2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は、マグニチュード9.0とこれまで日本周辺で観測された最大の地震であり、地震動による被害もありましたが、津波による被害が甚大で、今回の地震の特徴として印象づけられています。この地震により発生し
た津波は、東日本の太平洋沿岸をはじめ、全国各地で観測されました。このような津波では、海水が陸の奥まで侵入すると同時に、砂や泥も運ばれ、その結果、堆積物となります。これを「津波堆積物」と呼びます。
過去に発生した津波による「津波堆積物」は、海岸に沿った地層の中に含まれる場合があります。例えば、海岸に近い池や湿原などでは植物の遺骸や泥が層となって堆積します。そこに、津波が発生すると、海岸の砂など様々なものが削り取られ、陸の方へと運ばれます。そのような砂が堆積することにより、砂の層が形成されます。その後は、また、ゆっくりと泥が堆積するような環境に戻ることにより、泥の層の中に砂の層が挟まれるような形で残されます。
そのような場所で複数の地質試料を採取し、津波堆積物であると考えられる砂の層の分布を調べることにより、津波による浸水範囲がわかるとともに、泥の層に含まれる植物の遺骸や、過去の噴火による火山灰の層に含まれるガラス等から年代を求め、津波の発生した時期を推定することができます。このように、「津波堆積物」調査の成果から、
より過去にさかのぼった長期間にわたる地震活動や、それらの地震・津波の規模等の推測に活用できることが考えられます。