地震は、活断層やプレートが動くことによって発生します。大きな地震が発生すると、発生と同時に地表面に大きな地殻変動が生じます。その地殻変動が起こった場所の上に大量の水がある場合、すなわち地殻変動が海底や湖底で起こった場合には、上の水が持ち上げられ(あるいは押し下げられ)、それが広がることによって、津波が生じます。
地殻変動のうち、特に上下の変動が大きい場合に、大きな津波が発生します。
一般的に、地表面に大きな地殻変動を生じさせるような地震は、強い揺れを引き起こします。しかし、場合によっては、強い揺れを伴わない場合があります。それは、断層がゆっくりと動いたときです。断層がゆっくり動くと、その変位量が大きくても、強い地震波は起こりません。
たとえば、海溝近傍(トラフ近傍)では、軟らかい堆積物が沈み込んでおり、高速破壊が起きにくいとされており、ここですべりが発生すると、短周期の地震動は出にくいと考えられます。さらに、海溝付近では、剛性率(変形のしにくさ)が小さく、変形しやすいため、より地殻変動も大きくなります。
通常、地震の規模(マグニチュード)は短周期の揺れの大きさから推定しますから、このような地震が発生すると、推定した地震の規模から予想される津波の規模よりも、大きな津波が発生します。このような地震を「津波地震」と呼びます。地震の揺れから推定したマグニチュードと、津波の規模から推定される地震の規模(津波マグニチュードと呼ぶ)の差が0.5以上あるものを「津波地震」と呼ぶという定量的な定義もあります。
1896年に日本海溝付近で発生した地震(明治三陸地震)が、典型的な「津波地震」であるとされています。この地震では、最大震度は4程度でしたが、地震発生後30分〜40分後に大きな津波が襲来し、岩手県綾里村(現在の大船渡市)では38mを超える遡上(そじょう)が記録されています。