代区間の中央値が使われているが、この値は統計上の意味ない。(意見25、33)
 
2.予測のタイムスケール
本手法のあいまい性の一つとして、予測活動時期に幅がある。(意見31)

3.理解を深める上での指標(例:危険度ランク)
 「確率評価手法の導入」のデメリットへの、提案された対応方策のうち「理解を深める(注意喚起)上での指標」に係わるものを下に示した。
(1)あいまい性に対応した指標
あいまい性評価を点数等で格付け。(意見31)
(2)「単独では防災情報として利用不可」ということへ対応するための指標
防災対策と連動した(配慮した)ランク化(意見2、8、17)
(3)小さい値となる確率も注意喚起に役立つようにするための指標
ア 前回の地震発生時点から見て、30年後までに地震が発生しているはずの確率として、「現在より30年後の時点での集積確率(%)を10の単位に丸めたもの」(意見28)
イ 最新活動時期からの経過時間が平均活動間隔を過ぎている場合には、累積確率と今後30年確率の和で表現(意見10)
4.その他評価結果が地震防災に活用されるための説明のあり方
 「確率評価手法の導入」のデメリットへの、提案された対応方策を下に整理した。但し、「理解を深める(注意喚起)上での指標」に係わるものは除いた。
(1)難しさへの対応
ア 計算結果と併せて、その確率が意味するところをわかりやすくする。(長期評価部会)
イ 当該確率が、ある地点が大きな地震動に遭遇する確率ではないことを周知徹底する。(意見32)
(2)「単独では防災情報として利用不可」ということへの対応
 (防災担当側での)情報内容及びその活用方策についての検討(意見11)
(3)小さい値となる確率は注意喚起に役立つようにするための対応
ア 行政や住民の震災予防への行動規範のようなものを先に準備(意見43)
イ 一般住民は確率が低ければ安全とみなす/それに対する対策(例:警報を出す。)(意見49)
ウ 「低頻度巨大災害」として正面から受け止める議論を行う。(意見34)
(4)明日起こっても不思議でないとされている東海地震の確率が小さいことへの対応
 地震学の知見等も含めて総合的に確率を計算(意見7)
(5)当該手法のさらなる研究の必要性への対応
研究の方向性としては、モデルやパラメータの信頼性を上げることにより、より大きな数値が閾値となるようにする。(意見28)

参考2

評価した活断層

  地震調査委員会が評価した3つの地域の5つの活断層帯の評価結果に関する報告書の記述を比較してまとめて表で示した。

断層帯名及び概要

糸魚川-静岡構造線断層帯
(北・中・南部)

神縄・国府津-松田断層帯

 富士川河口断層帯 

日本列島のほぼ中央部に位置する、全長140〜150kmの活断層系

丹沢山地南縁から相模湾岸に至る延長約25kmの断層帯

静岡県東部の駿河湾奥に流れ込む富士川の河口付近から富士山南西山麓にかけて、ほぼ南北に延びる長さ約20kmの断層帯

場所

牛伏寺断層を含む区間/地震を発生させる断層区間がどこまでかは判断できない。

断層帯全体とその海域延長部に及ぶと考えられる。

駿河湾内にまで及ぶと考えられる。

時期

現在を含めた今後数百年以内

現在を含む今後数百年以内

今後数百年以内の比較的近い将来

規模

M8程度(M71/2〜81/2)

変位量10m程度、M8程度

注)M8程度とは、8±0.5

地震時の変位量が7m程度またはそれ以上、地震の規模でいうとM8程度

注)M8程度とは、8.0±0.5

可能性

・・・可能性が高い。

(試算:今後30年以内14.0%)

・・・可能性がある。

(試算:今後30年以内3.5%)

・・・可能性がある。

(試算:今後30年以内0.1〜11.2%)

(平均)

活動

間隔

約千年おきに、・・・発生してきた可能性が高い。

(試算には1000年を使用)

おおよその活動間隔は3千年程度・・・と推定される。

(試算には3000年を使用)

平均活動間隔は千数百年であったと考えられる。

(試算には1900〜1500年を使用)

前回発生時期

約1200年前・・・可能性が高い。

(試算には1200年を使用)

約3千年前・・・推定される。

(試算には3000年を使用)

千年以上前であった可能性が高い/約2千年前以降、1千年以上前(試算には1000〜2100年を使用)

最新の活動

 当該活断層系は、約1200年前に白馬から小淵沢までの区間(約100km)で活動し、その地震の規模はM8程度(M73/4〜81/4)であった可能性が高い。歴史地震としては、762年の地震(美濃・飛騨・信濃)が、この地震に該当する可能性がある。

 この断層帯の最新の活動は約3千年前

(説明:約3千年前は約2800〜2900年前のこと。)

最新活動期は千年以上前であった可能性が高い。

(説明:過去千年以上にわたる古文書があり、・・・、この断層帯付近での大地震の発生を示唆する記録は見当たらない。・・・。山崎ほか(1998)によると、最新活動時期は2100年以降)

過去の活動

 牛伏寺断層を含む区間では、約千年おきに、M8程度の規模の地震が発生してきた可能性が高い。具体的な活動区間と規模は、毎回約1200年前の活動と同様(M73/4〜81/4)であった可能性と、牛伏寺断層と同時に活動した断層区間が活動毎に変化し、地震の規模もM71/2〜81/2の範囲でその都度異なっていた可能性とが考えられる。

 この断層帯の・・・おおよその活動間隔は3千年程度、1回の変位量は10m程度と推定される。その場合、地震規模はマグニチュード8程度、震源域はこの断層帯全体とその海域延長部に及んだと考えられる。

 富士川河口断層帯は駿河湾内のプレート境界断層に連続している。平均変位速度は少なくとも7m/千年であり、その活動度は日本の中では最大級である。平均活動間隔は千数百年であったと考えられる。

 

将来の活動

 牛伏寺断層を含む区間では、現在を含めた今後数百年以内に、M8程度(M71/2〜81/2)の規模の地震が発生する可能性が高い。しかし、地震を発生させる断層区間(場所)がどこまでかは判断できない。

 この断層帯では、現在を含む今後数百年以内に、変位量10m程度、マグニチュード8程度の規模の地震が発生する可能性がある。震源域は断層帯全体とその海域延長部に及ぶと考えられる。

 この断層帯の次回の活動は、地震時の変位量が7m程度またはそれ以上、地震の規模でいうとマグニチュード8程度、震源域は駿河湾内にまで及ぶと考えられる。また、その時期は今後数百年以内の比較的近い将来である可能性がある。


「富士川河口断層帯の調査結果と評価について」(平成10年10月)p.23



「神縄・国府津−松田断層帯の調査結果と評価について」(平成9年8月)p.12


「糸魚川−静岡構造線活断層系の調査結果と評価について」(平成8年9月)p.8から


参考3

活断層評価結果をもとに試算した長期的な地震発生確率

 地震調査委員会が評価した、(1)〜(3)の活断層帯の評価結果およびその他の既存の調査結果に基づいて、(4)に示された手法のうちの一つの方法(更新過程、地震発生間隔の確率モデルがばらつきのパラメータ0.23の対数正規分布)によって長期的な地震発生確率を試算した結果を比較して表にまとめた。
 但し、公表した試算値のみ。

(1)「糸魚川−静岡構造線活断層系の調査結果と評価について」(平成8年9月)
(2)「神縄・国府津−松田断層帯の調査結果と評価について」(平成9年8月)
(3)「富士川河口断層帯の調査結果と評価について」(平成10年10月)
(4)「(改訂試案)長期的な地震発生確率の評価手法について」(平成11年1月)

断層帯名

糸魚川-静岡構造線

断層帯

(北・中・南部)

神縄・国府津-松田

断層帯

富士川河口

断層帯

報告書(1)〜(3)に記述された数字

活動間隔

約千年おき

おおよその活動間隔は3千年程度

千数百年

前回発生時期

約1200年前

約3千年前(約2800〜2900年前)

千年以上前であった可能性が高い/約2千年前以降、1千年以上前

確率計算に用いた数字

平均活動間隔(年)

1000

3000

1500

1700

1900

最新活動からの経過年数(年)

1200

3000

2100

1500

1000

長期的地震発生確率(試算)

30年

14.0%

3.5%

11.2%

4.3%

0.1%

50年

未計算

未計算

18.1%

7.2%

0.2%

100年

未計算

未計算

33.2%

14.6%

0.6%

注意喚起のための指標

(試算)

指標(1)

経過年数

452年

未計算

1009年

263年

-382年

1.61

未計算

1.92

1.21

0.72

指標(2)

6.06

未計算

5.92

2.40

0.07

指標(3)

81.9%

未計算

92.8%

29.3%

0.3%

指標(4)

0.7

未計算

0.8

0.4

0.01

指標(5)

0.00100

未計算

0.00067

0.00059

0.00053

指標(1):

経過年数:Poisson分布を仮定した場合の危険率を超えた後の経過年数。負符号はその危険率を超えるまでに残された年数。
比:評価時点までの経過時間(B)とPoisson分布を仮定した場合の危険率を超えるまでの時間(A)との比(B/A)

指標(2):評価時点の危険率とPoisson分布を仮定した場合の危険率との比

指標(3):評価時点までの集積確率

指標(4):今後30年間に活動する確率とその極大値との比

指標(5):Poisson分布を仮定した場合の危険率(地震発生回数/年)(平均活動間隔の逆数)



参考4

第2回成果を社会に活かす部会資料

資料 成2-(3)

地震調査委員会による地震に関する評価(現状評価)及び
地震発生可能性等に関する長期評価について

地震調査委員会では、大きく分けて、地震活動の現状の総合評価及び地震発生可能性等に関する長期的な評価を行っている。現在における評価のやり方及び評価結果の例を説明する。

1 地震活動の現状の総合評価

(1)対象領域  (2)頻度 (3)評価に使用する資料 (4)標準的な評価方法

− マグニチュードが大きめの地震を含む活動、大きめの震度が観測された地震を含む活動、及び住民が懸念している地震活動を評価対象として選択。

− 選択した地震活動について、

  を中心にして審議。

− 特に、通常の地震活動(又は静穏化)ではないと考えられる現象を、さらに選択し、詳細な審議。

− 評価文の作成及び評価文の背景にある事実を示す図等資料の選択。評価文及び選択した資料の公表。

 

(5)臨時会議での評価方法

− 総合的な評価に必要とされる資料の収集やその分析がほぼ準備できる時期(目処:地震発生後2日)に開催。

− 発生している現象が本震・余震型であるか、群発型であるか、又はそれ以外であると懸念されるかの総合的な評価。

− 活動の型の評価結果に応じて、次の評価:

(6)評価した地震活動の例

ア 隣国の大地震の発生が我が国の地震活動へ影響するかどうかの評価の場合(平成11年9月の地震活動)

イ 通常の地震活動の場合(平成11年7月の地震活動)

ウ 大きめの震度が観測された地震の場合(平成10年9月及び平成9年3月。臨時会議)

エ 群発地震活動があり、大きめの震度が観測された地震があった場合(平成10年8月。臨時会議)

オ 群発地震活動があった場合(平成 10年4月の地震活動)

2 長期評価としての活断層の評価

(1)対象活断層
調査観測計画部会が選定した基盤的調査観測の対象活断層
(2)評価結果のとりまとめ頻度
現在1年当たり1断層帯。今後1年当たり約20断層帯を目標。
(3)評価に使用する資料
国からの交付金を用いた地方公共団体による活断層調査の結果、国の機関による活断層調査の結果。歴史地震研究の成果。テクトニクスの研究成果。現在の微小地震活動の分析結果及び測地測量の結果。地殻構造調査の研究成果。過去の大地震の特徴及び余震活動についての調査研究成果。活断層研究等既存研究論文。
(4)標準的な評価方法
− 対象活断層の内で調査結果が一通り終了しているものの中から評価対象の選択。
− 当該断層帯として評価対象に取り込むことについて個別の断層の評価。
− 選択した活断層について、
  を中心にして審議。
− 評価文の作成及び評価文の背景にある事実を示す図等資料の選択。評価文及び選択した資料の公表。
(5)評価した活断層

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