常時微動とは、文字のごとく、常に動いている地面のわずかな揺れのことです。ピンとこないかもしれませんが、実は私たちが生活している建物や地面も、人に感じない程度の振動で常に揺れています。では揺れの発生源は何でしょうか?風や海の波といった自然現象や、車の走行や工場の機械といった人工的なものなど、さまざまなものが振動の原因となっています。微動計と呼ばれる特殊な地震計を用いて観測を行うと、常時微動を測定することができます。
常時微動を観測するとどんなことがわかるのでしょうか?常時微動を測定することにより、その建物や地盤の揺れやすさの特徴がわかります。
まず、常時微動を観測することで固有周期を調べることができます。固有周期という用語を聞いたことはないでしょうか?固有周期とは、その建物や地盤が揺れやすい周期(揺れが一往復する秒数)のことです。この固有周期で建物や地盤を揺らすと共振(共鳴)と呼ばれる現象によって、小さな力で大きな揺れが発生します。つまり地震の揺れの周期が、建物や地面の固有周期と合致した場合には建物や地面が大きく揺れ、被害が発生する可能性が高くなります(地震本部ニュース2012年12月号「応答スペクトル」も参照してください)。固有周期は構造物の耐震化の判断材料や地盤の種別の判定などに使用されています。
また、常時微動を測定することにより、地盤の構造も推定することができます。地盤構造の推定とは、その場所の地面の下で地震波の速さが、深さとともにどのようになっているか調べることです。これを調べることによって、ある場所で地震が発生した際、その場所でどのような揺れになるか予測することが可能になります。なお、常時微動から地盤の構造を調べるためには、「アレイ観測」と呼ばれる観測点を複数配置し、それぞれの地点での常時微動の波の伝わり方を解析することで推定します。また、H/Vスペクトルとよばれる水平方向と鉛直方向の揺れの大きさ比を周期ごとに解析することで、「地盤増幅率」と呼ばれる地盤の揺れやすさの指標を簡易的に算出する方法もあります。
常時微動を観測する利点は、いつでもどこでも簡単にかつ経済的に測定できるということです。常に揺れている波を観測するので、実際に地震が発生するまで待つ必要がありませんし、観測機器も比較的持ち運びしやすいものとなっています。また、観測機器さえあれば、費用もそんなにかかりません。ただ、常時微動観測を利用した地盤構造の推定は、構造の詳細までを把握することはできません。そのため、地盤の構造をより詳しく調べるためには、ボーリング調査のように直接地面の下を掘って調べる方法や、人工的に地震を起こして地面の下を調べる方法などと組み合わせて行うことが望ましいです。