【断層調査】
1)調査地域及び断層位置
平成7年度及び8年度の調査で、横浜市域の地下には、活断層としての立川断層は延長しないことが判明した。
しかし、いくつかの既存調査は、横浜市の地下深部5〜7qに段差構造があることを指摘している。このような段差構造は、兵庫県南部地震では、異常強震動域形成の一要因と考えられている。横浜市では、1982年の「伊豆半島近海地震」で港南区にのみ被害が集中した記録がある。
平成9年度調査では、この段差構造の存在の有無および地下数キロメートルの地質構造の不均質さを解明する目的で、横浜市域150箇所に設置した強震計のネットワークとこれに記録される自然地震の波形記録を使った、P波およびS波の初動解析を実施した。
2)調査方法
地震動の到達時間(走時)差 | |
図−2 市内150箇所の強震計設置位置 | 図−3 強震計ネットワークで得られた地震波記録の例 |
2)調査方法
市内150箇所(図−2中の赤印)に設置してある強震計ネットワークで記録された自然地震の地震波記録を利用して、トモグラフィ−解析により地下構造を探ることができる。平成9年度はその最初の段階として、150箇所で記録された地震波のP波及びS波の初動到達時間[走時]の差(右図参照)をもとに、概略の地下構造を推定した。
3)調査結果
図−4 P波走時差の例 | 図−5 S波走時差の例 |
震源の位置による影響および地表から数十m程度までの極浅層部の影響を補正すると、上の図のように市域における走時到達時間のバラツキが認められた。特徴的には市域北西部から市域中心部に向かって溝状に入り込む到達走時の遅い部分、市域の南西部を中心に湾状に市域に入り込む同じく到達走時の遅い部分、さらに市域西部に到達走時の速い部分が認められた。上図は埼玉県南部に震源を持つM=4.7の地震波形記録(1997.08.09)による解析結果である。走時の速い部分と遅い部分の分布形状は、P波、S波ともほぼ同様の傾向を示している。また、今までに観測された地震では、震源の位置にかかわらずP波、S波ともに同様の傾向が認められている。
4)考察
観測されたP波、S波の走時差(最大値と最小値の差)から、P波速度とS波速度の比は約3対1程度と比較的大きな差を持っていることがわかった。この速度差から判断して、図−4、図−5に得られた地域ごとの到達走時の差は、地表から数q程度までのやや浅い地下の速度構造の不均質性に起因しているものと解釈できる。
さらに詳細に地下の構造を探るためには、小さな走時差を精度良く解析する必要がある。これに対する一つの解決策は、より多くの地震の強震計記録を使ってトモグラフィー解析を行うことである。
現在、3ヶ月〜4ヶ月に一度の頻度で、150箇所の地震計全てで地震波形の取れるような地震が発生しており、トモグラフィー解析が行えるデータが着実に収集されてきている。
横浜市では、平成10年度以降、微動アレイ探査などの手法も取り入れて、引続き地下構造の調査を行い、地震基盤の起伏による異常強震動域の形成の可能性や、比較的速度の遅い浅い部分の不均質性から生じる長周期の揺れが市域の構造物に与える影響等を検討し、地震防災に活かして行きたい。
5)問い合わせ先
横浜市総務局災害対策室
tel:045-671-3454
fax:045-641-1677
○ただし、この解析及び評価は、横浜市の見解です。