6.むすび
地震調査研究推進本部による、「今後の重点的な調査観測計画について(−活断層で発生する地震及び海溝型地震を対象とした重点的観測、活断層の今後の基盤的調査観測の進め方−)」に基づき、平成17年度から、糸魚川−静岡構造線断層帯における重点的な調査観測が5ヶ年計画で始まった。
第3章で述べたように、本年度から始まった調査観測は、順調にすべり出した。反射法地震探査・重力探査、電磁気探査及び自然地震観測(稠密アレー観測)により、糸魚川−静岡構造線断層帯南部の構造が基本的に西傾斜であることが明らかとなりつつある。更に、得られた構造から、当該地域における変位速度が7.5〜10mm/yrという極めて大きな値となる可能性が高いことがわかった。現段階では、各項目ともまた解析が進行中であるが、今後の解析の進展によって、各調査から出された断層帯のイメージの対応関係が明らかになり、断層帯の形状とともにその物性的特徴が明らかになると期待される。自然地震観測(長期機動観測)においては、観測点移設・新設が開始され、データ収集も始まった。今後のこれらのデータの集積によって、詳細な地震活動分布が求まることは確実である。また、自然地震を用いた広域的なトモグラフィも行われ、構造線に沿った構造の違いが明らかになりつつある。さらにGPS観測および干渉SAR解析の結果でも構造線に沿って変動様式の差異が見られており、今後データを蓄積することにより、構造線周辺の応力蓄積メカニズムが明らかになることが期待される。
また、変動地形調査及び活断層履歴調査では、糸魚川−静岡構造線断層帯北部の動的な特性を示す新しい変位分布情報が求められた。この成果は、今後の断層帯における強震動予測、特に断層のアスペリティ分布を拘束する重要な情報となろう。
強震動評価高精度化のための強震観測・地下構造調査においては、観測点新設が開始され、データ収集も始まった。強震データの集積によって、当該域の地盤特性の詳細が明らかになるものと期待される。