ある地点がどのくらいの揺れに見舞われるかを予測(強震動予測)するには、震源での断層の動きと震源から出る波の強さ等、震源から予測する地点までの距離や方向、それと地表の地盤特性の影響を考える必要があります。
一般的に、軟らかい地盤の場合、そこまで伝わってきた揺れが増幅されます。地盤の特性によりその大きさは大きく変化するため、強震動予測をする場合には、地盤の影響を大きく受けないところまでの地震動を、地震のマグニチュードと震源距離で設定し、次に地盤による増幅特性を別の方法で評価するという方法を用います。
「地盤の影響を大きく受けないところ」を地下のある深さのところに面的に想定しますが、その面を「地震基盤」と呼びます。震源からの距離がそれほど違わなければ、地震基盤に入射する波はどこでもほぼ同じと考えられます。具体的には、地表から深さ十数kmまでの地殻のS波速度は平均で毎秒3~3.5kmとほぼ一定であるため、地殻最上部のS波速度毎秒3kmの地層を地震基盤と呼びます。
しかし、実際には、地下深部の地震基盤での観測記録や地震基盤までの深さの地下構造に関する情報はそれほど多くありません。そのため、構造物の設計を行うときには、地震基盤という概念に基づいて地震動特性を評価することが実際には困難となります。そこで、構造物を設計する際には、地震基盤より浅いS波速度毎秒300~700mの地層を「工学的基盤」とするという考え方がなされています。構造物を設計する立場からいえば、観測記録の豊富な工学的基盤で地震動を設定するのが容易であり、工学の各分野における設計が容易にできるという利点があります。
「地震基盤」「工学的基盤」という2つの概念で地震動の評価がなされていますが、それぞれでの用途に合わせて、強震動を予測していくことが重要であるとともに、今後とも地盤の調査を進めていき、それらの間を統一的に説明できるモデルができることが望まれています。