時間予測モデルとは、次の地震までの間隔と前回の地震のすべり量は比例する、というモデルです。つまり、大きな地震の後では次の地震までの間隔が長く,小さな地震の後では間隔が短いということになります(図)。このように、前回の地震のすべり量から次に起きる地震の時間が予測されることより、時間予測モデルと呼んでいます。物理的には、プレート境界ではひずみが一定の割合で溜まっていき、ひずみがある大きさに達すると地震が発生する、というモデルです。このため、前回の地震で解放されたひずみが大きいほど、次の地震が起きるレベルまでひずみが溜まる時間が長くなるというわけです。
地震調査委員会で行っている、活断層や、海溝型地震の長期評価で、時間予測モデルを用いているのは、南海トラフの長期評価のみです。南海トラフでは、断層のずれの量の代わりに高知県の室津港の隆起量を用いています。室津港では、宝永地震(1707 年)、安政南海地震(1854 年)、昭和南海地震(1946 年)の3回の地震での隆起量が知られています。時間予測モデルを使うと、次の地震までの間隔は88.2 年となり、3地震の平均発生間隔(119.5 年)より短くなります。
時間予測モデルによる次の地震までの間隔の推定は、平均発生間隔のみを用いた手法に比べ、物理学的な背景を加えたモデルになっており、発生時期の推定精度が高いと言われています。一方で、南海トラフでは使用できるデータが非常に少ないことや、地震の震源域には多様性があるが、室津港の隆起量のみで評価できるのかなどの課題も指摘されています。